「自社の決算書、資産超過?それとも債務超過?」
「決算書を見ても、どこを見ればそれが分かるの?」
「資産超過なら安心? 債務超過だと融資にどう影響する?」
会社の財務状況を示す決算書。その中でも特に重要なのが、**「資産超過」なのか「債務超過」**なのかという点です。この「資産超過と債務超過違い」を正しく理解することは、自社の経営状態を把握し、将来のリスクを評価する上で不可欠です。
この記事では、中小企業支援の現場に立つ経営コンサルタントとして、「決算書 債務超過 見方」「決算書 資産超過 見方」の基本、つまり「債務超過 どこを見る?」「資産超過 どこを見る?」という疑問にお答えします。さらに、見た目上は資産超過でも注意が必要な「実質債務超過」のリスク、「債務超過 融資への影響」、そして債務超過を解消するための具体的な方法について、分かりやすく解説していきます。
【目次】
まず、貸借対照表(B/S)を見て、資産超過と債務超過を判断する基本的な「見方」を理解しましょう。
貸借対照表の構造:純資産の部が鍵
貸借対照表は、左側に「資産の部」、右側に「負債の部」と「純資産の部」が記載され、左右の合計金額は必ず一致します。
・基本式: 資産合計 = 負債合計 + 純資産合計
・純資産の計算: 純資産合計 = 資産合計 - 負債合計
この**「純資産の部」の合計額がプラスかマイナスか**が、資産超過か債務超過かを判断する鍵となります。
債務超過とは?どこを見る?
・定義: 貸借対照表の**「純資産の部」の合計額がマイナス**の状態。
・意味: 会社の資産をすべて売却しても、負債(借金など)を返しきれない状態。つまり、実質的に会社が負債を抱え込んでいる状態(資産 < 負債)。
・決算書でどこを見る?: 貸借対照表の右下の**「純資産合計」の欄がマイナス(△や▲表記、または括弧書き)**になっていないかを確認します。
(図表イメージ:債務超過の貸借対照表 簡易図)
貸借対照表 (債務超過の例)
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資産の部 合計 | 10,000 | 負債の部 合計 | 12,000
| | 純資産の部 |
| | 資本金 | 3,000
| | 利益剰余金 | -5,000
| | 純資産合計 | -2,000 <– マイナス!
——————————————
合計 | 10,000 | 合計 | 10,000
債務超過は、会社の存続に関わる非常に危険なシグナルです。
資産超過とは?どこを見る?
定義: 貸借対照表の**「純資産の部」の合計額がプラス**の状態。
意味: 会社の資産合計が負債合計を上回っている状態(資産 > 負債)。仮に会社を清算しても、資産で負債をすべて返済できる状態。
決算書でどこを見る?: 貸借対照表の右下の**「純資産合計」の欄がプラス**になっているかを確認します。
(図表イメージ:資産超過の貸借対照表 簡易図)
貸借対照表 (資産超過の例)
——————————————
資産の部 合計 | 15,000 | 負債の部 合計 | 12,000
| | 純資産の部 |
| | 資本金 | 3,000
| | 利益剰余金 | 0
| | 純資産合計 | 3,000 <– プラス
——————————————
合計 | 15,000 | 合計 | 15,000
一般的に、資産超過は財務的に健全な状態とされますが、注意点もあります。
資産超過と債務超過の違い まとめ
・債務超過: 純資産がマイナス。資産 < 負債。会社を清算しても借金が残る状態。
・資産超過: 純資産がプラス。資産 > 負債。会社を清算しても資産が残る(理論上)。
「決算書上は資産超過だから安心だ」と考えるのは早計かもしれません。**「実質債務超過」**という隠れたリスクが存在するためです。
決算書上の数字と実態の乖離
決算書上の資産価額は、必ずしも現在の市場価値や回収可能額を反映しているわけではありません。取得時の価額(簿価)で計上されているものが多いため、実態価値が簿価を大きく下回っている資産が存在する可能性があります。
実質債務超過となるケース
以下のような資産が多額に含まれている場合、決算書上は資産超過でも、実態としては債務超過(=実質債務超過)に陥っている可能性があります。
・不良在庫: 長期滞留している、または陳腐化して販売価値のない在庫。
・回収不能な売掛金: 貸倒れの可能性が高い売掛金や受取手形。
・含み損のある不動産・有価証券: 購入時より価値が大幅に下落している土地や株式など。
・実態のない資産: 使途不明な仮払金、回収見込みのない貸付金、実質価値のない営業権(のれん)など。
例えば、純資産が1,500万円あっても、在庫4,000万円のうち2,000万円が不良在庫であれば、実質的な純資産はマイナス500万円(1500 – 2000)となり、「実質債務超過」となります。
重要な見方:純資産の中身(資産の質)を確認する
したがって、「資産超過 どこを見る?」という問いに対しては、純資産合計のプラスを確認するだけでなく、「その純資産が、資産の部のどの項目によって形成されているのか?」「その資産は本当に価値のあるものか?」という「資産の質」まで確認することが重要です。貸借対照表の左側(資産の部)の内容を精査する必要があります。
[関連記事:自己資本比率を見るときのポイント – 比率だけでなく中身も重要]
債務超過状態は、会社の経営や銀行融資に深刻な影響を及ぼします。
経営継続への懸念
債務超過は、財務的な基盤が極めて脆弱であることを意味します。少しの業績悪化や予期せぬ支出で、資金繰りが一気に悪化し、事業継続が困難になるリスクが常に伴います。
金融機関からの評価悪化と融資への影響
「債務超過 融資への影響」は非常に大きいです。銀行は、債務超過の企業を「返済能力が著しく低い」「倒産リスクが高い」と判断します。
・新規融資: 原則として極めて困難になります。プロパー融資(銀行独自の融資)はもちろん、保証協会付き融資ですら謝絶される可能性が高まります。
・既存融資: 追加融資が受けられないため、返済負担により資金繰りが悪化しやすくなります。金利引き上げや、より厳しい担保・保証を要求される可能性もあります。
・取引条件: 融資以外の取引条件(手形割引など)も厳しくなる可能性があります。
債務超過状態での資金繰りは、既存の銀行との信頼関係や、経営改善への強い意志と具体的な計画がなければ、極めて困難と言わざるを得ません。
外部環境悪化時の脆弱性(金利上昇など)
債務超過企業は、外部環境の変化に対する抵抗力が著しく低下します。例えば、昨今のような金利上昇局面では、少ない利益の中から支払う利息負担が増加します。これは、ただでさえ厳しい状況下で、債務超過から脱却するための利益確保をさらに困難にします。 市場金利(短期プライムレートやTIBORなど)の上昇は、債務超過企業の再生にとって逆風となります。
債務超過は放置できない深刻な状態です。解消に向けて、主に以下の4つの方法が考えられます。自社の状況に合わせて、最適な方法を検討する必要があります。
1. 利益計上による内部留保の積み増し: 最も本質的で王道の方法です。損益計算書で継続的に利益を計上し、利益剰余金を積み上げて純資産のマイナスを解消します。ただし、赤字経営からの脱却が必要であり、抜本的な事業改革(売上向上、コスト削減、不採算事業整理など)が不可欠です。
2. 役員借入金の活用(DES・債務免除): 経営者が会社に貸し付けているお金(役員借入金)を活用する方法です。
‣ DES (Debt Equity Swap): 役員借入金を現物出資の形で資本金に振り替える(増資する)。負債が減り、資本が増えます。
‣ 債務免除: 役員が会社に対する債権(役員借入金)を放棄する。会社は債務免除益(特別利益)を計上し、利益剰余金が増加します。 [関連記事:役員借入金の減らし方 5つの方法メリット・デメリット]
3. 含み益のある資産売却: 帳簿価額よりも時価が高い資産(購入時より値上がりした土地、有価証券、評価益のある保険積立金など)を売却し、売却益(特別利益)を計上して利益剰余金を増加させます。ただし、売却による法人税負担が発生する可能性があるため、繰越欠損金の有無などを考慮する必要があります。
4. 増資(第三者割当・株主割当): 経営者の個人資産投入や、外部の投資家などから新たに出資(増資)を受け、資本金を増加させる方法です。
どの方法を選択するにしても、多くの場合、金融機関や税理士などの専門家との相談・連携が必要となります。また、②~④は財務テクニック的な側面が強いですが、同時に①の事業そのものの収益力改善に取り組むことが、持続的な企業経営には不可欠です。
[関連記事:赤字が出たら、今すぐ経営改善計画書を作りなさい!]
決算書における「資産超過と債務超過違い」を理解することは、自社の財務状況を正しく把握するための第一歩です。「決算書 債務超過 見方」や「決算書 資産超過 見方」をマスターし、「どこを見る?」べきかを意識しましょう。
・純資産の部がプラスなら「資産超過」、マイナスなら「債務超過」。
・資産超過でも、「資産の質」をチェックし「実質債務超過」のリスクに注意。
・債務超過は「融資への影響」が非常に大きく、早期解消が不可欠。
・解消法には複数の選択肢があるが、事業の収益力改善が根本。
決算書を単なる数字の羅列としてではなく、自社の健康状態を示す診断書として読み解き、問題があれば早期に対策を講じることが、持続的な企業経営の鍵となります。
自社の決算書の分析や、債務超過の解消策について、具体的なアドバイスが必要な場合は、お気軽にご相談ください。貴社に最適な解決策を一緒に検討させていただきます。
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