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銀行員は、決算書の「代表者勘定」をこう見ている ~役員借入金、役員貸付金 本当の評価~

この記事のポイントは以下の通りです。

 

☑「代表者勘定」は、貸借対照表の右側、負債勘定にあれば、「役員借入金」。一方、貸借対照表の左側、資産勘定にあれば「役員貸付金」。2つをまとめて別名「代表者勘定」という。

☑ 役員借入金と役員貸付金について、銀行員はイメージと逆の見方をしてくる。具体的には借入金をプラス評価、貸付金をマイナス評価する

☑ 銀行員が役員貸付金について、担当が替わるたびにしつこく聞いてくるのは、自分たちが融資したお金が、役員貸付金として会社の外に持ち出されているのではないか、と心配しているから

☑ 特に役員貸付金は今後どのように減らしていくか、または今後の発生をどう防ぐか。方法はいくつかあるが、経営者自身の考えと取り組みが大切

 

 

詳しく見ていきましょう。

 

 

自社決算書の貸借対照表に記載されている「役員借入金」と「役員貸付金」。

 

2つをまとめて、別名「代表者勘定」とも言われます。

 

つまり、代表者勘定とは、「役員借入金」と「役員貸付金」両方のことです。両方とも代表者に関係する勘定科目だからです。

 

「代表者勘定」は、貸借対照表の右側、負債勘定にあれば、「役員借入金」と言います。一方、貸借対照表の左側、資産勘定にあれば「役員貸付金」と言います。

 

本当は無いほうが良い2つの勘定科目。

 

どんなものなのでしょう?銀行員の見方を説明します。

 

役員借入金と役員貸付金 貸借対照表のどこにあるか

 

役員借入金は会社が経営者から借りているお金、役員貸付金(または短期貸付金や長期貸付金の科目として、処理されていることもある)は経営者が会社から借りているお金、です。

 

お金の流れでいうと以下です。

 

(役員借入金)経営者 → 会社
(役員貸付金)会社 → 経営者

 

役員借入金は、貸借対照表の右側の負債勘定(会社の借入)にあり、役員貸付金は、左側の資産勘定(会社の貸付)にあります。

 

 

資産と負債というイメージから言うと、貸付金の方が良いもので、借入金の方が良くないものの気がします

 

しかし、銀行員が中小企業の決算書のこの2科目に抱く感想は、そのイメージと全く逆なのです。

 

役員借入金の固定化をプラス評価する

分かりやすくするため、少し極端に説明します。

 

結論から申し上げると、銀行員がもつ印象は、役員借入金は〇(または△)、役員貸付金は×です。

 

順番に説明します。まず役員借入金がプラス評価されることから。

 

理由は、役員借入金は、経営者と会社が一体であることが多い中小企業にとって、資本的な意味合いを持つからです。

 

経営者である皆さんが、会社にお金を貸すとき、その原資は何ですか?

 

個人的な預金か、役員報酬であることが多いでしょう。

 

特に、役員報酬の場合は、もらったことにして(お金の移動はなし)結果、役員報酬未払として会社に貸している形を取ります。

 

もちろん、良いことではありません。本来は対価としてもらうべき役員報酬を、業績不振や資金不足により、もらえていないのですから。

 

中小企業の場合、役員借入金を経営者に返済せず、長年に渡り固定化させていることがあります。

 

固定化している役員借入金を銀行は、「疑似資本」と見て純資産(資本)勘定でプラス評価します。

 

例えば純資産勘定がマイナス、債務超過が500万円だったとしても、役員借入金の固定化が1000万円あったとしたら、純資産を500万円のプラスとしてみます。(ただし役員借入金の原資が、役員が個人的に借入したカードローンや個人ローンなどの場合はプラス評価しない)。

 

 

 

役員貸付金の固定化をマイナス評価する

 

次に役員貸付金のマイナス評価について説明します。

 

役員貸付金が長年に渡り減っていない、または増えている。

 

こうしたとき銀行員は、役員貸付金が固定化しているとみなし、マイナス評価します。

 

決算説明の際、銀行員に、役員貸付金の内容について、説明を求められることもあるでしょう。

 

皆さんは、役員貸付金の内訳を、原因や使い途を含めて説明できますか?

 

私の経験上でも、経営者は出来ないことが多かったです。

 

役員貸付金という科目自体を把握していないこともありました。

 

それは、会社からお金を借りた覚えも、自分の口座にそのお金が入金された覚えもないので、お金を借りているという意識がないからです。

 

 

役員貸付金が発生するわけ

 

役員貸付金の発生原因は、多くが使途不明金です。

 

領収書をもらい忘れた交際費や伝票処理できていない経費、経営者の知人への個人的な貸付など、使途不明なものが長年に渡り累積します(1回1回は少額でも長年に渡ると結構な額になります)。

 

困った顧問税理士事務所は、役員貸付金として経営者個人名義で処理します。

 

または、役員報酬を少なくしていると、生活費に困り、会社のお金を拝借します。すると役員貸付金は増えます。1回あたりは少額でも、積もり積もると、こちらも結構な金額になります。会社と個人がごちゃごちゃになり、何が何だか分からなくなります。

 

もちろん、返済の目途はありませんし、役員貸付金には利息が付きます。元金を返済しないから利息分が未収利息として、どんどん膨らんでいきます。

 

使途不明金が1000万円あり、経営者名義の役員貸付金で処理されていれば、実質は1000万円赤字が隠れていることになります。

 

銀行員は、決算書のヒアリングで、役員貸付金の内容を確認してきます。

 

その結果、説明に正当性がなければ、銀行は役員貸付金をマイナス評価します(正当性のある説明は、ほぼできません)。

 

そして、固定化している役員貸付金を銀行は、「実質赤字」と見て純資産(資本)勘定でマイナス評価します。

 

例えば純資産勘定がプラス、資産超過が500万円だったとしても、役員貸付金の固定化が1000万円あったとしたら、純資産を500万円のマイナスとしてみます。

不良資産の役員貸付金

 

現在ある役員貸付金を減らす方法

 

であれば、銀行にマイナス評価される役員貸付金は、減らしておくほうが良さそうです。

方法は2つあります。

 

①現在ある役員借入金と相殺して減らす

②将来支払う役員報酬と相殺して減らす(毎月の処理で相殺する)

 

【参考記事】この記事を読んで役員報酬変更のときの注意点をチェック☟

中小企業と役員報酬 ~役員報酬の決め方、変更の手順~

 

自社の決算書を手に取り、会社の現状と照らし合わせて、検討してみてください。
※上記以外に赤字として処理することは、税法上難しいケースがあるので、税務署や税理士にご相談ください。

 

役員貸付金を発生させないためには

 

使途不明金を原因とする役員貸付金を発生させないためには、どうすれば良いか?

 

まずは、経営者自身が、お金に関して公私のけじめをつけることです。

 

営業に結び付く顧客の接待や情報収集などは、接待交際費を積極的に活用すれば良いと思います。会社で使うお金と使わないお金を分けます。

 

また、経理体制をしっかり整えることです。できるだけ現金での授受をなくし、銀行口座を通すことで透明性を確保します。

 

経営者自身も領収書を経理にきちんと提出するなど、行動の改善も必要です。

 

以上、銀行員が役員借入金と役員貸付金をどう見ているか、について、お話ししてきました。参考にしていただければ幸いです。

 

 

 

【関連記事】

決算書の役員借入金、役員貸付金。この勘定科目に要注目。

 

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