【この記事で分かること】
・ 役員報酬の決め方
・ 役員報酬変更の手順
・ 役員報酬と役員貸付金・役員借入金の関係
今日は経営者にとって関係が深い「役員報酬」について考えてみます。
「役員報酬」の取り扱いは、会社経営・財務に影響します。
例えば、家族全員で1,000万円の役員報酬があれば、10年間で合計1億円になります。
会社業績が良いときも悪いときも一律では、まずいときもあるのです。
経営者として役員報酬に関する知識は、一通り持っておく必要があります。
そして以下の記事を参考に、「自分の役員報酬は適正なのか?」と一度考えてみることをお勧めします。
【目次】
役員報酬に関連するもの。
まずは、役員個人の生活資金。
それ以外には、会社の利益が影響を受けます。
業績に照らして役員報酬が多ければ赤字になります。
その他には、役員個人の所得税、住民税、社会保険料(法人負担、個人負担)の金額も役員報酬に連動します。
あなたは、役員報酬をどのように決めていますか?
黒字が出たから増やした。
赤字が出たから減らした。
銀行から「下げてくれ」と言われた。
税理士から「これぐらいでどうしょう」と提案された。
または、以前からの流れで毎年同額。特に基準は設けていない、のが通常多いケースかもしれません。
ただ私は、役員報酬とは本来、会社の業績に応じて経営責任として受け取るものだと考えます。
であれば、会社業績が赤字であれば減らして、黒字続きであればある程度は増やして、という臨機応変なものではないでしょうか?
役員報酬を業績連動させていくために基準とするのは、「前期の業績」と「今期の業績見通し」です。
今期の業績見通しについては、資金繰り予定表や事業計画書を参考にします。
前期実績と今期見通し。この二つから、経営者が適正な役員報酬を導き出します。
役員報酬を変更する場合、税務上の経費計上のためには、事業年度開始の日(期初)から3か月以内の税務署への変更届け提出が必要になります。
役員報酬を変更する手順は、以下の通りです。
【事業年度開始から3か月以内に】
ステップ❶
役員報酬金額の決定
ステップ❷
株主総会の招集通知
ステップ❸
株主総会の開催
ステップ❹
株主総会議事録の作成
ステップ❺
役員報酬の変更
ステップ❻
各種書類の提出
原則、3か月経過後の期中での役員報酬の変更は、税務上認められていません。
とはいえ、当初計画している以外で、3か月経過後の期中で、役員報酬を変更(減額)したい場合も出てくるかもしれません。
例えば、①新型コロナによる業績の急激な悪化で役員報酬の支払い原資が捻出できない、②銀行へ再建計画を提出し継続支援を要請するにあたり役員報酬減額を求められた、などのケースです。
引き続き経費と認められるためには、税務署への変更届出が必要です。届け出には、株主総会による決議と、株主総会議事録を用意します。
期中での役員報酬減額が認められる業績の悪化の要件は、以下です。
出典:国税庁ホームページ
【新設】 (経営の状況の著しい悪化に類する理由)
9-2-13 令第69条第1項第2号《定期同額給与の範囲等》に規定する「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないこととなる。また、例えば、経営の状況の悪化により従業員の賞与を一律カットせざるを得ないような状況にある場合は、通常は、本通達にいう「経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情」がある場合に当たるといえよう。
(ここまで国税庁ホームページより)
つまり、緊急的に役員報酬を減額しなければならない正当な理由がある、ということです。
役員借入金とは、役員が会社にお金を貸すことです。
基本的に資金の流れは、役員個人⇒会社となります。
ただ、業績悪化時に役員報酬が決めた額もらえない(変更届をしなければ)とき、役員借入金が発生します。
50万円の報酬がもらえなければ、50万円の役員借入金が発生します。
例えばこの状態が6か月続けば、300万円(50万円×6か月)になります。
この場合、現金が動きませんので、役員は会社にお金を貸したという意識が希薄になります。
ちなみに以下の記事では、役員借入金の減らし方を解説しています。
【参考記事】役員借入金の減らし方 ~5つの方法のメリット・デメリットを図表付きで簡便に解説~
役員貸付金とは、役員が会社からお金を借りることです。
基本的に資金の流れは、会社⇒役員個人となります。
役員報酬の設定が低く役員個人の生活が苦しくなったため、会社のお金を拝借したとき、役員貸付金が発生します。
また個人生活に関する支出、役員個人の慶弔ごとや財産の購入資金を会社から出した場合も発生します。
50万円拝借すれば、50万円の役員貸付金が発生します。
例えばこの状態が6か月続けば、300万円(50万円×6か月)になります。
会社と役員個人間の資金のやり取りをどんぶり勘定にしていると、気づくと多額の役員貸付金が決算書に残ります。
役員貸付金が貸借対照表に多額に発生した、、、。
この状況を、銀行はとても嫌がります。
赤字で役員報酬を変えないと、色々不都合が生じます。
赤字は業績不振を要因とします。
そのため、通常資金繰りが厳しくなります。
資金繰りが厳しくなると、払う原資がないので、役員報酬はもらわず我慢することになります。
しかし税務上は、同額の役員報酬を受け取ることになっているので、負債勘定に未払金(役員報酬未払)が発生します。
金額がまとまってくると、役員借入金勘定に振り替えることが多くなります。
役員借入金といえども借入金の一種ですから、結果、負債勘定が増加し、会社の財務内容が悪化します。
また、役員報酬は損益計算書の経費ですから、業績と比較して役員報酬が多額だと、どんどん赤字が積み上がります。
そのうえ、役員報酬はもらえていないのに、所得税や住民税、社会保険料(会社負担、個人負担)は以前と同じだけかかってきます。
会社も役員個人も資金繰りが厳しくなります。まさに踏んだり蹴ったりとなります。
だから業績不振の場合には、適切な役員報酬額への減額が必要なのです。
社長のあなたは、役員報酬に対して主体的に関わることができます。
特に同族会社であれば、決定に反対する人はいないでしょう。
だからこそ、役員報酬に対する自分自身の方針を決めておく必要があるのでは?
今までこうだったから引き続き同額ではなく、経営環境により業績は変動するのですから、毎年決算時期には見直したいものです。
もちろん、検討した結果、「引き続き同額」という選択肢もあるでしょう。
そして役員報酬を決めるためには、「事業計画に落とし込んだ今期の見通し」は持っておいたほうが良いでしょう。
正しい経営判断をするために、経営を数値で把握することは、大切なことなのです。
役員報酬を変更するとき、顧問税理士に相談することは多いでしょう。
もしかしたら逆に、顧問税理士の提案により、役員報酬を変更することもあるかもしれません。
しかしこの記事でお話ししたように、役員報酬に関しては自分なりの基準や方針をもって、その上で手続きは税理士に依頼することが大切だと私は考えます。
一通り知ってて依頼(相談)することと、分からずにお任せ(丸投げ)することは、大きな違いなのです。
この記事が一助になれば幸いです。
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