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経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|②経営再建計画は「デューデリ」が8割

今回は、経営再建計画の構成について考えます。

前回「経営再建計画が必要な状態とは?」こちら

 

経営再建計画は2部構成

経営再建計画と言えば、今後どう改善行動を取るかの「アクションプラン」、アクションプランにどのタイミングで取り組むかの「タイムスケジュール」、アクションプランを実施することで達成される「将来数値計画」のイメージが強いと思います。

しかしこれら「アクションプランと数値計画」は、2部構成の後半部分です。

前半部分に現状分析である「デューデリジェンス」(以下「デューデリ」と略す)が存在します。

経営再建計画は、「デューデリ」「アクションプランと数値計画」の2部構成となっているのです。

 

経営再建計画の評価が低いのは「デューデリ」をしていないから

405事業を使って、経営再建計画を提出しても、金融機関から再建計画の評価が低い場合があります。

理由は、「デューデリ」ができていないからです。

後半部分の「アクションプランと数値計画」をいきなり提出しても、金融機関は数値の根拠が弱いと感じます。

私は405事業を使う経営再建計画では9社お手伝いしましたが、すべて「デューデリ」を入れています。

時間と費用はかかりますが、本気で経営再建に取り組むなら、「デューデリ」は必要です。

「デューデリ」なしの経営再建計画は、数字を並べているだけの「机上の理論」になる可能性が高くなります。

「デューデリ」には、事業デューデリと財務デューデリがあります。

 

事業デューデリ

事業デューデリとは、会社の事業を詳細に調査し、理解するプロセスです。主要な事業活動、市場競争力、戦略、顧客との関係、将来の成長見通しなど、多岐にわたって分析・調査を行います。

事業面での現状分析です。

経営再建現場の実務では、過去数値実績分析、内部環境分析、外部環境分析、SWOT分析をして、経営課題を抽出します。

経営課題の改善の方向性を提示して、次のステップの「アクションプランと数値計画」につなげていきます。

そして、事業デューデリの最後には、結論として「窮境(きゅうきょう)原因」「窮境原因の除去可能性」を記載します。

以下の記事が事業デューデリについて詳しいので、参考にしてください。

【参考記事】会社を再建する!経営改善計画書の作り方③~現状分析の重要性~

 

実態バランスシート

私は中小企業診断士なので、事業デューデリに比重を置いて現状分析を行います。

しかし、財務デューデリをノーマークにはしません。
※財務デューデリとは、「会社の財務諸表の正確性」に主眼を置いて分析するプロセスです。

実態バランスシート(実態貸借対照表)を必ず作成し、財務デューデリの代用とします。

実態バランスシートとは、貸借対照表の含み益や含み損を調査して、現時点での会社の正しい資産価値を把握する帳票です。

売掛金や在庫に不良化しているものはないか、資産勘定に回収不能な貸付金や未収入金が計上されていないか、現預金や借入金の金額は正しいか、減価償却費の不足はないか、などを調査します。

実態バランスシートによる補正を受けて、その数値をベースに、経営再建計画の貸借対照表将来数値を作成していきます。

以下の記事に、実態バランスシートの作成手順を説明しています。参考にしてください。

 

【参考記事】実態バランスシートの作り方【前編】~資産の部の補正方法と不良資産の見分け方~

【参考記事】実態バランスシートの作り方【後編】~負債の部、純資産の部はこう作る~

 

的確な「デューデリ」を行うために

お話ししてきたように、会社の再建の助けになる的を得た経営再建計画書を作成するためには、「デューデリ」は欠かせません。

しかし、一方で支援を受ける会社にとって、「デューデリ」は時間も手間もコストもかかることです。専門家から会社へ資料提供の依頼も多くなります。

「そこまでしないといけないのか?」
「そんな細かな資料まで必要なの?」

会社側からは疑問が出てきます。

そこは、専門家の熱意と力量が問われるところです。

メインバンクや行政支援機関と協力体制をとりながら、資料の提供について、会社の理解を深めていきます。

なぜその資料が必要なのか、この資料でどんな分析が可能となるのかを、丁寧に説明します。

提出を受けた資料について、次回訪問までに専門家なりの見解を提供するなど、フィードバックをしていきます。

「デューデリ」により、会社側にも「今後の事業展開にプラスになる気付きがあること」を理解してもらいます。

面談を積み重ねていく中で、会社との信頼関係を構築していきます。

より深く密度の濃い「デューデリ」が可能となるのです。

 

「デューデリ」で視点を提供する

経営者だから、長年付き合いのある金融機関だから、会社のことは理解できているだろう、、、。

それは事実です。

しかし、専門家として経営再建支援に入るのなら、経営者や金融機関が気付いていない視点の提供が必要です。

もちろん会社にとって役立つ視点であることが大切です。

✔ 経営者が気付いていない視点

✔ 金融機関が気付いていない視点

私は、経営者と面談を重ねる中で、経営者が新たな視点に気付く瞬間に立ち会います。

気付きは、「問いかけ」により得られます。

また、金融機関が気付いていなかった視点をデューデリで提供します。

その新たな視点こそが、デューデリを実施したことの意味になります。

 

的確な「デューデリ」が出来れば、良い再建計画ができる

良い再建計画とは、

✔ 会社が未来に希望を描けて、再建に取り組む気持ちが高まる

✔ 融資先の金融機関が納得して経営再建をバックアップできる

計画です。

お話ししてきたように良い再建計画を作るためには、的確な「デューデリ」が必要です。

少し大げさに言いますと、【経営再建計画は「デューデリ」が8割】です。

決して「アクションプランと数値計画」を軽視しているのではありません。「デューデリ」での方向付け次第で「アクションプランと数値計画」の実現性が大きく変わってくる、という主旨です。

「デューデリ」が的確であれば、その後に作る「アクションプランと数値計画」は、実現性の高いものになります。

金融機関は、「アクションプランと数値計画」を重視します。

「アクションプランと数値計画」に、金融機関の一番の関心ごとである、「貸したお金はいつどれぐらい返ってくるのか」が記載されているからです。

しかし的確な「アクションプランと数値計画」を導くためには、その前段階の「デューデリ」こそが重要なのです。

お話ししてきたように、経営再建計画は、「デューデリ」と「アクションプランと数値計画」があり、それぞれの役割があります。

「アクションプランと数値計画」については、以下の記事が詳しいです。参考にしてください。

 

【参考記事】会社を再建する!経営改善計画書の作り方④~数値計画と具体的実施策~

 

以上、「経営再建計画の構成」について、お話しました。

今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。

 

次回は、事業デューデリについてもう少し詳しく、「経営再建計画|事業デューデリ:内部環境分析」について、お話しします。

 

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ご覧いただきありがとうございました。

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