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経営再建計画は「デューデリ」が8割|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|②

今回は、経営再建計画の構成について考えます。

 

はじめに:実現可能な経営再建計画書とは?

経営状況が悪化した際に、事業の立て直しに向けて作成される経営再建計画書(経営改善計画とも呼ばれます)。この計画書は、金融機関からの支援取り付けや、具体的な中小企業の再建スキームを描く上で極めて重要です。

しかし、単に将来の目標数値を並べただけでは、実効性のある計画とは言えません。金融機関など関係者の納得を得て、真に経営再建を成功に導く計画書には、しっかりとした「構成」と「根拠」が求められます。

この記事では、経営再建計画書を作成する上で最も重要な要素の一つである**「デューデリジェンス(DD)」**に焦点を当て、その内容と重要性、そして計画書全体の構成について、経営再建に関わる経営者、従業員、金融関係者など幅広い層の方に分かりやすく解説します。経営再建計画書の書き方の基礎として、ぜひ参考にしてください。

経営再建計画書の基本構成:「デューデリ」が土台

一般的に、経営再建計画書と聞くと、「どのような改善策(アクションプラン)を実行するか」「いつまでに何をするか(タイムスケジュール)」「それによって将来の数値目標(損益、キャッシュフロー、貸借対照表など)がどう改善するか」といった未来に向けた計画をイメージされる方が多いでしょう。

計画書は「現状分析」と「未来計画」の2部構成

もちろん、アクションプランや数値計画は経営再建計画書の重要な要素です。しかし、これらは計画書全体の後半部分にあたります。その土台となるのが、前半部分にあたる**「デューデリジェンス(DD)」、すなわち徹底的な現状分析**なのです。

つまり、実効性のある経営再建計画書は、大きく以下の2部で構成されていると言えます。

1. デューデリジェンス(DD):現状分析
2. アクションプランと数値計画:未来計画

なぜ「デューデリジェンス(DD)」が不可欠なのか?

金融機関などに経営再建計画書を提出しても、「根拠が乏しい」「実現性が低い」といった低い評価を受けてしまうケースがあります。その主な原因は、デューデリジェンス(DD)が不十分であることにあります。

DDによる客観的な現状分析がないまま、いきなりアクションプランや数値計画だけを提示されても、読み手はその計画の妥当性を判断できません。「なぜこのアクションプランが必要なのか」「この数値目標は本当に達成可能なのか」という疑問が残るためです。

時間や費用がかかるとしても、本気で経営再建に取り組むのであれば、DDは不可欠なプロセスです。DD抜きの計画書は、単なる希望的観測を数字で並べた「机上の空論」になりかねません。

 

デューデリジェンス(DD)とは?:現状を徹底分析する

DDは、企業の現状を客観的かつ詳細に調査・分析するプロセスです。主に「事業DD」と「財務DD」の2つの側面から行われます。

事業デューデリジェンス:事業の強み・弱みを把握する

事業DDでは、会社の事業活動そのものを深く掘り下げます。

・主要な事業内容と収益構造
・市場での競争力、競合との比較
・販売戦略、顧客との関係性
・組織体制、従業員の状況
・技術力、ノウハウ
・将来の成長可能性やリスク要因

具体的には、過去の数値実績分析、内部環境分析(自社の強み・弱み)、外部環境分析(市場機会・脅威)、そしてそれらを統合するSWOT分析などを通じて、経営上の本質的な課題を抽出します。

そして、事業DDの結論として、**「なぜ経営状況が悪化したのか(窮境原因)」と「その原因は取り除けるのか(窮境原因の除去可能性)」**を明確にすることが重要です。これが、後半のアクションプラン策定の方向性を決定づけます。

(参考:会社を再建する!経営改善計画書の作り方③~現状分析の重要性~

財務デューデリジェンス:会社の真の財政状態を明らかにする(実態バランスシート)

財務DDは、会社の財務諸表(特に貸借対照表)の正確性を検証し、隠れたリスクや課題を洗い出すプロセスです。

特に中小企業の経営再建においては、決算書上の数値と実態が乖離しているケースが少なくありません。そこで重要になるのが**「実態バランスシート(実態貸借対照表)」**の作成です。

実態バランスシートとは、決算書の貸借対照表に記載されている資産・負債の項目を一つひとつ精査し、含み損益や回収可能性などを反映させて、**「現時点での会社の本当の財産状況」**を把握するための帳票です。

具体的には、以下のような点をチェックします。

・売掛金:回収不能なものはないか?
・棚卸資産(在庫):不良在庫や評価損はないか?
・貸付金・未収入金:回収の見込みはあるか?
・固定資産:減価償却は適切か?含み損はないか?
・借入金:帳簿外の債務はないか?
・その他:簿外の偶発債務(訴訟リスク、保証など)はないか?

この実態バランスシートで把握された「実態純資産」や修正後の数値を基礎として、将来の数値計画(特に貸借対照表計画)を作成していきます。これにより、計画の信頼性が格段に向上します。

(参考:実態バランスシートの作り方【前編】 / 実態バランスシートの作り方【後編】

質の高いデューデリジェンス(DD)を実施するために

DDは経営再建計画書の根幹ですが、その実施には手間も時間もコストもかかります。専門家から多くの資料提出を求められ、経営者にとっては負担に感じることもあるでしょう。

専門家との連携と会社の協力体制

質の高いDDを実現するには、専門家(後述)の力量はもちろん、会社側の深い理解と協力が不可欠です。

専門家は、なぜその資料が必要なのか、その分析から何が分かるのかを丁寧に説明し、会社側の疑問や不安に寄り添う必要があります。また、分析結果を適宜フィードバックし、DDプロセスを通じて会社側にも新たな「気付き」が生まれるよう働きかけることが重要です。

こうした丁寧なコミュニケーションを通じて信頼関係を構築することが、より深く、密度の濃いDDを可能にします。メインバンクや公的支援機関とも連携し、三位一体で進めることが理想的です。

DDがもたらす「新たな視点」の価値

長年経営に携わってきた経営者や、取引の長い金融機関担当者であっても、自社の状況を完全に客観視できているとは限りません。

専門家によるDDの真価は、こうした内部の人間や関係者だけでは気付けなかった「新たな視点」を提供することにあります。

・経営者が気付いていない自社の弱みや潜在的な強み
・金融機関が見落としていたリスクや事業の可能性

専門家からの「問いかけ」や分析結果によって、経営者自身が新たな課題や解決策に気付く瞬間があります。この「気付き」こそが、経営再建に向けた具体的な行動変容を促す原動力となるのです。

経営再建計画書作成におけるDDの位置づけ:「DDが8割」の意味

これまで述べてきたように、DDは経営再建計画書の土台となる極めて重要なプロセスです。

DDがアクションプランと数値計画の質を決める

「経営再建計画はDDが8割」と言われることがあります。これは、決して後半のアクションプランや数値計画を軽視するという意味ではありません。

的確なDDによって現状と課題が正しく把握されていれば、その後のアクションプランはおのずと具体的で実効性の高いものになり、数値計画にも現実味と説得力が生まれる、という主旨です。方向性の定まっていないDDからは、実現性の低い計画しか生まれません。

金融機関が納得する計画書のために

金融機関は、最終的に「融資した資金が計画通りに返済されるか」という観点から、アクションプランとその結果としての数値計画を重視します。

しかし、その数値計画が信頼に足るものかどうかを判断する上で、根拠となるDDがしっかり行われているかを厳しく見ています。質の高いDDは、金融機関が安心して経営再建を支援するための前提条件となるのです。

(参考:会社を再建する!経営改善計画書の作り方④~数値計画と具体的実施策~

まとめ:的確な現状分析から始める経営再建

経営再建計画書は、単なる書類作成ではなく、会社の未来を左右する重要な取り組みです。そして、その成功の鍵を握るのが、全ての土台となるデューデリジェンス(DD)、すなわち的確な現状分析です。

「DDが8割」という言葉が示すように、質の高いDDがあってこそ、実現可能で説得力のあるアクションプランと数値計画を描くことができます。

自社の状況を客観的に見つめ直し、必要であれば公的支援制度や専門家の力も借りながら、まずは徹底的な現状分析から経営再建への一歩を踏み出しましょう。

この記事が、経営再建計画書の作成に取り組む皆様の一助となれば幸いです。

(関連情報)
次回以降、事業デューデリジェンスの具体的な手法(内部環境分析など)や、アクションプラン・数値計画の作り方について、さらに詳しく解説していく予定です。

 

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