「銀行に提出する経営改善計画書、何から手をつければいい?」
「経営改善計画書の『現状分析』って、具体的に何をすればいいの?」
「デューデリってよく聞くけど、財務デューデリと事業デューデリは何が違う?」
会社の業績が悪化し、経営改善計画書の作成が必要となった際、多くの経営者や支援者が陥りやすいのが、「将来の計画」や「改善策」ばかりに目が行き、その土台となるべき**「現状分析」**を軽視してしまうことです。
しかし、現状の課題やその根本原因を正確に把握しないまま立てられた計画は、説得力を欠き、銀行などの金融機関に認めてもらえないだけでなく、実行しても効果が出ない「絵に描いた餅」になりかねません。
この記事では、ここ愛媛県をはじめ30年以上にわたり多くの中小企業の経営改善計画策定をご支援してきたコンサルタントとして、経営改善計画書作成における最重要プロセスである「現状分析」、すなわちデューデリジェンス(デューデリ)(「経営改善計画書 デューデリ」)の重要性、具体的な分析項目(財務デューデリ、事業デューデリ)、効果的な進め方、そして405事業などの公的支援制度における位置づけ(最新情勢含む)について解説します。
【目次】
経営改善計画書の成否は、現状分析(デューデリ)の質にかかっていると言っても過言ではありません。
根拠なき計画は「絵に描いた餅」
銀行などの金融機関が経営改善計画書を見る際、**「なぜこの改善策が必要なのか?」「なぜこの売上目標が達成可能なのか?」という問いに対する「根拠」**を求めます。その根拠となるのが、現状分析(デューデリ)の結果です。分析が不十分だと、計画全体の説得力がなくなり、「銀行 経営改善計画 認めない」という結果に繋がりやすくなります。
課題の真因特定が改善の第一歩
業績不振には必ず原因があります。表面的な問題だけでなく、財務構造、事業構造、組織体制、市場環境など、多角的なデューデリを通じて**課題の根本原因(真因)**を特定することが、的を射た効果的な改善策を立案するための絶対条件です。
銀行・支援者との共通認識の土台
現状分析(デューデリ)の結果を客観的なデータや事実に基づいて示すことで、経営者、銀行(メインバンク等)、支援者(コンサルタント等)の間で、会社の現状と課題に対する共通認識を持つことができます。これが、計画策定やその後の支援・モニタリングを円滑に進めるための重要な土台となります。
経営改善計画書におけるデューデリ(「経営改善計画書 デューデリ」)は、大きく「財務デューデリ」と「事業デューデリ」に分けられます。それぞれで分析・調査すべき項目例を挙げます。(※会社の状況に応じて項目は増減します)
① 財務デューデリ:会社の「数字」を徹底解剖
財務デューデリは、主に過去から現在までの財務データを分析し、定量的な課題を把握します。
・過去財務分析: 過去数年~10年程度の損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の推移分析(傾向把握)。
・収益性分析: 売上総利益率、営業利益率、経常利益率などの推移と要因分析。
・コスト構造分析: 製造原価、販売管理費の詳細分析、損益分岐点分析など。
・財務安全性分析: 自己資本比率、流動比率、固定長期適合率、借入金依存度などの分析。
・キャッシュフロー分析: 営業CF、投資CF、財務CFの推移分析、資金繰り表の作成・分析。
・実態資産・負債評価: 実態貸借対照表の作成(不良資産の評価減、簿外債務の有無確認など)。
[参考記事:実態バランスシートの作り方【前編】~資産の部の補正方法と不良資産の見分け方~]
・借入金・リース分析: 金融機関別・種類別の残高、金利、返済状況、担保・保証状況、リース契約内容の確認。
・過剰債務判定: キャッシュフローに対する有利子負債の水準評価。
② 事業デューデリ:会社の「実態」と「環境」を把握
事業デューデリは、財務データだけでは見えない、事業そのものの内容や外部環境などを分析します。
・事業概要・沿革: 会社の歴史、事業内容、ビジネスモデルの理解。
・組織・人員: 組織体制、人員構成、人件費構造、従業員のスキルやモチベーション。
・業務プロセス: 製造・仕入から販売・回収までの業務フロー分析、ボトルネックや非効率の特定。(経済産業省「ローカルベンチマーク」等のツール活用も有効)
・商品・サービス: 主要商品・サービスの競争力、収益性、ライフサイクル等の分析。
・販売・顧客: 主要販売先、顧客層、販売チャネル別の売上・利益分析。
・市場・競合: 事業を取り巻く市場動向、競合他社の状況と自社のポジション分析。
・SWOT分析: 自社の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の整理。
・関連当事者: 関係会社や役員個人との取引内容、資金移動の実態調査。
・設備状況: 主要設備の稼働状況、老朽化度、更新計画の要否。
・許認可・法規制等: 事業に必要な許認可や関連法規の遵守状況。
③ 最終評価:窮境要因の特定と再生可能性
これらの財務デューデリと事業デューデリの結果を統合し、「なぜ経営不振に陥ったのか(窮境要因)」を特定し、**「その要因は除去可能か」「事業として再生できる可能性があるか」**を最終的に評価します。
広範囲にわたるデューデリを効果的に進めるには、コツがあります。
「数値分析」を先行させる理由
私の経験上、まず財務デューデリ(数値分析)から着手するのが有効です。なぜなら、客観的な「数字」は、しばしば経営者の「感覚」との間にズレがあるからです。
・例:「A社は儲かっているはず」と思っていたが、取引先別採算を見ると赤字だった。
・例:「Bさんはよくやってくれている」と思っていたが、人件費と粗利貢献度を比較すると見合っていなかった。
最初に数値を抑えることで、議論の前提となる客観的な事実を把握でき、その後の経営者との対話や、事業デューデリにおけるヒアリング・分析を、より本質的な論点に集中させることができます。
分析結果を基に対話・深掘り
数値分析の結果を基に、経営者と「なぜこの数字になっているのか」「現場では何が起こっているのか」といった対話を重ねます。SWOT分析なども、数値の裏付けを持って行うことで、より具体的で説得力のあるものになります。このプロセスを通じて、経営者自身が課題に気づき、改善への当事者意識を持つことが重要です。
図表を活用し「見える化」する
分析結果や課題は、**グラフや表などを活用して「見える化」**し、誰にでも分かりやすく伝える工夫も大切です。
国の補助制度である405事業(経営改善計画策定支援事業)などを活用する場合も、このデューデリは極めて重要です。
405事業等でも現状分析は必須
405事業の申請や、計画に対する金融機関の同意を得るためには、計画の土台となる客観的で詳細な現状分析(デューデリ)の結果を示すことが求められます。分析の質が低いと、計画全体の信頼性が疑われ、支援が受けられない(「405事業 失敗」)可能性があります。
最新動向:早期改善・計画精度重視 (405事業 最新情勢)
近年の405事業を巡る情勢としては、より早期段階での経営改善支援(「早期経営改善計画策定支援」通称:Vアップ事業)の活用促進や、**計画の質の向上(実現可能性、モニタリングの重要性)**がより一層重視される傾向にあります。また、経営者保証ガイドラインとの連携の中で、計画による財務改善が保証解除の要件となるケースも増えています。
【重要】 補助対象や申請要件、求められる分析のレベルなどは変化する可能性があるため、必ず利用検討時に中小企業庁のウェブサイト等で最新情報を確認してください。
[参照リンク:中小企業庁 経営改善計画策定支援事業ページ]
[関連記事:405事業 徹底活用ガイド – 流れ・メリット・注意点]
経営改善計画書の作成において、現状分析、すなわちデューデリ(財務デューデリ・事業デューデリ)は、計画全体の成否を左右する最も重要なプロセスです。
・現状分析が不十分な計画は、銀行に認められず、実行しても効果は薄い。
・デューデリは、財務(数値)と事業(実態)の両面から、客観的かつ徹底的に行う必要がある。
・**「数値分析先行」→「対話による深掘り」**という進め方が効果的。
・405事業などの支援制度活用においても、質の高いデューデリは必須。
経営改善計画策定は、大変な労力を要しますが、その大部分は現状分析(デューデリ)に費やすべきと言っても過言ではありません。このプロセスに真剣に取り組むことが、会社の課題を正確に把握し、未来への確かな一歩を踏み出すための基礎となります。
「自社の経営課題を客観的に分析したい」「銀行も納得する経営改善計画書の土台となるデューデリをお願いしたい」「405事業を活用したいが、現状分析から相談に乗ってほしい」経営者様は、当事務所の初回無料相談をご利用ください。計画策定の第一歩から具体的にサポートします。
この記事が、経営改善計画書の策定における現状分析(デューデリ)の重要性をご理解いただく一助となれば幸いです。
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