【この記事で分かること】
・ 中小企業の役員報酬開示は必要かどうか
・ 役員報酬の決め方
・ 役員報酬変更の手順
・ 赤字会社の役員報酬はどうすれば良いか
【この記事のポイント】
✔ 中小企業の役員報酬は、融資を受けている銀行から開示を要求される。理由は、銀行の融資判断に、役員報酬の支給状況が関係するため(赤字なのに多額に支給されているケースなど)。
✔ 役員報酬は、業績に連動させていくことが望ましい。役員報酬を変更する場合、税務上の経費計上のためには、事業年度開始の日(期初)から3か月以内の税務署への変更届け提出が必要になる。
✔ 赤字なのに役員報酬を黒字の時と同額にしていると、帳簿上は払ったようにしても、実際はお金が足らずにもらえなくなる。もらってないのに、役員個人の所得税、住民税、社会保険料(法人負担、個人負担)は同じように出ていくことになり、好ましくない状態となる。そのため変更したほうが良い。
今日は経営者にとって関係が深い「役員報酬」について考えてみます。
「役員報酬」の取り扱いは、会社経営・財務に影響します。
例えば、家族全員で1,000万円の役員報酬があれば、10年間で合計1億円になります。
会社業績が良いときも悪いときも一律では、まずいときもあるのです。
経営者として役員報酬に関する知識は、一通り持っておく必要があります。
そして以下の記事を参考に、「自分の役員報酬は適正なのか?」と一度考えてみることをお勧めします。
【目次】
役員報酬に関連するもの。
まずは、役員個人の生活資金。
それ以外には、会社の利益が影響を受けます。
業績に照らして役員報酬が多ければ赤字になります。
その他には、役員個人の所得税、住民税、社会保険料(法人負担、個人負担)の金額も役員報酬に連動します。
中小企業の役員報酬に開示義務はあるのでしょうか?
気になるところです。
開示する相手は、融資を受けている銀行などが想定されます。
実務的なことを申し上げると、基本的は銀行は役員報酬の開示を求めてきます。
決算書勘定科目内訳明細書「役員報酬の内訳」の提出を要求されます。
役員報酬の支給状況は、融資判断に影響するからです。
そのあたりの事情を、以下の記事に詳しく説明しています。
【参考記事】銀行から見て首をひねりたくなる決算書⑤~赤字なのに役員報酬、接待交際費が多額~
あなたは、役員報酬をどのように決めていますか?
黒字が出たから増やした。
赤字が出たから減らした。
銀行から「下げてくれ」と言われた。
税理士から「これぐらいでどうしょう」と提案された。
または、以前からの流れで毎年同額。特に基準は設けていない、のが通常多いケースかもしれません。
ただ私は、役員報酬とは本来、会社の業績に応じて経営責任として受け取るものだと考えます。
であれば、会社業績が赤字であれば減らして、黒字続きであればある程度は増やして、という臨機応変なものではないでしょうか?
役員報酬を業績連動させていくために基準とするのは、「前期の業績」と「今期の業績見通し」です。
今期の業績見通しについては、資金繰り予定表や事業計画書を参考にします。
前期実績と今期見通し。この二つから、経営者が適正な役員報酬を導き出します。
役員報酬を変更する場合、税務上の経費計上のためには、事業年度開始の日(期初)から3か月以内の税務署への変更届け提出が必要になります。
会社が赤字になったら、役員報酬はどうなるのでしょう?
中小企業の場合、会社が赤字になっても、しばらく役員報酬は同額で据え置かれることが多いです。
理由は、株主が経営者一族であり、上場企業のように株主からの役員報酬引き下げ圧力が働かないからです。
しかしながら、赤字になれば資金繰りが厳しくなり、黒字の時の様に役員報酬が支払えません。
【参考記事】3期連続赤字で会社はどうなる? ~関係者の態度変化とあなたの選択肢~
帳簿上は役員報酬を支払った形にして、実際はお金がないので支払えない。
その結果、役員借入金という勘定科目が増えることになります。
役員借入金については以下の記事で詳しく説明しています。参考にしてください。
【参考記事】決算書の役員借入金、役員貸付金。この勘定科目に要注目。
役員報酬をお金でもらってないのに、役員個人の所得税、住民税、社会保険料(法人負担、個人負担)は帳簿上の金額で支払いが発生します。
踏んだり蹴ったりとなります。
そこで、以下の手続きにより、役員報酬の変更が必要になります。
役員報酬を変更する手順は、以下の通りです。
【事業年度開始から3か月以内に】
ステップ❶
役員報酬金額の決定
ステップ❷
株主総会の招集通知
ステップ❸
株主総会の開催
ステップ❹
株主総会議事録の作成
ステップ❺
役員報酬の変更
ステップ❻
各種書類の提出
原則、3か月経過後の期中での役員報酬の変更は、税務上認められていません。
とはいえ、当初計画している以外で、3か月経過後の期中で、役員報酬を変更(減額)したい場合も出てくるかもしれません。
例えば、①新型コロナによる業績の急激な悪化で役員報酬の支払い原資が捻出できない、②銀行へ再建計画を提出し継続支援を要請するにあたり役員報酬減額を求められた、などのケースです。
引き続き経費と認められるためには、税務署への変更届出が必要です。届け出には、株主総会による決議と、株主総会議事録を用意します。
期中での役員報酬減額が認められる業績の悪化の要件は、以下です。
出典:国税庁ホームページ
【新設】 (経営の状況の著しい悪化に類する理由)
9-2-13 令第69条第1項第2号《定期同額給与の範囲等》に規定する「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないこととなる。また、例えば、経営の状況の悪化により従業員の賞与を一律カットせざるを得ないような状況にある場合は、通常は、本通達にいう「経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情」がある場合に当たるといえよう。
(ここまで国税庁ホームページより)
つまり、緊急的に役員報酬を減額しなければならない正当な理由がある、ということです。
社長のあなたは、役員報酬に対して主体的に関わることができます。
特に同族会社であれば、決定に反対する人はいないでしょう。
だからこそ、役員報酬に対する自分自身の方針を決めておく必要があるのでは?
今までこうだったから引き続き同額ではなく、経営環境により業績は変動するのですから、毎年決算時期には見直したいものです。
もちろん、検討した結果、「引き続き同額」という選択肢もあるでしょう。
そして役員報酬を決めるためには、「事業計画に落とし込んだ今期の見通し」は持っておいたほうが良いでしょう。
正しい経営判断をするために、経営を数値で把握することは、大切なことなのです。
役員報酬を変更するとき、顧問税理士に相談することは多いでしょう。
もしかしたら逆に、顧問税理士の提案により、役員報酬を変更することもあるかもしれません。
しかしこの記事でお話ししたように、役員報酬に関しては自分なりの基準や方針をもって、その上で手続きは税理士に依頼することが大切だと私は考えます。
一通り知ってて依頼(相談)することと、分からずにお任せ(丸投げ)することは、大きな違いなのです。
この記事が一助になれば幸いです。
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