今日は、「損益イメージの共有」の話をします。
事業デューデリにおいて、これをしておくと、次の数値計画策定のステップが進めやすくなります。
・バックナンバー
① 経営再建計画が必要な状態とは?こちら
② 経営再建計画は「デューデリ」が8割 こちら
③ 事業デューデリ:うち内部環境分析 こちら
④ 事業デューデリ :外部環境分析はこれだけやれ こちら
⑤ 事業デューデリ:SWOT分析。不都合な真実と有効化の方法 こちら
⑥ 事業デューデリ:経営課題抽出は再建を左右する こちら
今まで、事業デューデリのステップとして、内部環境分析、外部環境分析、SWOT分析、経営課題抽出の話をしてきました。
事業デューデリは、最後にまとめとして「窮境(きゅうきょう)原因」「窮境原因除去可能性」をそれらのあとに追加します。
そこでもう一つ資料として付け加えておきたいのは、「損益イメージ図」です。
経営課題抽出も、窮境原因分析も、文章が中心になりますので、間にイメージ図で視認できるものがあれば、関係者の理解度が深まります。
事業デューデリを進めてきて、やれSWOT分析だ、やれ窮境原因分析だと言われても、経営者はピンときていないことがあります。
色々難しいことを言われているけど、要するに何をしたらいいんだ?
経営者は疑問に思います。
経営を再建するためには、
✔ どれぐらいまで売上高を持って行けば良いのか?
✔ 粗利や営業利益はどれぐらい必要なのか?
✔ コスト削減がどれぐらい必要なのか?
そこで役立つのが、これから説明する損益イメージ図です。
私が事業デューデリに添付するのは、下図のようなものです(クリックで拡大します)
当社直近の実績数値から、3年程度を目途にそれぞれの数値をどの水準に持って行く必要があるのか、概算数値を図で示すのです。
通常は、上図の⑨差引利益に減価償却費を加算したものが、金融機関借入金の返済財源となります。
事業デューデリの段階で、正確な目標数値を出す必要はありません。
あくまでも、関係者間で方向性を共有するためのイメージ数値で大丈夫です。
詳細な数値は、事業デューデリが終わって、数値計画とアクションプランのパートで作っていきます。
しかし、概算のイメージでも効果はあります。
私の経験上では、この損益イメージ図に対して、金融機関や経営者は興味を示します。
経営者の頭の中に、数値イメージがインプットされます。
今まで事業デューデリ①~⑥のバックナンバー記事でお話ししてきた形で、事業デューデリが出来ていなければ、損益イメージ図は作成できません。
部署ごとの個別の人件費合計と貢献度の関係性が分かっていなければ、今後どこに人件費配分をしていいか分かりません。
経営課題が正しく抽出できていなければ、今後の改善具体策と数値の関係が分かりません。
会社にとって何が重要指標なのか理解できていなければ、改善の方向性が正しく設定できません。
今までやってきた一連の事業デューデリ作業は、連動しているのです。
事業デューデリでやってきた細かな作業を、イメージ図として簡略化したものが、損益イメージ図です。
経営者に改善イメージを想定させ、金融機関と数値の方向性を共有するために、有効なツールです。
私が参加して説明する事業デューデリの説明会でも、損益イメージ図について、質問が出ます。
メインバンクが、損益イメージ図を持って、経営者を諭すような場面も何度か見てきました。
「社長、この項目をここまで戻していくには、覚悟が必要ですよね」など。
経営者、金融機関、支援専門家が再建計画の目線を合わせていくため損益イメージ図は有効です。
経営者にとって、経営再建計画は、「会社を立て直し次世代へできるだけスムーズな形で引き継いでいく」ために、作るのもです。
金融機関にとって経営再建計画は、貸したお金をきちんと返してもらうため(そのためには経営を立て直してもらわないといけないので)、に作ってもらうものです。
金融機関は、経営再建計画の実現性と合理性が納得できれば、計画に同意します。
そして同意した計画について、約束した通り履行できているか、進捗を定期的に確認します。
債権者と債務者という立場は違えど、経営者と金融機関の共通の目的は、経営再建が達成され、会社が良い状態で継続されることなのです。
以上、「事業デューデリ:損益イメージ図の作成」について、お話しました。
今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。
事業デューデリ編は今回が最終回です。次回からは、次のステップ、経営再建計画「アクションプランと数値計画」についてお話ししていきます。
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