経営改善計画書と言いますが、私は2段階に分かれると認識しています。
まずは、前半が「現状分析ステージ」。
その次の段階として、後半が「将来数値計画と改善の具体的行動策」。
ここでは、現状分析の具体的な方法についてお話しします。
経営改善計画書を、後半(将来数値計画と改善の具体的行動策)だけで捉えていると、何か物足りない計画となってしまいます。
理由は、現状分析ができていないため、数値や行動計画の根拠が弱いからです。
銀行など金融機関から、「この売上数値、利益数値の根拠は何ですか?」「本当にキャッシュフローで今後返済できるのですか?」と質問されて、十分な回答が返せなくなります。
現状分析が不十分なまま作成された経営改善計画書は、過去の数値を将来に向けて、横ならびで置いているだけです。だから迫力も説得力もありません。
それを防ぐためには、現状分析に意識を向けることです。
私の場合は、全体にかける力を100としたら、50以上を現状分析にかけます。
そして現状分析が終わった時点で、経営者や金融機関など債権者と、課題や方向性を意見交換をして、後半戦の数値と行動計画作成に移ります。
これをしていないと、出来上がった計画書が債権者から認められないものとなります。
では、現状分析で作成する書類をお話します。
支援先企業の置かれた状況や経営環境によって様々なのですが、例えば以下のような内容を調査分析します。
①会社年表作成
(社会の動き、業界の動きの中で、企業はどのような意思決定をして動いてきたか)
②組織図
③過去10ヵ年貸借対照表分析
④過去10ヵ年損益計算書分析
⑤過去10ヵ年キャッシュフロー分析
⑥製造原価分析
⑦販売管理費分析
⑧事業部門別収支分析
⑨店舗別収支分析
⑩取引先別収支分析
⑪商品カテゴリー別収支分析
※⑧~⑪については、会社の状況に応じて、優先順位の高いものを選定します。
⑫業務の流れ分析
(製造から販売まで業務フローを確認し、その中で問題点を抽出→経済産業省が公開している「ローカルベンチマークシート」を活用すると、まとめやすいでしょう)下記経済産業省サイトリンク→https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/
⑬金融機関借入金の内訳
(調達行、金額、金利、返済期間、保証の有無、保証割合、保証料)
⑭リース資産の内訳
(調達リース会社、金額、設備内容、リース料、リース期間)
⑮資金繰り分析
(資金繰り表を作っていなければ、場合によっては最初から作ります)資金繰り表の作成方法は下記記事を参照
⑯人件費内訳
(人員構成はどうなっていて、人件費構造はどうなっているか、社会保険料等法定福利費はどうなっているか)
⑰設備の状況
(更新時期に来ている老朽化している設備はないか)
⑱関連会社間、法個人間、の資金の流れ調査
(関係会社間、法個人間の資金の流れをフロー図や表で見える化)
⑲役員個人借入、個人資産の状況
(役員借入金、役員貸付金の原資は何か、今後の返済の可能性はどうか)
⑳手持ち案件の確認(受注残や見込み案件)
㉑競合分析
(競合はどこか、競合の強みは何か、自社と比較して顧客支持度はどうか、など)
㉒SWOT分析(強み、弱み、事業機会、脅威)
㉓実態貸借対照表
(不良資産や不良在庫、簿外債務の調査、役員への貸付金・役員からの借入金は内容をよく確認する)
【参考記事】実態バランスシートの作り方【前編】~資産の部はこう作る~
㉔過剰債務判定
㉕経営課題と改善の方向性
(上記、①~㉔の分析を踏まえて、会社の経営課題はどこにあるか、その課題は改善可能性があるか)
㉖窮境要因と除去可能性(事業調査・財務調査のまとめ)
(上記①~㉕の分析により導き出される、現在の苦境に至った原因は何か、またその苦境要因は、経営改善行動により取り除くことが可能か)
こんな感じでやります。後は状況に応じて随時、追加したり減らしたりします。調査をしていて気になる部分は、深堀りして確認していきます。
ポイントは分解することです。決算書に記載されている数字は、あくまでも合計です。内訳は決算書では分かりません。場合によっては、社内の内部帳簿や総勘定元帳から元データ数値を拾ってくることもあります。
図表を使って、誰が見ても分かりやすいような資料を作成することも大切です。私の場合、Excelで作ります。WordやPowerPointはあまり使いません。
事業デューデリについて、追加でお話しします。
上記で事業デューデリ①~㉖について触れました。
①から順に作っていけば良いというわけではなく、作成手順にはコツがあります。
私がいつもやっている方法を紹介します。
事業デューデリは、⑫の業務の流れ分析や、㉑競合分析や、㉒SWOT分析から、㉕経営課題と改善の方向性、㉖窮境要因と除去可能性へと、続く部分がとても大切です。
事業デューデリの肝(キモ)と言えるでしょう。
しかし、最初にそこに着手してしまうと、正確性の低いふんわりとした事業デューデリになってしまいます。
そして、分析と数値がアンマッチになった残念な事業デューデリが出来上がります。
まず実施すべきは、数値分析です。
数値分析と言えば、財務デューデリのイメージですが、事業デューデリでも数値分析が大切です。
上記でいえば、
③~⑦の決算分析
⑦~⑩の各収支分析
⑬金融機関借入金の内訳
⑭リース資産の内訳
⑮資金繰り分析
⑯人件費内訳
などをまず調査します。
業務の流れやSWOT分析は、社長など経営者とディスカッションしながら、作成していきます。その時、実績数値と社長の感覚がズレていることがあります。
例えば
✔ Aの取引先が黒字だと思っていたが、数値を拾ってみると赤字取引だった
✔ 従業員Bの業績貢献度が高いと考えていたが、支払人件費と売り上げを比較すると貢献度が低かった
✔ 与信審査が緩いリース取引がどんどん増加し、毎月多額のリース払いが発生し、資金繰りを圧迫していた
など、社長の感覚と実績数値のズレが、業績不振の原因であることも多いのです。
そのため、第三者視点が求められる事業デューデリは、まず数値を抑えたうえで、その後社長とSWOT分析や課題設定などのディスカッションします。
この流れで作業すれば、会社が抱えている真の課題に気づくことができます。
現状分析は通常、3か月~4か月かかります。その間、1~2週間に1度の経営者面談と、資料作成、現場確認などで、掛かりきりになります。
そのため同時期に並行してお手伝いできる案件は、2社が限度です。
その代わり、お手伝いする会社は、一心同体で寝ても覚めても集中します。
お分かりの通り、経営改善計画書作成支援は、片手間ではできません。
現状分析を飛ばして、計画数値策定に入るため、説得力がなくなるのです。
一体になってやっていると、「この人となら」と、経営者も本気になります。
次回は、後半部分、「数値計画と具体的行動策の作り方」についてお話しします。
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