「社長である自分の役員報酬、どうやって決めるのが正しいのだろう?」
「役員報酬を決める上での、明確な基準ってあるの?」
「業績が悪化した場合、役員報酬を変更したいけど、手続きは?」
中小企業の経営者にとって、ご自身の役員報酬をいくらに設定するかは、会社の財務状況や資金繰り、税金、そしてご自身の生活にも直結する、非常に重要な経営判断です。「役員報酬 決め方」に明確な正解はなく、多くの社長が悩まれるポイントではないでしょうか。
しかし、その決め方や基準(「役員報酬 基準」)を誤ると、会社の経営を圧迫したり、銀行からの評価を下げたりする要因にもなりかねません。
この記事では、ここ愛媛県をはじめ多くの中小企業をご支援してきたコンサルタントとして、中小企業における役員報酬の決め方に関するよくある問題点、適切な設定のための基準と考え方、そして役員報酬を変更(「役員報酬 変更」)する際の注意点について、実践的な視点から解説します。
【目次】
まず、中小企業でよく見られる役員報酬の決め方と、そこに潜む問題点を見てみましょう。
過去の業績・「去年並み」基準
決め方: 前期の業績が良かったから増額する、あるいは単純に「去年と同じ額」で設定する。
問題点: 会社の業績は常に変動します。過去の業績だけで判断すると、業績が悪化した際に報酬が高止まりし、会社の負担となります。「去年並み」という思考停止も危険です。
利益が出た時の「ご褒美」的な増額
決め方: 好業績が続くと、「これだけ利益が出たのだから」と、大幅に役員報酬を増額する。法人税負担を軽減したい(節税)という動機が背景にあることも。
問題点: 一度上げた報酬を下げることには心理的な抵抗が伴います。業績が悪化しても報酬を維持しようとし、結果的に会社の資金繰りを圧迫したり、後述する「役員借入金」発生の原因となったりします。
どんぶり勘定・明確な基準なし
決め方: 明確な基準はなく、その時々の会社の資金状況や、社長自身の必要額に応じて、感覚的に決めている。
問題点: 会社の支払能力を超えた報酬設定になりがちです。また、銀行など外部に対して、報酬決定の根拠を説明できません。
特に問題となるのが、会社の業績や財務体力に見合わない、高すぎる役員報酬(「社長 役員報酬 高すぎ」と見られかねない水準)を設定し、業績悪化後も見直さないケースです。
業績悪化時に負担が重荷に
好調時に上げた役員報酬は、業績が悪化すると固定費として重くのしかかります。利益が出ていないのに高額な報酬を支払い続ける(あるいは帳簿上だけでも計上し続ける)ことは、会社の体力を確実に奪っていきます。
赤字なのに高額報酬 → 資金繰り悪化・役員借入金増 (役員報酬 赤字)
業績が悪化し、「役員報酬 赤字」(=会社は赤字なのに役員報酬は高いまま)という状況になると、深刻な問題が発生します。
・資金繰りの悪化: 現金で支払う場合はもちろん、支払えずに**「未払役員報酬」として計上しても、それに対応する社会保険料(会社負担分・個人負担分)の支払いは発生**します。これがキャッシュフローを圧迫します。
・役員借入金の発生: 支払えない役員報酬を帳簿上支払った形にし、その分を会社が社長から借りた「役員借入金」として処理するケースがあります。これは実態と会計の乖離であり、不健全な状態です。
[関連記事:銀行が嫌う決算書 – 赤字なのに役員報酬、接待交際費が多額]
[関連記事:役員借入金 返済 銀行融資は危険?安易な借換リスクと正しい判断]
銀行からの見方も厳しくなる
銀行は、会社の業績が悪化した場合、経営者がコスト削減に真剣に取り組んでいるかを見ています。赤字にも関わらず社長が高額な役員報酬を得ている(ように見える)場合、経営者の危機感の欠如と判断し、追加融資などに極めて慎重になります。
では、どのように役員報酬を決めるべきでしょうか? いくつかの「役員報酬 基準」と考え方のポイント(「役員報酬 決め方」のポイント)を挙げます。
ポイント①:会社の「支払能力」を基準にする【最重要】
・基準: 役員報酬は、会社が持続的に支払い続けられる範囲内で設定するのが大原則です。会社の利益計画や資金繰り計画に基づき、「この報酬額を支払っても、会社の現金はきちんと回るか?」をシミュレーションし、キャッシュフローに基づいた判断を行うべきです。
ポイント②:会社の「業績」との連動を意識する
・基準: 会社の利益水準(例:営業利益、経常利益)に応じて報酬額を変動させるルールを設けることを検討します。例えば、「経常利益〇〇円以上なら月額□□万円」といった基準や、業績に応じた役員賞与(税務上の要件あり)の活用などです。これにより、業績と報酬のアンマッチを防ぎやすくなります。
ポイント③:「将来計画」に基づいて決定する
・基準: 過去の実績だけでなく、来期の「業績予測」や「事業計画」に基づいて、来期の役員報酬を決定するという視点が重要です。将来の売上・利益見込みから、無理のない報酬水準を導き出します。そのためには、精度の高い事業計画の策定が前提となります。
ポイント④:外部水準も参考に(ただし注意)
・基準: 同業他社や同規模の会社の役員報酬水準を参考にすることも一法ですが、あくまで参考です。外部水準が高くても、自社の支払能力がなければ意味がありません。自社の状況を最優先すべきです。
役員報酬を変更する場合、特に税務上、費用(損金)として認められるためには、原則として以下の手続き(「役員報酬 変更」の手続き)が必要です。
税務上のルール:期首から3ヶ月以内が原則
・定期同額給与(毎月定額で支払われる報酬)を変更する場合、原則として、その事業年度開始の日から3ヶ月以内に株主総会等で改定の決議を行い、その後の支給額を改定後の金額で統一する必要があります。
必要な手続き:株主総会議事録の作成・保管
・役員報酬の決定・変更は、株主総会の決議事項です。必ず株主総会を開催(中小企業の場合は実質的に書面決議等でも可)し、その議事録を作成・保管しておく必要があります。これは税務調査等で確認される重要書類です。
期中変更の例外(業績悪化時など)
事業年度の途中での役員報酬の変更(特に減額)は、原則として損金算入が認められませんが、経営状況が著しく悪化した場合など、やむを得ない事情がある場合には、例外的に認められることがあります。ただし、その判断基準は厳格であり、必ず事前に顧問税理士に相談し、適切な手続き(臨時株主総会の開催など)を行う必要があります。
[関連記事:中小企業と役員報酬 – 役員報酬の決め方、変更の手順(※より詳細な手続きはこちらで確認)]
最終的に役員報酬をいくらにするかを決定するのは、社長自身です。
最終決定者は経営者自身
顧問税理士は税務面からのアドバイスはくれますが、経営判断そのものを行うわけではありません。「税理士がこう言ったから」ではなく、会社の状況を最もよく理解している社長が、責任を持って判断すべきです。
業績に応じた見直しの実行
「一度上げたら下げにくい」という気持ちは理解できますが、会社の持続可能性を考えれば、業績が悪化した際には、役員報酬の見直し(減額)も、経営者として取るべき当然の責任と捉えるべきです。その覚悟を持つことが、会社を守ることに繋がります。
社長の役員報酬の決め方は、会社の財務状況や将来に大きな影響を与えます。明確な基準を持たずに、過去の実績や感覚だけで決めてしまうと、「役員報酬 赤字」状態を招き、資金繰りを圧迫し、銀行からの信用も失いかねません。
・役員報酬は、会社の支払能力(キャッシュフロー)と将来計画に基づいて決定する。
・業績との連動を意識し、毎年見直す習慣をつける。
・役員報酬を変更する際は、税務上のルールと適切な手続きを守る。
・最終的な決定責任は社長自身にあることを自覚する。
適切な役員報酬の設定と管理は、健全な会社経営の重要な要素です。
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この記事が、貴社の役員報酬に関する意思決定と、健全な経営の一助となれば幸いです。
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