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経営再建計画が必要な状態とは?|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|①

はじめに:なぜ今「経営再建計画」が重要なのか?

近年、政府の中小企業支援策は、一時的な資金繰り支援から、より本質的な「事業再生支援」へと重点を移しつつあります。厳しい経営環境を乗り越え、事業を持続的に成長させるためには、早期に経営課題を認識し、具体的な対策を講じることが不可欠です。その中核となるのが**経営再建計画(経営改善計画)**です。

しかし、「いつ計画が必要になるのか?」「具体的にどう作成すれば良いのか?」「誰に相談すれば良いのか?」といった疑問を持つ経営者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、特に中小企業の経営者や関係者の方々に向けて、以下の点を分かりやすく解説します。

・経営再建計画が必要となる具体的な状況(サイン)
経営再建計画書の書き方のポイントと成功の秘訣
・自社だけでは難しい理由と、中小企業が活用できる再建スキーム(外部支援)
・公的支援制度や専門家の活用法

本記事が、貴社の財務改善と事業再生に向けた第一歩となれば幸いです。

なぜ経営再建計画が必要なのか?「2期連続赤字」は危険信号

では、具体的にどのような状況になったら、経営再建計画の策定を検討すべきなのでしょうか?

一つの明確な基準として、**「経常利益の赤字が2期連続した場合」**が挙げられます。
2期連続の赤字は、それが一時的な要因ではなく、事業構造や市場環境の変化など、恒常的な問題に起因している可能性が高いことを示唆しています。ここで適切な対策を講じなければ、財務状況はさらに悪化し、いわゆる「泥沼」状態に陥るリスクが高まります。

重要なのは、早期に行動することです。決算を待たずとも、期の途中で2期連続赤字が確実視される状況であれば、その時点ですぐに動き出すべきでしょう。

ただし、注意点があります。それは粉飾決算です。見かけ上の黒字を作り出しても、実態が赤字であれば状況は同じ、むしろ問題を先送りするだけであり、発覚した際には金融機関からの信頼を失うなど、より深刻な事態を招きます。(参考:粉飾認定されると銀行の融資態度は180度変わる

 

経営再建計画、自社だけで作成するのは難しい?

経営再建計画を自社だけで作成しようと試みることも選択肢の一つですが、成功するケースは多くありません。その主な理由を解説します。

内部課題の客観的把握の難しさ

2期連続の赤字を引き起こす根本原因は、多くの場合、会社内部に存在します。

・経営者の意思決定プロセスや思考の偏り
・特定の取引先への依存体質
・硬直化した組織構造や人事の問題
・コスト構造の見直し不足

こうした自社が抱える問題点を、内部の人間だけで客観的かつ的確に把握し、分析することは非常に困難です。現状への慣れや内部の人間関係などが、冷静な判断を妨げる要因となりがちです。

課題を正確に整理し、具体的な改善策(アクションプラン)を策定し、それを実現可能な数値計画に落とし込む一連のプロセスは、専門的な知識や客観的な視点なくしては、極めて難しい作業と言えるでしょう。

中小企業の再建スキーム:外部支援の活用が鍵

自社だけでの計画策定が難しい場合、どのように進めれば良いのでしょうか? 答えは外部の支援を積極的に活用することです。主な相談先と中小企業向けの再建スキームについて解説します。

まずはメインバンクへの相談から

最初に相談すべき相手は、取引金融機関、特にメインバンクです。金融機関は企業の財務状況を把握しており、再建に向けた第一歩として重要な役割を担います。

公的支援機関の活用
金融機関と連携しながら、あるいは金融機関からの紹介を通じて、中立的な立場で支援を行う公的機関を活用する方法があります。

・中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会): 各都道府県に設置されており、再生計画策定支援や関係者(金融機関など)との調整を行います。多くの場合、メインバンク等が相談を持ち込み、協議会が企業の状況を精査した上で支援が開始されます。
・信用保証協会: 保証付き融資を受けている場合、返済条件の変更(リスケジュール)などの相談に応じてくれることがあります。再生計画の策定支援を行う場合もあります。

これらの公的機関は、金融機関、企業、専門家の中間に立ち、目線合わせを行いながら支援を進めるため、スムーズな再生プロセスが期待できます。

相談窓口: 最寄りの中小企業活性化協議会や信用保証協会のウェブサイトをご確認ください。また、商工会議所や商工会が窓口となっている場合もあります。

経営改善計画策定支援事業(通称:405事業)とは?

もう一つの有力な選択肢が、「経営改善計画策定支援事業(通称:405事業)」の活用です。これは、中小企業が認定経営革新等支援機関(税理士、中小企業診断士、コンサルタントなど国が認定した専門家)の支援を受けて経営改善計画(経営再建計画)を作成する際に、専門家費用の最大2/3(上限あり)が補助される制度です。

この事業を活用することで、費用負担を抑えながら、専門家のサポートのもとで質の高い計画策定が可能になります。金融機関との調整やモニタリング支援も含まれる場合が多く、中小企業にとって心強い再建スキームの一つです。筆者もこの事業を活用し、多くの企業の計画策定を支援してきました。

ただし、405事業の利用にはメインバンクの事前同意が必要となるのが一般的です。まずはメインバンクに相談し、この制度の活用について意向を確認しましょう。

詳細情報: 中小企業庁のウェブサイトや、お近くの認定経営革新等支援機関にご確認ください。
(参考:405事業で赤字経営を立て直す!注意点とチェックリスト

相談する際の注意点

外部支援を求める際には、いくつか注意点があります。
「待ち」の姿勢は危険: 金融機関からの提案を待っているだけでは、手遅れになる可能性があります。金融機関によって事業再生への取り組み姿勢には温度差があるため、自社の状況が悪化していると感じたら、積極的に相談することが重要です。(参考:二期連続赤字になった。経営者は今すぐ何をするべきか。

・メインバンクとの連携: 公的機関への相談も有効ですが、まずはメインバンクに相談し、理解と協力を得ることが基本です。メインバンクを介さずに直接公的機関に相談することが、必ずしも良い結果に繋がらないケースもあるため、慎重な判断が求められます。粘り強く交渉する姿勢も大切です。

経営再建計画書の書き方と成功のポイント

経営再建計画(事業再生計画書)は、作成することがゴールではありません。計画を実行し、会社を良い状態に立て直すことが最終目的です。そのために、実現性の高い計画を作成することが極めて重要になります。

実現性の高い計画に必要な要素

長年の支援経験から見えてきた、計画策定を成功に導くための重要なポイントは以下の5つです。

1. 経営者の本気の覚悟: 過去の経営判断を真摯に反省し、時には身を削る覚悟で、隠し事をせず、プライドを捨てて再建に取り組む姿勢が不可欠です。

2. 本業における強みの存在: 業績が悪化していても、「熱心な固定客がいる」「他社にはない独自技術やサービスがある」など、事業の核となる強みを有していることが再建の土台となります。

3. 経営者を支える存在: 経営者の孤独な戦いではなく、再生に向けて共に汗を流してくれる家族や幹部社員の存在、そして彼らに正直に現状を伝え、協力を仰ぐことが重要です。

4. メインバンクの支援体制: メインバンクの理解と協力なしに、実効性のある再建計画の策定・実行は困難です。日頃からの良好な関係構築も大切になります。

5. 経験豊富で客観的な専門家の伴走: 長年の付き合いがある顧問税理士なども頼りになりますが、時には「身内」に近い存在となり、客観的な視点が欠けることもあります。事業再生の経験が豊富で、客観性を持ちつつも熱意をもって支援してくれる専門家との出会いが、計画の質を大きく左右します。

計画書作成をサポートする専門家の種類と選び方

経営再建計画の策定には、様々な専門家の知見が役立ちます。

・税理士: 財務・税務の専門家。日常的な顧問契約を結んでいる場合が多い。計画策定における数値計画の作成支援など。
・弁護士: 法律の専門家。私的整理や法的整理(民事再生など)の手続き、債権者との法的な交渉などで活躍。
・中小企業診断士: 経営全般の専門家。経営戦略、マーケティング、組織運営など幅広い視点から課題分析と改善策を提案。
・事業再生コンサルタント: 事業再生に特化した専門家。財務・事業の両面からデューデリジェンスを行い、金融機関交渉を含めた計画策定・実行を主導。

【専門家の選び方のポイント】

・事業再生に関する実績: 具体的な支援実績や成功事例を確認する。
・客観性と専門性: 自社の状況を冷静に分析し、的確なアドバイスができるか。405事業などでの経験も判断材料になる。
・コミュニケーション能力と相性: 経営者と円滑に意思疎通ができ、信頼関係を築けるか。
・熱意とコミットメント: 困難な状況でも粘り強く伴走してくれるか。

メインバンクや公的支援機関に相談し、自社の状況に適した専門家を紹介してもらうのも有効な方法です。認定経営革新等支援機関の中から選ぶ際には、再生支援の経験が豊富な機関を選ぶことが重要です。

計画書のサンプルやテンプレートについて

具体的な経営再建計画書の書き方やフォーマットについては、中小企業庁のウェブサイトや、中小企業活性化協議会、認定経営革新等支援機関などのウェブサイトで、参考となる情報やひな形が公開されている場合があります。

ただし、計画書は企業の状況に応じてオーダーメイドで作成されるべきものです。テンプレートはあくまで参考とし、自社の実情に合わせた具体的な内容を盛り込むことが重要です。専門家の支援を受けながら作成することをお勧めします。

まとめ:手遅れになる前に早期行動を

経営再建計画は、いわば会社の再生に向けた設計図であり、羅針盤です。その策定はゴールではなく、新たなスタート地点に立つための重要なプロセスです。

最も大切なのは、**「手遅れになる前に、できるだけ早く行動を開始すること」**です。2期連続の赤字はその重要なサインの一つと捉え、見て見ぬふりをせず、現状を直視することから始めましょう。

自社だけで抱え込まず、メインバンク、公的支援機関、そして経験豊富な専門家の力を借りながら、実現可能な再建計画を策定し、実行に移していくことが、事業再生を成功させるための鍵となります。

この記事が、経営再建を考える上での一助となれば幸いです。

(関連情報)
より具体的な「事業再生計画書の構成要素」や「数値計画の立て方」については、別の記事で詳しく解説する予定です。

 

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