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役員借入金の減らし方 ~5つの方法のメリット・デメリットを図表付きで簡便に解説~

【この記事で分かること】

 

・ 役員借入金の上手な減らし方

 

・ 5つの減らし方のメリット・デメリット

 

・ 役員借入金はなぜ発生したのか?

 

 

 

この記事のポイントは以下の通り。

 

☑ 役員借入金とは、役員から会社への貸し付けのこと。個人預金、役員報酬未払、個人ローンなど、資金の出所によって、良い悪いがある。

 

☑ 会社にとっては借入金の一種であり、減らすほうが好ましい。減らし方は、以下記事の通り、①本業利益から役員へ返済する、②役員が債権放棄する、③役員貸付金と相殺する、④銀行借入金で一括返済する、⑤役員報酬を減額する、の5種類がある。それぞれ特徴があり、会社の状況に応じて選択する。

 

詳しく見ていきましょう。

 

役員借入金とは

 

役員借入金。

 

決算書の貸借対照表の右側、負債勘定にあります。

 

短期借入金か、長期借入金の近く、もしくは会社によっては、その中に合算されていることもあります。決算書の負債の部にあり、資産の部にある「役員貸付金」と混同しやすいので、注意が必要です。

 

言葉のイメージでは、経営者など役員が、会社に借りているお金、、、

 

実は逆で、役員が会社に貸しているお金なのです。

 

ですから、仮に相続が発生した場合には、被相続人(亡くなった方)の相続財産になり、残された相続人の間で分割になります。

 

役員借入金が決算書にない会社

 

貸借対照表をいくら探しても、見つからない会社があります。

 

役員借入金はどこ?

 

役員借入金がゼロ。

 

大まかに言って二通りです。

 

一つは、意識して会社と個人をきちんと区別し、双方で貸し借りがない会社。

 

もう一つは、役員に会社に貸せるだけのお金がない会社。逆に会社から役員がお金を借りていたりします(資産勘定の役員貸付金)。

 

とはいっても、会社と個人が一体化している場合が多い中小企業では、いくらかは「役員借入金」が負債勘定に記載されていることが多いです。

 

役員借入金は、どうやって発生するのか

 

ではこの役員借入金、どうやって発生するのか。

 

一つは、会社のお金が不足した際に、今まで貯めていた個人の預金を投入するケースです。

 

もう一つは、役員報酬を未払にして会社に貸し付けるケースです。この場合社長は、会社にお金を貸したという意識がありません。

 

現金の出入りがなく、帳簿上での貸し借りだからです。

 

役員の個人預金と、役員報酬の未払。この2つを悪くない役員借入金と呼びます(決して良いとは言えませんが)。

 

そして次は良くない役員借入金ですが、業績が厳しくなった場合に多いケースです。

 

社長など役員が個人ローン(フリーローンやカードローン)で調達して、本来は個人の消費性の使い道に限定されているお金を、会社の資金繰り(事業性)に使います。

 

業績悪化により、通常の銀行法人借入の融資が難しくなった場合に、緊急的に発生します。

 

この場合も、決算書上は役員から会社への貸し付けであり、役員借入金として計上されています。

 

役員借入金、銀行の見方

 

銀行は役員借入金について、比較的好意的な見方(前述した悪くない2つのケースの場合)をします。

 

会社と個人が一体化している中小企業において、長期間に渡り固定化している役員借入金を、資本的な意味合いで判断するからです。

 

ただし、前述したように、役員借入金の原資が「個人ローン」の場合は、別です。

 

会社運転資金を個人ローンで準備はダメ!

 

高い金利(10%以上になることが多い)で調達しているため、会社個人ともに苦しくなってきます。

 

 

役員借入金を時系列で見る

 

試しに、決算書を10年分並べて、役員借入金を過去10年にさかのぼって確認してみてください。

 

業績が厳しかった時期に、役員借入金が増加しているはずです。

 

役員借入金の減らし方① 本業の儲けで返済

 

役員借入金は、中小企業にとって資本的な意味合いを持つとしても、借入金には違いありません。

 

可能なら減らしていきたいものです。

 

一番良いのは、業績回復時に会社の本業の儲けから返済してもらうこと

 

個人預金を貸し付けている場合などが該当するでしょう。

 

役員借入金の減らし方② 債権放棄

 

役員報酬の未払が原因の役員借入金は、判断が難しいところです。

 

無理をして会社から返済すると、資金繰りに影響が出ます。

 

役員報酬が受け取れないのは、経営者の責任です。

 

そこで、役員借入金を放棄するという方法もあります。

 

例えば会社に貸し付けているお金が1,000万円あるとします。

 

この1,000万円を放棄するのです。

 

損益計算書には、特別利益として債務免除益が1000万円発生し、貸借対照表では、役員借入金が1,000万円減り、変わりに純資産勘定の利益剰余金が1,000万円増えることになります。結果、決算書の内容が良くなります(自己資本比率が良くなります)。

役員借入金を債務免除する

 

実施タイミングについては、本業の赤字が発生しそうな時期、不良債権を償却する時期、固定資産除却損が発生する時期、繰越欠損金が有効活用できる時期、など、債務免除益により法人税負担が発生しない決算期を選びます。

 

役員借入金の減らし方③ 不良資産との相殺

 

不良資産と役員借入金を相殺して減らす方法もあります。

 

資産勘定に役員名義で役員貸付金があり、負債勘定に役員借入金がある場合などに使えます。

 

相殺することで、貸借対照表はスリム化・透明化し、銀行からの財務評価も高くなります。

役員貸付金と役員借入金を相殺する

上図A社のケースですと、相殺により、合計資産は1億円から9,000万円に減少しますが、純資産の部は変化しません。よって、自己資本利益率が上昇し、財務評価が高まります(自己資本比率は5.0%→5.6%に上昇;自己資本比率=純資産の部÷資産合計×100)。

 

役員借入金の減らし方④ 銀行借入金で一括返済

 

紹介しますが、あまり好ましくないです。

 

銀行借入金で役員借入金を肩代わりし、一括返済する方法です。

 

銀行員が決算書を見て、本業が黒字で役員借入金の残高があれば、「社長、当行が融資しますから役員借入金を返済しませんか?」と提案してくることがあります。

 

確かに銀行融資を受け、一括で役員借入金が返ってくれば、社長は潤います。

 

「本来もらっておきべき役員報酬が返済されるだけだ」、と思うかもしれません。

 

しかし、そこで立ち止まって、本当にそれが正しいのか、考えてみてはどうでしょう。

 

以下の記事で、そのあたりの事情を詳しく説明しています。参考にしてください。

 

【参考記事】ちょっと考えたい中小企業のその財務対応②~役員借入金を銀行借入金で返済する~

 

 

役員借入金の減らし方⑤ 役員報酬を減額

 

「役員報酬を減額する方法」を説明します。

 

例えば、役員借入金(社長名義)が1,000万円あり、社長のあなたが役員報酬を月額100万円もらっていると仮定します。

 

まず役員報酬を半額の50万円にします。そして、役員報酬の替わりに会社から、毎月50万円役員借入金を返してもらいます。

 

すると、あなたに入ってくるお金は月額100万円(報酬50万円+返済してもらう額50万円)、会社から出ていくお金も月額100万円(報酬50万円+社長へ返済額50万円)と、今までと資金の流れは変わらない形で、役員借入金を減らせます。

 

50万円を20回で返してもらえば、役員借入金の1,000万円あった残高は、ゼロになります。

 

ただ注意点は、税金や社会保険料などの金額が替わることです。

 

役員報酬が1,200万円から600万円に減るので、社長の所得税や社会保険料個人負担額は減ります。会社の社会保険料負担額も減ります。

 

【参考記事】この記事を読んで役員報酬変更のときの注意点をチェック☟

中小企業と役員報酬 ~役員報酬の決め方、変更の手順~

 

 

一方、経費である役員報酬が減る(役員借入金の返済は経費になりません)ので、その金額分、会社に利益が残る形となります。その結果、会社の法人税は増えることになります。

 

また所得証明を取った際、所得は600万円になりますので、個人が住宅ローンなどを借りるときは、所得1,200万円の時と比較して、審査が厳しくなります。

以下に5つの減らし方について、表にしますので参考にしてください(画面クリックで表は拡大します)。

役員借入金の減らし方

 

以上、役員借入金5つの減らし方についてお話ししました。

 

会社の状況は色々違いますので、実際の財務処理は、顧問税理士と相談のうえ、選択することをお勧めします。

 

身近だけれど、案外意識が向かない役員借入金について、考えてみました。

 

 

 

 

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銀行員は、決算書の役員借入金と役員貸付金をこう見ている

 

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