4月は賃上げの季節です。
マスコミ報道によると、中小企業でも賃上げを検討している会社が多いようです。
賃上げだけ先行すると、業績にはマイナスとなります。
中小企業経営者にとり、頭の痛い問題です。
賃上げを会社の成長につなげるには何が必要か??
考えてみます。
○賃上げがもたらすリスクと、中小企業が注意すべきポイント
賃上げをすると社員は喜びますが、人件費は経費ですから人件費増の分、会社は利益が減少します。
どのように賃上げ原資を確保するのか、この観点を忘れてはいけません。
賃上げのみが進み、業績上昇が進まなければ、賃上げ倒産につながります。
○賃上げ倒産を回避し、持続的な成長を実現するための戦略
賃上げ倒産を回避するためには、業績向上の戦略が必要になります。方向性としては以下が考えられます。
① 売上増加の戦略(新規開拓、既存顧客浸透)
② 商品サービスの値上げ
③ 仕入れコストの削減
④ 人件費以外の経費の削減
⑤ 社員一人当たりの生産性向上
会社の状況に合った戦略を選んで実行していきます。
○賃上げによる社員のモチベーションの変化
賃上げすることのメリットは、社員のモチベーションが上がることです。
会社に対する忠誠心も高まると考えられます。
賃上げをしなければ流出していた社員も、貴社に踏みとどまるかもしれません。
○賃上げによる業績への影響
社員のモチベーションが高まれば、業績に良い影響が出ます。
接客などにも好影響が及ぶでしょう。
インターナルマーケティングという考え方があります。
インターナルマーケティングとは、会社が社員を対象に行うマーケティング活動のことです。社員の満足度やモチベーションを高め、ブランドの一貫したメッセージを外部に伝えることが目的 です。
社員が幸せでないと、顧客満足を提供することは難しくなります。
賃上げには、≪社員満足が高まる⇒社員の満足感が接客や提案活動などを通じて顧客満足につながる⇒商品サービスがもっと売れて会社が儲かる≫、という効果があります。
○人件費増加を吸収するためのコスト削減戦略
人件費アップは即コスト増につながりますが、循環して業績向上につながるには時間差があります。
コスト削減により、人件費の財源を捻出する取り組みも必要です。
仕入コストや販売コストなど、コストを洗い出し、削減できるものから着手していきます。
具体策については以下の記事が詳しいので、参考にしてください。
コスト削減シートで会社を再建する方法 (和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
○生産性向上による業績アップ
社員の気持ちは、「賃上げしてくれてよかったね!」。ですが、経営者としては賃上げした分は、今まで以上にしっかり働いて会社に貢献してもらいたい気持ちになります。
とはいえ、残業規制の関係もあり、サービス残業をしてもらうわけにはいきません。
社員一人一人の生産性を高め、時間当たりの売上高を高めてもらう必要があります。
どう方向付けするのか?ここは経営者の仕事になります。
社員任せでは、人件費ばかり増えて人件費増に見合った業績向上は達成できず、倒産への道に進んできます。
経営課題をテーマとしてプロジェクトチームを作り、社員自身に考えさせる方法も有効です。
私も最近、依頼を受けてプロジェクトのファシリテーター(司会進行)としてお手伝いしました。
お客様の声【プロジェクト支援:人材育成】 (和田経営相談事務所オフィシャルホームページ)
経営課題の抽出法は以下の記事で説明しています。参考にしてください。
経営課題抽出は再建を左右する (和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
○給与以外の社員満足度の充実
大企業と比較してブランド力が劣る中小企業では、給与以外の魅力で社員を引き付けることが難しい場合があります。しかしその中でも打てる対策はあります。
例えば、経営者と社員間のコミュニケーション不足、評価制度の曖昧さやフィードバック不足などの問題点がある場合は、以下の様な解決策が考えらえます。
キャリアプランの支援:
・社員のキャリア目標をヒアリングし、スキルアップやキャリアアップの機会を提供する。
・社内公募制度やジョブローテーション制度を導入し、社員のキャリアパスを広げる。
評価制度の見直し:
・評価基準を明確にし、社員に周知する。
・社員が達成した業績貢献度の高い仕事については、評価や報酬で報いる。
・期初に会社が社員に期待している役割を伝え、期末に結果についてお互いが確認する。
・定期的なフィードバックを実施し、社員の成長を支援する。
○社員のやる気を高める
経営者が一人で奮闘しても、限界があります。社員のやる気を高める仕組み作りが大切です。以下の様な方法が有効でしょう。
やりがいを高める組織文化の醸成:
・経営理念やビジョンを共有し、社員の共感を高める。
・社員の意見やアイデアを積極的に取り入れ、組織運営に反映させる。
・社員同士の交流を促進するイベントや研修を実施する。
○賃上げを成功させるための経営者の役割
賃上げの成功失敗は、その後の業績向上につながったかどうかで判断されます。
社員だけ給与が上がって良かったね!では、今後の継続的な賃上げにはつながりません。
会社が良い状態で継続してこそ、賃上げが成功したと言えます。
経営者の役割は、賃上げ後の①会社の成長プランを描き②実行に移し③成果を出すことです。
そのための戦略が求められるのです。
○社員と共に成長し、未来を創造する
経営者だけよくてもダメです。社員だけよくてもダメです。
双方がともに満足する賃上げにする。
そして会社の継続的な発展につなげ、社員とともに成長し、未来を創造するのです。
そのために経営者のあなたは今、何をするべきか?
賃上げを、考えるきっかけにしたいものです。
以上「賃上げ倒産を防いで、社員満足と業績を両立させる」についてお話しました。
今後の貴社の成長にお役立ていただけますと幸いです。
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