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【役員借入金 返済 銀行融資】は危険?安易な借換リスクと正しい判断(2025年版)

「会社の役員借入金が溜まっている。銀行から融資提案があったので、これで返済しても大丈夫?」

「銀行融資で役員借入金を返済するのは、資金使途として問題ないの?」

「役員借入金のより良い減らし方はないだろうか?」

会社の決算書に計上されている役員借入金(会社が役員個人から借りているお金)。長年、会社の資金繰りを支えてきたこの役員借入金について、経営者としては「いつか会社から返してもらいたい」と考えるのは自然なことです。そんな時、取引銀行からタイミングよく「有利な条件で銀行融資しませんか?」という提案があると、「この銀行融資役員借入金返済しよう」という考えが頭をよぎるかもしれません。

しかし、安易に銀行融資で役員借入金を返済することには、将来の会社経営にとって大きなリスクが潜んでいる可能性があります。

この記事では、銀行員として17年、その後コンサルタントとして14年、計31年にわたり中小企業の財務・金融を見てきた経験から、なぜ「役員借入金 返済 銀行融資」という方法が問題となりうるのか、役員借入金の本質、そしてより健全な「役員借入金 減らし方」について解説します。

役員借入金返済銀行融資

なぜ「役員借入金 返済」に「銀行融資」を使う話が出るのか?

この状況が生まれる背景には、いくつかの要因があります。

銀行からの融資提案

銀行は、融資先の決算内容などを分析し、「この会社なら、あとこれくらいは貸せる(返済できる)」と判断すれば、融資残高や収益を増やすために、銀行融資の提案を積極的に行ってきます。

[関連記事:銀行 融資提案書 – なぜ届く?確認ポイントと賢い受け止め方]

経営者の「返してほしい」心理

会社に多額の資金を投入してきた経営者としては、個人資産を回収したい、あるいは生活資金に充てたい、という思いを持つのは当然のことです。銀行からの提案は、その「出口」に見えるかもしれません。

税務上・形式上の「問題なし」?

運転資金等の名目で銀行融資を受け、結果的にその資金が役員借入金の返済に充てられたとしても、それが直ちに税務上の問題となるケースは多くありません。顧問税理士に相談しても「税務上は特に問題ないですよ」と言われることもあるでしょう。これが、経営者の判断を後押ししてしまうことがあります。

役員借入金の本質:過去の「赤字補填」資金である可能性

しかし、ここで立ち止まって考えるべきは、**「そもそも、なぜ役員借入金が発生したのか?」**ということです。

役員借入金はなぜ発生したのか?

多くの場合、役員借入金は、

・会社の業績が悪化し、運転資金が不足した際の穴埋め(赤字補填)
・銀行からの追加融資が受けられなかった時期の資金繰り
・会社の資金繰りを優先するための、役員報酬の未払い・繰り延べ

といった、過去の会社の「苦しい時期」を、経営者個人が支えてきた証であることが多いのです。いわば、**「会社の赤字応援資金」**としての性格を持っている可能性があります。

「疑似資本」としての側面と返済義務

銀行も、長期間返済されずに固定化している役員借入金(特に経営者の自己資金や未払報酬が原資の場合)については、**実質的な資本(疑似資本)**と見なして、会社の財務評価上、プラスに考慮することがあります。これは、返済期限や金利負担がない(あるいは極めて緩い)ためです。

しかし、あくまで会計上は「負債」であり、相続時には相続財産となるなど、潜在的な問題も抱えています。

[関連記事:役員借入金と役員貸付金 – 決算書での意味と銀行評価の違い]

なぜ「役員借入金 返済 銀行融資」はリスクが高いのか?

では、なぜその「過去の赤字補填」とも言える役員借入金を、新たな銀行融資で返済することが危険なのでしょうか?

返済負担の増加:返済原資のない借金【最重要】

これが最大のリスクです。 もともと役員借入金は、多くの場合、明確な返済期限や厳しい金利負担はありませんでした(経営者が我慢すればよかった)。しかし、それを銀行融資に置き換えると、利息付きで、かつ毎月決まった元本返済義務が発生します。

問題は、その新しい銀行融資を返済するための「原資」が、会社の事業活動から安定的に生み出されているか、という点です。役員借入金が発生した原因が「過去の赤字」にあるならば、その赤字構造が改善されていない限り、新たな銀行融資の返済原資も確保できていない可能性が高いのです。結果として、返済のためにさらに資金繰りが厳しくなるという悪循環に陥ります。

会社の財務体質の実質的な悪化

役員借入金という、ある意味で返済プレッシャーの少ない「疑似資本」的な負債を、返済義務の厳しい「外部負債(銀行融資)」に入れ替えることは、会社の財務的な柔軟性を失わせ、実質的な財務体質を悪化させる可能性があります。

将来の資金繰り圧迫要因に

現在は返済可能に見えても、将来、売上減少などの予期せぬ事態が発生した場合、この追加された銀行融資の返済負担が、会社の資金繰りを決定的に圧迫する要因となり得ます。

役員借入金のより健全な減らし方・整理方法

では、「役員借入金 減らし方」として、銀行融資に頼る以外の、より健全な方法はないのでしょうか? いくつかの選択肢があります。

1. 方法①:本業の利益からの計画的返済: 会社の業績が回復・安定し、事業活動で生み出した利益(キャッシュフロー)の中から、無理のない範囲で計画的に返済していくのが最も理想的です。

2. 方法②:役員による債権放棄(債務免除): 経営者が会社に対する債権(役員借入金)を放棄する方法です。会社の負債が減り、自己資本が増強され財務内容が大幅に改善します。ただし、会社側に債務免除益が発生し法人税課税対象となるため、繰越欠損金の活用など、実行タイミングには税理士との綿密な相談が必要です。

3. 方法③:他の役員関連勘定との相殺: 役員貸付金など、会社が役員に対して持つ債権と相殺処理します。

4. 方法④:役員報酬との調整: 役員報酬を一時的に減額し、その分を役員借入金の返済に充てる方法です。個人の税・社会保険料負担は減りますが、会社の利益が増え法人税が増える可能性があります。

これらの方法は、それぞれメリット・デメリットがあります。詳細は以下の記事をご参照ください。

[関連記事:役員借入金 5つの減らし方 メリット・デメリット]

経営者が取るべき判断と心構え

「役員借入金 返済 銀行融資」という選択肢が目の前に現れた時、経営者はどう判断すべきでしょうか。

役員借入金の「発生原因」を直視する

まず、自社の役員借入金が「なぜ」「いつ」発生したものなのかを冷静に分析することが重要です。それが一時的な資金不足への対応だったのか、それとも構造的な赤字経営の結果なのか。原因によって、取るべき対応は異なります。

安易な銀行提案に飛びつかない

銀行からの融資提案は魅力的かもしれませんが、「借りられるから借りる」のではなく、**「本当に今、その資金が会社にとって必要か」「返済計画は持続可能か」**を厳しく自問自答してください。

会社の財務体力・将来性を最優先する

役員個人の資金回収も重要ですが、会社の存続と持続的な成長が最優先されるべきです。新たな銀行融資による返済が、本当に会社の将来にとってプラスになるのか、慎重に判断する必要があります。

専門家(税理士・コンサル)への相談

実行する前に、必ず顧問税理士に税務上の影響を確認しましょう。また、財務的な影響や他の選択肢について、我々のような経営コンサルタントに相談し、客観的なアドバイスを求めることも有効です。

まとめ:銀行融資による役員借入金返済は慎重に

銀行融資を活用した役員借入金の返済は、一見すると問題ないように見えても、多くの場合、会社の財務基盤を弱め、将来の資金繰りを圧迫するリスクをはらんでいます。なぜなら、役員借入金の多くは、過去の経営課題(特に赤字)の結果として生じたものであり、その根本原因が解決されないまま返済負担だけが増える可能性があるからです。

役員借入金を整理したい場合は、安易な銀行融資による返済に頼る前に、より健全な「役員借入金 減らし方」(利益からの返済、債権放棄など)を検討すべきです。

経営者の皆様におかれましては、目先の資金回収にとらわれず、会社の長期的な視点に立ち、専門家とも相談の上で、最善の判断をされることを強くお勧めします。

役員借入金の整理方法や、銀行融資の活用についてお悩みの場合は、下記お問い合わせフォームから、当事務所の初回無料相談をご利用ください。貴社の状況に合わせた最適な選択肢を一緒に検討いたします。

この記事が、貴社の健全な財務運営と意思決定の一助となれば幸いです。

 

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