銀行と融資取引がある企業は、年に1回決算書の提出を求められます。
企業にとっては、決算書は年間活動の総決算、いわば通信簿のようなものです。
決算書には大きく分けて、貸借対照表、損益計算書、販売管理費、製造原価報告書(製造業)、内訳付属明細表、別表などがあります。それら決算書を銀行員はどこを見ているか、何回かに分けてお話してみたいと思います。
第1回目は、貸借対照表です。貸借対照表は、企業の資産内容を現しているものです。以下のような内容を確認しています。
①自己資本は充実しているか
まず資本勘定が債務超過になっていないか、確認します。
その後、自己資本比率はどれぐらいあるか、確認します。その際、自己資本が多額であれば、借方(左側)のどこに配分されているか、確認します。(現預金なのか、固定資産なのか、在庫や売掛なのか、等)
【参考記事】決算書の自己資本比率を見るときのポイント
②借入金のバランスはどうか
借入金がどのように利用されているか、確認することでバランスをみます。固定資産が長期借入、流動資産が短期借入で調達されている場合は、正常ですが、まれに固定資産が短期借入で調達されているケースがあります。このケースはバランスが悪いです。
【参考記事】短期と長期の銀行借入金~長短バランスが崩れる理由~
③在庫、売掛金はどうなっているか
これは、時系列で確認します。3期分の決算書を並べて、残高の推移を把握します。売上の増加割合に比べて、これらの増加が多ければ、内容を精査します。私が目途にしていたのは、残高ベースで、在庫なら月商の1~2か月分、売掛金なら月商の2~3か月分でした。(業種特性により、違いますのであくまでも目安です。)
【参考記事】在庫評価が経営に及ぼす影響
④現預金はどうか
これも時系列で把握します。現預金が減少していれば、資金繰りが厳しい可能性があるからです。月商の1か月分を判断の目途にしていました。
【参考記事】現預金とは。~決算書にあるのに、手元にお金がないわけ~
⑤不透明な社外流失金はないか
仮払金、貸付金、未収入金、繰延資産等の中で、説明のつかない不透明な社外流失金はないか。
【参考記事】銀行員は、決算書の役員借入金と役員貸付金をこう見ている
ざっとですが、貸借対照表のこんなところを銀行は確認しています。
ちなみに、どこの銀行でも粉飾チェックというシステムがあり、怪しいところは、チェックがかかります。企業サイドから考えても、粉飾をやり始めると、粉飾が粉飾を呼び、最後にどうしようもなくなります。粉飾を貫き通して、成功したという話はあまり聞きません。正直が一番のような気がします。
【参考記事】銀行は粉飾決算をどうやって見抜いているか~よくある粉飾のパターンと経営者としての心構え~
次回は、損益計算書についてお話したいと思います。
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