「経営改善計画書の『計画』部分、具体的に何を書けばいい?」
「銀行が納得するような数値計画はどうやって作るの?」
「アクションプランと数値計画の関係性がよく分からない…」
会社の経営改善や再生に取り組む際、その設計図となるのが「経営改善計画書」です。特に、銀行などの金融機関に提出し、支援(リスケジュールや追加融資など)を得るためには、説得力のある計画を作成することが不可欠です。
前回までの記事(現状分析編)でお話ししたように、計画の土台となるのは**徹底した現状分析(デューデリ)です。そして、その分析結果を踏まえ、計画の「核」となるのが「具体的な改善行動(経営改善計画書 アクションプラン)」と、その結果として将来の財務状況がどう変化するかを示す「具体的な数値計画(経営改善計画書 数値計画)」**です。
この記事では、ここ愛媛県をはじめ多くの中小企業の経営改善計画書策定をご支援してきたコンサルタントとして、銀行も納得する数値計画とアクションプランの具体的な作り方、その連動性の重要性、そして405事業などの支援制度(最新情勢含む)との関連について解説します。
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【目次】
現状分析(デューデリ)によって明らかになった経営課題に対し、「何をすべきか」を具体的に示したものが経営改善計画書 アクションプランです。
現状分析の課題から改善策へ
現状分析で特定された「根本原因」を一つひとつ潰していくための具体的な行動が、アクションプランとなります。例えば、「売上減少」が課題であれば、「新規顧客開拓策」「既存顧客深耕策」「新商品開発」などがアクションプランの候補となります。
なぜ経営者主導が重要か?
ここで重要なのは、アクションプランのアイデアや最終決定は、経営者自身が主体となって行うことです。外部のコンサルタントがどれだけ優れた提案をしても、経営者自身が「腹落ち」し、「本気で実行する」という覚悟がなければ、計画は**「机上の空論」**になってしまいます。支援者の役割は、経営者が考えやすいように論点を整理したり、客観的な視点からアドバイスしたりすることにあります。
具体的なアクションプランの要素
優れたアクションプランは、**「誰が」「いつまでに」「何を」「どのように」**行うかが具体的に示されています(いわゆる5W1H)。漠然とした精神論(「営業努力を強化する」など)ではなく、測定可能で期限が明確な行動に落とし込むことが重要です。
具体的なアクションプランが決まったら、次にそれを数値計画(「経営改善計画書 数値計画」)に落とし込み、会社の未来の姿を具体的に描いていきます。
なぜ詳細な数値計画が必要か?
・目標の明確化: 「いつまでに黒字化するのか」「借入金をどの程度まで削減するのか」といった具体的なゴールを設定できます。
・行動効果のシミュレーション: 各アクションプランが、売上・費用・利益・資金繰りにどの程度の影響を与えるかを予測・検証できます。
・銀行評価の根拠: 銀行が最も重視する**「返済能力」を、客観的な数値計画**(特にキャッシュフロー計画)で示すことができます。
・進捗管理の基準: 計画実行後のモニタリングにおいて、計画と実績を比較するための基準となります。
支援者(コンサル)が「たたき台」を作る理由
損益計画、貸借計画、キャッシュフロー計画などを、アクションプランと整合性を取りながら複数年分作成するのは、専門的な知識と多くの時間が必要です。多くの中小企業経営者にとっては負担が大きいため、ここは専門家(コンサルタント等)が、現状分析とアクションプランに基づき、実現可能な範囲での数値計画の「たたき台」を作成し、経営者に提案・説明する、という進め方が現実的です。経営者はそのたたき台を基に、実現可能性などを議論・修正していきます。
主要な数値計画の内容
経営改善計画書に盛り込むべき主要な数値計画には、以下のようなものがあります。
・ 損益計画: 売上高、売上原価、販管費、各段階利益の将来予測。黒字化への道筋を示す。
・ 貸借対照表計画: 資産、負債、純資産の将来予測。自己資本比率の改善などを示す。
・キャッシュフロー計画: **銀行が最重要視する計画の一つ。**営業CF、投資CF、財務CFを予測し、資金繰りの安定化と返済原資の確保を示す。
・製造原価計画・販売管理費計画: コスト削減目標を具体的に反映させる。
・金融機関借入金残高推移・返済計画: 借入金の返済が計画通り可能であることを示す。
・純資産計画: 利益剰余金の増加など、自己資本の充実を示す。
・人員計画: 人員配置の変更や人件費の変動を織り込む。
・設備投資計画: 計画達成に必要な設備投資とその資金計画。
・資金繰り計画: 上記計画を統合し、具体的な月次等の資金繰り予測を示す。
・金融支援計画: 計画実行のために必要な銀行からの支援(リスケジュール、新規融資など)の内容。
・減価償却費明細: 設備投資計画と連動した将来の償却費予測。
・ 金融機関別保全状況: (必要に応じて)担保・保証の状況と変化。
(※中小企業庁が公開している経営改善計画書のサンプルなども参考に、必要な項目を盛り込みます。)
[参照リンク:経営改善計画書サンプル(中小企業庁)]
アクションプランと数値計画の「連動」【最重要】
最も重要なのは、具体的な「アクションプラン」と「数値計画」が、明確な根拠をもって「連動」していることです。 「この行動を実行するから、売上がこれだけ伸びる」「このコスト削減策を実施するから、経費がこれだけ減る」という因果関係が、論理的かつ客観的に説明できなければ、計画全体の信頼性が揺らぎます。
銀行は、提出された経営改善計画書の数値計画について、特に以下の点を重点的にチェックします。
キャッシュフロー計画と返済能力
・計画期間中のキャッシュフロー(特にフリーキャッシュフロー)は、既存および新規の借入金返済を賄うのに十分か? 返済原資の裏付けはあるか?
[関連記事:キャッシュフロー計算書 見方 – 黒字なのに現金がない理由が分かる!]
[関連記事:自社の決算書から長期借入金の返済能力を判断する簡易な方法]
金融支援計画の妥当性
・計画に盛り込まれた金融支援要請(リスケジュール期間、新規融資額など)は、事業計画やキャッシュフロー計画と照らして、妥当な内容・水準か?
計画数値の根拠・詳細度
・売上、利益、コストなどの計画数値の算出根拠は明確か? 楽観的すぎたり、逆に保守的すぎたりしないか?
・支払利息や保証料など、銀行が特に関心を持つ項目について、詳細な計算根拠(借入金残高推移、適用利率など)が示されているか? (曖昧な説明は不信感に繋がります)
[関連記事:銀行が提出した経営改善計画を認めない3つの理由]
国の経営改善計画書策定支援制度である405事業を活用する場合、計画の「質」は特に重要になります。
405事業における計画要件
405事業の補助金を受けるためには、策定した経営改善計画書(数値計画、アクションプラン含む)が、中小企業活性化協議会および全ての取引金融機関から「実現可能性が高い」と認められる必要があります。質の低い計画では、補助金が得られないだけでなく、金融支援も受けられない可能性があります。
最新動向:計画の「質」と「モニタリング」重視 (405事業 最新情勢)
405事業に関する最新情勢として、近年は単に計画を策定するだけでなく、その計画の「質」の高さと、策定後の「モニタリング」を通じた計画実行の確実性が、より一層重視される傾向にあります。実現可能性の低い計画や、実行・モニタリング体制が不明確な計画は、承認されにくくなっています。 制度利用にあたっては、中小企業庁の最新情報を必ずご確認ください。
[関連記事:405事業 徹底活用ガイド – 流れ・メリット・注意点と成功の鍵]
経営改善計画書は、完成がゴールではありません。
計画は実行されてこそ価値がある
最も重要なのは、計画に沿って具体的な改善行動を着実に実行していくことです。
モニタリングによる進捗管理と軌道修正 (経営改善計画書 モニタリング)
計画通りに進むとは限りません。定期的なモニタリング(通常、専門家が関与)を通じて、計画と実績の差異を確認し、その原因を分析し、必要に応じて計画や行動を修正していくことが、計画を「生きた」ものにし、目標達成に繋げる鍵となります。これは経営改善計画書 モニタリングの本来の目的であり、銀行との信頼関係維持にも不可欠です。
[関連記事:経営改善計画書作成後のモニタリングの重要性]
経営改善計画書の中核をなすのは、**「経営改善計画書 アクションプラン」と「経営改善計画書 数値計画」**です。
・アクションプランは経営者主導で、課題解決に直結する具体的な行動を定める。
・数値計画は専門家の力も借りつつ、アクションプランと連動した、根拠のある実現可能な未来像を描く。
・銀行は特にキャッシュフローと返済能力を重視するため、その算出根拠を明確に示す。
・405事業などを活用する場合も、**計画の「質」と、その後の「実行・モニタリング」**が問われる。
現状分析に基づいた説得力のある数値計画と具体的なアクションプラン、そしてそれを実行し続ける覚悟こそが、銀行の信頼と支援を再び獲得し、会社の未来を切り拓く力となります。
「銀行も納得する経営改善計画書を作成したい」「具体的な数値計画やアクションプランの策定を支援してほしい」「405事業の活用を検討している」経営者様は、当事務所の初回無料相談をご利用ください。貴社の状況に合わせた計画策定を、現状分析から実行支援まで伴走します。
この記事が、経営改善計画書の作成に取り組む皆様にとって、その核心部分である数値計画とアクションプランの重要性をご理解いただく一助となれば幸いです。
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