今日は、「経営課題抽出と課題解決の方向性」の話をします。
事業デューデリにおいて、このパートが最も大切な部分と言っても過言ではありません。
今まで、事業デューデリにおいて、内部環境分析、外部環境分析、SWOT分析などを実施してきたのは、経営課題を正確に把握するためです。
経営課題を正確に把握できていなければ、事業デューデリの次のステージである、再建計画がピントのズレたものになります。
・バックナンバー
① 経営再建計画が必要な状態とは?こちら
② 経営再建計画は「デューデリ」が8割 こちら
③ 事業デューデリ:うち内部環境分析 こちら
④ 事業デューデリ :外部環境分析はこれだけやれ こちら
⑤ 事業デューデリ:SWOT分析。不都合な真実と有効化の方法 こちら
【目次】
経営課題抽出の手順は、後に説明しますが、経営課題には、「会社が認識できているもの」と「認識出来ていないもの」があります。
「会社が認識できているもの」はヒアリングを重ねていけば、どの部分を経営課題と感じているか、分かります。
会社が認識していない、かつ重要な経営課題をいかに正確に抽出できるか、、、。支援者の力量が問われるところであります。
会社が認識している経営課題。
日々業務に携わっている経営者が感じていることなので、正しいことが多いです。
ただ、漠然としていることもあるので、経営者にこちらから問いかけることにより、明確化させます。
モヤモヤとしたものを、言語や文書として明示化するのは、支援者の大切な役割です。
一方で「会社が認識できていない経営課題」をどのように探し当てるのでしょう?
今までやってきた事業デューデリ(内部環境分析、外部環境分析)が効果を発揮します。
前回まででお話ししてきたように、私の場合、内部環境分析では、商品別収支分析、顧客別収支分析、事業別収支分析、店舗別収支分析、工事別収支分析、車両別収支分析などを実施します。
ポイントは、収支まで引き出すことです。
中小企業の場合、個別売上を把握しているケースはありますが、原価や経費まで紐づけて収支を把握できていることは少ないようです。
個別の収支分析を行えば、会社が気付いていない色々なことが見えてきます。
例えば、
✔ 過去に遡り顧客別収支分析をしてみたら、売上シェアが大きいA社が実は赤字取引だった、逆に売上シェアは大きくないB社は利益率が良い
✔ 商品別収支分析をしてみたら、C商品の利益率が低下傾向にある、逆にD商品は利益が伸びている
✔ 店舗別収支分析をしてみたら、E店とF店の獲得利益に差が出ている。立地や商品構成で差がないのに、理由は何だろうか?
✔ 事業別収支分析をしてみたら、G事業はここ数年赤字が続いているようである、一方H事業は利益が伸びている
上記のようなことを数値でつかむことが出来れば、今後の経営判断に役立ちます。
数値で確認できた改善ポイントが、経営課題です。
外部環境分析(外部環境分析はこれだけヤレ!)は、自社の重要指標を同業者平均と比較することが大切と説明しました。
粗利が重要指標で、同業者平均と比較して低いのなら、そこに経営課題が隠れています。
商品力が弱いのか、価格設定が間違っているのか、ターゲット選定が悪いのか、売り方が悪いのか、、、。
人件費が重要指標で、同業他社と比較して、売上高人件費比率が高いのなら、そこに経営課題が隠れています。
生産性の低い従業員がいるのか、人員配置が厚すぎ従業員がダブついているのか、人件費と売上高が見合っていないのか、不振部門に従業員を配置しすぎているのか、、、。
自社と同業者平均を比較し問題点が見えてくれば、今後の経営判断に役立ちます。
数値で確認できた改善ポイントが、経営課題です。
ちなみに、前回の記事(SWOT分析の不都合な真実)で「SWOT分析で再生戦略は導けない」と話しましたが、大きな理由は、「SWOT分析には数値の裏付けがないから」です。
SWOT分析が効果を発揮するためには、詳細な内部環境分析と外部環境分析(業界平均比較)を実施することが前提となります。
内部環境分析、外部環境分析により、数値で経営課題をつかみました。
次のステップは、分かりやすいようにまとめることです。
ここで「経営課題と改善の方向性シート」を活用します。
ポイントは、切り口ごとに経営課題をまとめることです。
私がよく使っているシートは以下の様なものです。
①部門、②課題項目、③経営課題、④原因、⑤改善の方向性に分けて記載します。
表でまとめると、関係者間で共有が進みます。
多方面から、経営課題を抽出するのですが、優先順位は大切です。
上記の表で言えば、営業政策が最優先で、次に仕入政策となります。
優先順位が高いものから記載していきます。
経営課題を抽出する時のポイントは、
✔ デューデリの内部環境分析、外部環境分析から数値を根拠に導き出す
✔ 経営者と十分にディスカッションして、支援者の独りよがりにならない
✔ 優先順位をつける
✔ 課題の原因となっていることを深堀りする
✔ 改善の方向性(この時点では、まだ具体策でなく方向性で良い)を記載する
です。
以上の手順で経営課題抽出が正確に実施できれば、経営再建計画は半分以上終わったようなもの(経営再建計画は、①デューデリ⇒②再建数値とアクションプラン計画、の2つから構成されます)です。
逆に経営課題の抽出が何の根拠もなく、曖昧な形で記載されている経営再建計画書は、経営者や債権者(金融機関)に対して説得力を持たず、経営再建はうまく進まないでしょう。
それぐらい正確な経営課題抽出は大切なステップで、経営再建の成否を左右するものなのです。
以上、「事業デューデリ:経営課題抽出は再建を左右する」について、お話しました。
今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。
次回は、事業デューデリについてもう少し詳しく、「経営再建計画|事業デューデリ:窮境原因分析」について、お話しします。
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