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【銀行 重点支援先】選定基準と金融支援|経営不振から脱却する道筋(2025年版)

「会社の業績が悪化している…銀行は今後も支援してくれるだろうか?」

「銀行が『重点支援先』として選ぶ会社の基準は何?」

「経営不振から脱却するために、銀行からどのような金融支援が期待できる?」

コロナ禍という未曽有の事態を経て、中小企業を取り巻く経営環境、そして銀行の融資方針は、新たな局面を迎えています。緊急支援的な色彩が強かった「ゼロゼロ融資」などが終了し、銀行は今、よりシビアな目で融資先の「選別」を始めていると言わざるを得ません。

つまり、同じ経営不振先企業であっても、銀行が経営資源を投入して積極的に再生を後押しする「重点支援先」と、残念ながら距離を置かれてしまう企業とに、対応が分かれてきているのです。

この記事では、ここ愛媛県をはじめ多くの中小企業をご支援してきたコンサルタントとして、銀行がなぜ支援先を選別するのか、どのような基準で重点支援先を選定するのか、具体的にどのような金融支援が行われるのか、そこでのプロパー融資保証協会付融資保全(担保)の位置づけ、そして経営再建計画中小企業活性化協議会の役割、さらに事業再生に力を入れる商工中金の動向、経営者がこの厳しい環境を乗り越えるためにどう備えるべきかについて解説します。「金融包摂」の理念と現実についても触れます。

銀行重点支援先
(図表イメージ: 分岐点で会社を選別する銀行)

なぜ銀行は「選別」を始めたのか?コロナ禍後の変化

コロナ禍において、多くの銀行は国の政策とも連携し、ゼロゼロ融資などを通じて中小企業の資金繰りを支えるという、重要な社会的役割を果たしました。

緊急支援フェーズの終了

しかし、経済活動が正常化に向かう中で、銀行は「緊急支援の役割は果たした」と考え、通常の融資判断基準、すなわちリスク管理と融資回収を重視する姿勢に戻っています。いつまでも赤字企業の資金繰りを支え続けることは、銀行自身の経営にとっても大きな負担となるからです。

自助努力の重視

これからの銀行は、単に資金を提供するだけでなく、融資先企業が**自らの力で経営を改善し、収益力を回復させていく「自助努力」**の姿勢とその実現可能性を、より厳しく評価するようになっています。その結果が「選別」という形で現れているのです。

銀行が「重点支援先」として選定する企業の5つの基準

では、銀行はどのような会社を「重点支援先」として、積極的な金融支援の対象とするのでしょうか? 主な基準は以下の5つです。

1. 事業の再建可能性【最重要】: たとえ現状が厳しくても、本業に強みがあり、市場ニーズが見込め、具体的な改善策を実行すれば将来的に黒字化・自走化できると判断されること。これが大前提です。

2. 経営者の改善意欲と計画の質【重要】: 経営者自身が強い覚悟とリーダーシップを持ち、**実現可能性の高い具体的な経営再建計画(経営改善計画)の策定に真剣に取り組み、その実行をコミットすること。405事業などを活用した計画策定も評価されます。

3. 銀行側のリスク・エクスポージャー: 銀行自身の損失回避の観点も影響します。保証協会の保証が付かないプロパー 融資の残高が大きい場合や、保全(担保評価額)が融資残高を大きく下回っている場合、銀行は自らの損失を最小化するために再生支援に力を入れる動機が強まります。※「エクスポージャー」とは信用リスクなど、損失につながる可能性のあるリスクにどれだけさらされているかを表す指標

4. メインバンクとしての関係性・責任: メインバンクは、通常、その企業の再生支援において主導的な役割を果たすことが期待されます。長年の取引関係や融資シェアの高さも考慮されます。

5. 地域経済への影響: 雇用規模が大きい、地域を代表する産業であるなど、その企業の存続が地域社会に与える影響が大きい場合、銀行も社会的責任の観点から支援を重視する傾向があります。

重点支援先に提供される主な金融支援

重点支援先と判断された企業に対しては、銀行は様々な金融支援メニューを組み合わせて、経営改善を後押しします。

・返済条件の変更(リスケジュール): 元金返済の一時的な猶予や減額により、資金繰りを安定させ、経営改善に取り組む時間を確保します。

・追加融資(運転資金・改善資金): 策定された経営再建計画の実行に必要な運転資金や、収益力向上に繋がる設備投資資金などを、プロパー融資や保証協会付融資(例:経営改善サポート保証など)で供給します。

・経営改善計画策定支援: 銀行自身がアドバイスを行うほか、405事業の活用を推奨し、外部専門家(認定支援機関)による質の高い経営再建計画策定をサポートします。

外部機関との連携:協議会・保証協会の役割

重点支援先への金融支援においては、銀行単独ではなく、公的な支援機関と連携することも多くあります。

中小企業活性化協議会

・比較的深刻な経営不振に陥っている企業や、複数の金融機関との調整が必要な場合に、中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)が中立的な立場で介入し、専門家派遣による経営再建計画の策定支援や、金融機関との合意形成(バンクミーティング等)をサポートします。
[関連記事:中小企業活性化協議会とは]

信用保証協会

・リスケジュールの円滑化や、経営改善に必要な追加融資の実行を後押しするために、信用保証協会が提供する各種保証制度(例:経営改善サポート保証(経営改善計画実行支援関連保証))が活用されることがあります。

事業再生に積極的な金融機関は?

全ての銀行が、事業再生支援に同じ熱量で取り組んでいるわけではありません。

銀行ごとの温度差

銀行の方針や、支店長・担当者の経験・意欲によって、対応には差があります。手間のかかる再生支援よりも、短期的な収益に繋がりやすい業務を優先する銀行や担当者も存在します。

特に注目すべき商工中金の事業再生支援への注力

民間銀行の対応に温度差がある中で、特に近年、事業再生・経営改善支援に明確に力を入れているのが政府系金融機関の一つである商工中金です。過去の経営改革を経て、「事業再生・経営改善支援」を現在の重要な戦略の柱と位置づけ、専門部署の設置や独自の金融支援メニュー(資本性劣後ローンなど)の提供を通じて、積極的に中小企業の再生に取り組む姿勢を示しています。

もちろん、商工中金も全ての企業を無条件に支援するわけではなく、事業の将来性や経営改善計画の質は厳しく問われます。また、多くの場合、メインバンクである民間銀行との連携・協調が前提となります。

しかし、もし貴社が抜本的な経営改善や事業再生を必要としている状況であれば、メインバンクへの相談と並行して、早い段階で商工中金にも相談してみることは、有効な選択肢の一つと言えるでしょう。再生支援への注力は現在の重要な方針であり、早期に相談することで、利用可能な支援策や具体的な道筋について、専門的な知見を得られる可能性があります。**行動を起こすタイミング(時期)**を逃さないことが重要です。

銀行が見捨てる(支援を縮小する)会社の特徴

残念ながら、全ての経営不振先企業が重点支援先となれるわけではありません。銀行が支援に消極的になり、距離を置かざるを得ないと判断する会社には、以下のような特徴があります。

1. 再建可能性が乏しい: 客観的に見て事業の立て直しが困難。
2. 経営改善への取り組み不足: 経営者に改善意欲が見られない、計画が実行されない。
3. 信頼関係を破壊する行為: 粉飾決算の発覚、資金使途違反、税金等の常習的な滞納など。

[関連記事:【粉飾決算とは】銀行はこう見抜く!融資への影響と絶対に避けるべき理由(2025年版)]
[関連記事:資金使途違反 バレるとどうなる?銀行態度と罰則](※内部リンク設置提案)

経営者が取るべき行動:重点支援先を目指すために

では、経営者はどのように行動すれば、銀行から「重点支援先」として認識され、必要な金融支援を得られる可能性を高めることができるのでしょうか。

1. 早期の経営課題認識と「自助努力」: 赤字転落や資金繰り悪化の兆候を見逃さず、銀行から指摘される前に、自ら原因を分析し、自助努力による改善に着手する姿勢が重要です。

2. 財務の透明化と銀行との対話: 正確な月次決算や資金繰り管理を行い、会社の状況を銀行に対して正直かつタイムリーに報告・相談する。透明性の高いコミュニケーションが信頼の基礎となります。

3. 実現可能な経営改善計画の準備: 必要と判断されれば、専門家の支援も得て、具体的で実現可能性の高い経営再建計画(経営改善計画)を早期に準備・提示する。405事業の活用も検討しましょう。

[関連記事:【405事業 徹底活用ガイド】流れ・メリット・注意点と成功の鍵(2025年版)]

4. 頼れる銀行・専門家との連携: 日頃から親身になってくれる銀行担当者との関係を深め、客観的なアドバイスをくれる専門家(コンサルタント、税理士など)との連携を保つことも有効です。

金融包摂と選別のジレンマについて

最後に、「金融包摂」という観点について触れておきます。金融包摂は、全ての企業が必要な金融サービスを受けられることを目指す重要な理念です。しかし、銀行にはリスク管理と自身の経営健全性を維持する責任もあります。現在の「選別」は、この金融包摂の理念とリスク管理の現実との間で、銀行が事業性(再生可能性と経営者の意思)をより重視するようになった結果**とも言えます。重要なのは、その判断が客観性と対話に基づいて行われることです。

まとめ:自助努力と計画性が、銀行の支援を引き出す鍵

ポストコロナ時代の銀行の融資方針は、より「選別的」になっています。「重点支援先」として銀行からの積極的な金融支援を引き出すためには、事業の再建可能性を示すこと、そして何よりも経営者自身の強い改善意欲と、それを裏付ける具体的な経営改善計画が不可欠です。

銀行自身のプロパー 融資比率や保全状況も判断材料にはなりますが、基本は事業そのものと経営者の姿勢です。中小企業活性化協議会保証協会、405事業、そして再生支援に力を入れる商工中金といった外部リソースも活用しながら、自助努力を尽くすことが、銀行との信頼関係を再構築し、経営不振から脱却するための王道と言えるでしょう。

「自社が銀行からどう見られているか不安だ」「今後の融資方針や経営改善について相談したい」「経営再建計画の策定を支援してほしい」経営者様は、ぜひ当事務所の初回無料相談をご利用ください。貴社の状況を客観的に診断し、取るべき対策をご提案します。

この記事が、厳しい経営環境にある中小企業の皆様にとって、銀行との向き合い方、そして事業再生への道筋を考える一助となれば幸いです。

 

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