この記事のポイントは以下の通り。
☑ 役員借入金とは、役員から会社への貸し付けのこと。個人預金、役員報酬未払、個人ローンなど、資金の出所によって、良い悪いがある。
☑ 会社にとっては借入金の一種であり、減らすほうが好ましい。減らし方は、以下記事の通り、本業利益から、放棄する、相殺する、肩代わりする、の4種類がある。それぞれ特徴があり、会社の状況に応じて選択する。
詳しく見ていきましょう。
【目次】
役員借入金。
決算書の貸借対照表の右側、負債勘定にあります。
短期借入金か、長期借入金の近く、もしくは会社によっては、その中に合算されていることもあります。
言葉のイメージでは、経営者など役員が、会社に借りているお金、、、
実は逆で、役員が会社に貸しているお金なのです。
ですから、仮に相続が発生した場合には、被相続人(亡くなった方)の相続財産になり、残された相続人の間で分割になります。
貸借対照表をいくら探しても、見つからない会社があります。
役員借入金がゼロ。
大まかに言って二通りです。
一つは、意識して会社と個人をきちんと区別し、双方で貸し借りがない会社。
もう一つは、役員に会社に貸せるだけのお金がない会社。逆に会社から役員がお金を借りていたりします(資産勘定の役員貸付金)。
とはいっても、会社と個人が一体化している場合が多い中小企業では、いくらかは「役員借入金」が負債勘定に記載されていることが多いです。
ではこの役員借入金、どうやって発生するのか。
一つは、会社のお金が不足した際に、今まで貯めていた個人の預金を投入するケースです。
もう一つは、役員報酬を未払にして会社に貸し付けるケースです。この場合社長は、会社にお金を貸したという意識がありません。
現金の出入りがなく、帳簿上での貸し借りだからです。
役員の個人預金と、役員報酬の未払。この2つを悪くない役員借入金と呼びます(決して良いとは言えませんが)。
そして次は良くない役員借入金ですが、業績が厳しくなった場合に多いケースです。
社長など役員が個人ローン(フリーローンやカードローン)で調達して、本来は個人の消費性の使い道に限定されているお金を、会社の資金繰り(事業性)に使います。
業績悪化により、通常の銀行法人借入の融資が難しくなった場合に、緊急的に発生します。
この場合も、決算書上は役員から会社への貸し付けであり、役員借入金として計上されています。
銀行は役員借入金について、比較的好意的な見方(前述した悪くない2つのケースの場合)をします。
会社と個人が一体化している中小企業において、長期間に渡り固定化している役員借入金を、資本的な意味合いで判断するからです。
ただし、前述したように、役員借入金の原資が「個人ローン」の場合は、別です。
高い金利(10%以上になることが多い)で調達しているため、会社個人ともに苦しくなってきます。
試しに、決算書を10年分並べて、役員借入金を過去10年にさかのぼって確認してみてください。
業績が厳しかった時期に、役員借入金が増加しているはずです。
役員借入金は、中小企業にとって資本的な意味合いを持つとしても、借入金には違いありません。
可能なら減らしていきたいものです。
一番良いのは、業績回復時に会社の本業の儲けから返済してもらうこと。
個人預金を貸し付けている場合などが該当するでしょう。
役員報酬の未払が原因の役員借入金は、判断が難しいところです。
無理をして会社から返済すると、資金繰りに影響が出ます。
役員報酬が受け取れないのは、経営者の責任です。
そこで、役員借入金を放棄するという方法もあります。
例えば会社に貸し付けているお金が1,000万円あるとします。
この1,000万円を放棄するのです。
損益計算書には、特別利益として債務免除益が1000万円発生し、貸借対照表では、役員借入金が1,000万円減り、変わりに純資産勘定の利益剰余金が1,000万円増えることになります。結果、決算書の内容が良くなります。
実施タイミングについては、本業の赤字が発生しそうな時期、不良債権を償却する時期、固定資産除却損が発生する時期、繰越欠損金が有効活用できる時期、など、債務免除益により法人税負担が発生しない決算期を選びます。
不良資産と役員借入金を相殺して減らす方法もあります。
資産勘定に役員名義で役員貸付金があり、負債勘定に役員借入金がある場合などに使えます。
相殺することで、貸借対照表はスリム化・透明化し、銀行からの財務評価も高くなります。
紹介しますが、あまり好ましくないです。
銀行借入金で役員借入金を肩代わりする方法です。
銀行員が決算書を見て、本業が黒字で役員借入金の残高があれば、「社長、当行が融資しますから役員借入金を返済しませんか?」と提案してくることがあります。
確かに銀行融資を受け、一括で役員借入金が返ってくれば、社長は潤います。
「本来もらっておきべき役員報酬が返済されるだけだ」、と思うかもしれません。
しかし、そこで立ち止まって、本当にそれが正しいのか、考えてみてはどうでしょう。
以上、役員借入金4つの減らし方についてお話ししました。会社の状況に応じて選択してください。
身近だけれど、案外意識が向かない役員借入金について、考えてみました。
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