このコラムでは何回か、4月から銀行融資の経営者保証取り組みが変わる、とお伝えしました。
経済産業省や監督省庁である「金融庁」が、融資慣行の見直しを、地銀に対して求めているのです。
【参考記事】4月から変わる経営者保証~何が変わりどう準備すべきか~
早速動きが出ているようです。
どの地銀がどう動いているのか?
それに対して、経営者はどう動けばよいのか?
一緒に考えてみたいと思います。
どうぞ読み進めて下さい。
【目次】
5月9日付日本経済新聞によると、10行以上が融資に関して経営者保証を求めないようです。
一番踏み込んだ対応は、北國銀行(ほっこくぎんこう;本社;石川県金沢市)です。
以下は日経新聞記事からの抜粋です。
【プロパー融資の経営者保証を廃止】
北國銀行
【原則、経営者保証を求めない;13行】
北洋銀行、八十二銀行、南都銀行、紀陽銀行、山陰合同銀行、広島銀行、西京銀行、阿波銀行、福岡銀行、十八親和銀行、熊本銀行、豊和銀行、琉球銀行
(ここまで日経新聞記事;R5.5.9付)
13行の「原則求めない」というのがポイントで、「例外的に求められる」ことも想定されます。
このことについては、後ほど詳しく考察します。
銀行融資と言えば、経営者保証がセットでした。
その融資慣行が変更されるのは、大きなことです。
なぜでしょう?経営者保証の見直しは、以下の理由が考えられます。
✔事業に失敗すると経営者は私財を失い、生活が厳しくなる
✔思い切った事業転換や再挑戦の妨げとなる
✔経営者保証が原因で、先代から後継者への事業承継が難航し、新陳代謝が進まない
地銀が経営者保証を求めるのは、一つ目に融資返済不能となった時に、私財から融資金を回収するためです。
例えば自宅、経営者が保有する銀行預金・自家用車・株式、などが融資金回収の対象となります。
それらを売却しても返済しきれない場合は、経営者は自己破産という手段を選ばざるを得ません。
経営者保証により、事業失敗=生活再建も厳しくなる、再起もできない、となります。
もう一つの理由は、「経営の規律付け」のためです。
経営者保証を取らないと、「経営者がリスクの高い事業展開をしてしまうのではないか」、その結果、「融資金の返済が困難化してしまうのではないか」、ということを心配しています。
一方、貸し渋りを恐れる経営者側からも、なかなか「経営者保証なしの融資で」との依頼は、しづらいものです。
しかし、前述の通り、行政主導でレールが引かれ、積極的に賛同する地銀が出てきました。
今までの融資慣習は変わってきたのです。
そこで気になるのは、上記13行の「例外的に経営者保証を求められるケース」です。
銀行によって対応の差は出るのでしょうが、予測してみます。
以下の様なケースで「例外的な措置」として、経営者保証を求められる可能性があります。
✔リスケジュール(元金返済猶予措置)をしている
✔決算書に粉飾がある
※粉飾とは、以下参考記事の様なケースです。
【参考記事】銀行は中小企業の粉飾決算を警戒している〜粉飾決算の見破り方と影響を徹底解説!~
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
✔試算表を迅速に提出できない
※試算表がなかなか出来上がらない会社をなぜ銀行は嫌がるのか、以下記事で説明しています。
【参考記事】銀行が試算表提出を求めてきた~試算表で何をチェックしているのか~
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
✔社外流出金が多額である
※この財務処理を銀行はとても嫌がります、以下記事で説明しています。
【参考記事】決算書「代表者勘定」に向けられる銀行の厳しい目
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
✔赤字なのに、役員報酬と接待交際費が多額に支出されている
※業績不振なのに、融資金が役員報酬や接待交際費に流れることを嫌がります。
【参考記事】赤字なのに役員報酬と接待交際費が多額
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
✔決算書の負債勘定「未払金」に、社会保険料や税金などの滞納がある
以上の様なケースが「例外的なケース」に該当すると想定されます。
つまり、「経営者保証なし融資」には、財務の健全化が求められるということです。
「これさえ整えていただければ、経営者保証を取りませんよ」、と言われるでしょう。
しかし、北國銀行は、「経営者保証廃止」ですので、それでも免除するということでしょうか?
それとも、融資基準を引き上げて、「財務が厳しい企業にはプロパー融資をしない」ということなのでしょうか?
詳しく聞いてみたい気がします(北國銀行と融資取引がある読者がいれば、記事最後のコメント欄から、是非教えて下さい)。
4月から始まった新しい経営者保証に関する融資慣行では、多くの地銀が手探りでしょう。
新規融資に関しては、財務が良好であれば、経営者保証を求めない動きになります。
一方、今すでに受けている融資に対しては、あなたの会社の財務が銀行から高い評価を受けていれば、銀行側から経営者保証を外す提案を受けるかもしれません。
あるいは、メインバンク以外の銀行から、経営者保証を取らない形で、「メインバンク融資の肩代わり提案」があるかもしれません。
※肩代わり提案については、以下の記事を参考ください。
【参考記事】融資肩代わりに関する銀行の考え方 ~なぜ銀行員は、他銀行の融資を奪いたいのか~
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
【参考記事】経営者がメインバンク変更を決断する時
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
しかしながら財務内容が厳しければ、引き続き経営者保証が継続されるでしょう。
中小企業において、銀行融資と経営者保証がセットなのは、「法人と経営者個人が一体化しているから」です。
建前上は、「法人と個人は別人格で、分離している」とされています。
しかし実際は、経営者の中で、「会社は自分と一体、自分の会社だから何をしても良いだろう」、という考えが存在します。
その結果、会社と個人の区別がつかず、役員貸付金としてお金が会社の外に出て行ったり、役員報酬以外で生活費を拝借したり、私的な飲食費を接待交際費として経費計上したり、財務の健全化が損なわれてしまいます。
そうした行動が、経営者保証の解除を難しくしてきました。
いま、行政も銀行も経営者保証に関する融資慣行を変更しようとしています。
長年懸案となってきた、しかしなかなか手が付けられなかった「自社の財務健全化」に着手する時かもしれません。
経営者であるあなたの心の持ち方次第だ、と感じるのです。
以上、今日は「経営者保証を求めない地銀はどこか、経営者はどう動けば良いか」について、お話ししました。
今後の貴社の財務安定のために、お役に立てていただけますと幸いです。
今後、経営者が付き合う銀行を決めるにあたって、「経営者保証に取り組むスタンス」が決定要因の一つになるでしょう。
経営者保証の取り組みにコミットしている上記14行の地銀は、経営者保証解除に積極的だと言えそうです。
あくまでも私見ですが、今までの先進的な取り組みを加味すると、特に北國銀行や広島銀行などは、先頭ランナーとして期待が持てます。
北國銀行は、以前から融資以外のコンサルティング機能に意識を向け融資先の本業支援に注力していますし、広島銀行は担保や保証に頼らない「事業性評価融資」のパイオニアだからです。
当事務所がある四国エリアでは、阿波銀行の名前がありました。
地銀の経営者保証のスタンスについて、引き続きウォッチしていきたいと思います。
【この問題に対処する担当コンサルタント】プロフィール
【お手伝いの際の考え方】
【サービス料金メニュー】こちら
【ご契約までの流れはこちら】ご契約までの流れ
【この記事の問題を解決するための手段はこちら】
【関連記事】
この記事の様なことで悩んでいる経営者のあなた。お問い合わせはこちらから(暗号化対応をしているので、コメントやメールアドレスが外部に漏れることはありません。24時間コメント受付、返信は翌営業日以降になることがあります)。☟