この記事のポイントは以下の通り。
☑ 経営者は、決算書を見て利益が出ているのに、通帳にお金がないことに首をかしげる
☑ その理由は、金融機関や役員個人への借入金元金返済などに資金を振り向けているためである
☑ なぜお金がないのか、理由を把握していくことは大切である
詳しく見ていきましょう。
決算期が終了すると、2ヶ月目の月末(例えば3月決算なら5月末)に、顧問税理士事務所から決算書の提出を受けます。
経営者なら、損益計算書の売上や利益の実績をまず確認するでしょう。
例えば、年商1億円で、最終利益(税引き後当期純利益)が500万円あったとします。
売上高利益率は5%でまずまず、減価償却もフル償却できっちり450万円行ったとします。
理論上は、前の決算期と比較して、950万円の預金残高(利益500万円+減価償却費450万円=減価償却費は現金流出を伴わない費用)が積み上がっているはずです。
しかし毎月毎月資金繰りに追われ、預金口座の残高は、月末いつも100万円を下回る状態。経営者は損益計算書を眺めながら、首を捻ります。「お金はどこに消えたのか?」。
考えられる理由を何点か考えて見ましょう。
①金融機関への長期借入金の元金返済
損益計算書の中に、借入金の元金返済は入っていません。(金利は、支払利息として費用計上されます)。元金返済は経費として見なされないからです。よって、例えば長期借入金の元金返済が月々30万円あれば、年間で360万円の現金が減少することになります。
【参考記事】自社の決算書から、長期借入金の返済能力を判断する簡易な方法
②役員や親族への返済
資金繰りが厳しい時期に、役員や親族から会社がお金を借りていたとします。売上や利益が上がり、資金繰りが落ち着けば、それらを返済します。これも損益計算書のどこにも経費計上されません。また、会社で借入できなくて、やむを得ず金利の高い個人ローンを借りて、そのお金を会社に貸付したとします。個人ローンの返済は、会社のお金から出します。これも経費としては表面化しませんが、会社から資金が出ていくことになります。
③設備投資をした
今後の需要を予測して、設備投資をしたとします。300万円の設備投資をして、支払いをする。しかし、この全額が損益計算書に経費として記載されているわけではありません。例えばこの設備の法定耐用年数が、10年の場合、初年度に経費化できるのは、(分かりやすくするために定率法という考え方を脇に置いて考えると)、300万円÷10年=30万円となります。
【参考記事】減価償却の意味~減価償却費の扱いは、経営にどう影響するか~
④社長の個人的な資金に流用した
会社の資金を社外流出させるケースです。社長個人の住宅や乗用車の購入資金に会社のお金を回したなどのケースです。この場合は、貸借対照表の貸付金勘定が増加します。(損益計算書の経費としては記載されません)。
【参考記事】決算書の役員借入金、役員貸付金。この勘定科目に要注目。
⑤売上代金の回収が長期化している
入金サイトの長い案件を受注しているとか、売掛金が焦げ付いたと言うケースです。損益計算書の売上には、入金になっていない売掛金も計上されています。だから売上は順調でもお金が足らないということがあるのです。(貸借対照表の売掛金残高が増加)。
⑥在庫を仕入れたが、思ったように販売できていない
在庫は、損益計算書上では、期末在庫を仕入れ高から差し引きます。(期首在庫はプラスします)。ですから期首在庫より期末在庫が大幅に増加した場合などは、一見利益はでていますが、在庫が現金化していないため、手元の現金は少ないという減少が起こります。(貸借対照表の棚卸資産残高が増加)。
⑦遅れていた買掛金の支払いを行った
売上利益が順調なので、遅れがちの買掛金支払い(仕入れ代金の支払いなど)を行った。これもすでに以前買掛金とした時点で、経費化しているため、損益計算書には反映されません。(貸借対照表の買掛金残高が減少)。
その他にも色々ありますが、代表的なのは以上のようなことです。
このように一見利益は出ているのに、手元に現金が残らず、いつも資金繰りに追われている。その原因がよく分からない。往々にして見受けられるパターンです。
原因を把握するために必要なのは、資金繰り表の作成です。
経営者として原因を把握し、改善に努めたいものです。
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