自社の経営状態を理解するには、年に1回決算報告書を確認するだけでは不十分です。
試算表を定期的に確認することが大切です。
そこで今日は、社長が「試算表を確認するときのポイント」をお話します。
【目次】
社長が試算表を確認するのは1か月以内が理想です。
税理士事務所との事務のやり取りがあるとしても、遅くとも40日以内には確認が必要です。
例えば2月末数値であれば、1か月以内なら3月末までに確認ができる状態。
40日なら4月10日までの確認です。
それより遅くなるのなら、貴社の事務フローには改善点があります。
今は会計ソフトを使えば、月末締めて10日以内には試算表が確認できる時代です。
試算表の出来上がりが遅い会社は、数値を根拠にした素早い経営の意思決定ができません。
まず社長が試算表で確認するのはPL(損益計算書)です。
売上高、粗利、営業利益、経常利益と見ていきます。
売上はまずまずだな、利益も出ているな、、、。
売上が気になりますが、大切なのは利益です。
1カ月の実績を確認した後は、年間の累計数値を確認します。
年間の累計数値を確認してから、1カ月を確認するかもしれません。
順番はどちらでも良いですが、1か月分と当期の累計と両方を確認しましょう。
次にBS(貸借対照表)を見ます。
あなたは今、試算表確認はPLのみで、BSを確認しないかもしれません。
BSも確認したほうが良いです。
ポイントは現預金の増減を見ることです。
現預金が、増えているか、減っているか。
✔ PLで利益が出て、現預金も順調に増えている →通常の状態
✔ PLで利益が出ているのに、現預金が減っている →何が原因か?
✔ PLで利益が出ていないのに、現預金が増えている →何が原因か?
利益が出ているのに現預金が減っているのは、売掛が増えた、在庫が増えた、利益より融資返済額が大きい、お金が社外にでた(投資や貸付など)、現金で設備投資した、などの理由が考えられます。
利益が出ていないのに現預金が増えたのは、売掛回収が進んだ、在庫セールをした、新規融資を受けた、株・不動産・車両など資産を売った、などの理由が考えられます。
状態を把握して素早く対策を打ちます。
【参考記事】現預金変動の謎を解く|決算書で見る資金流動
また、試算表の現預金残高と預金通帳の残高が合っているか確認します。
残高が大きく違っていると、試算表数値のどこかが間違っています。
前年数値との比較も大切です。
前年比売上はどうなっているか、前年比仕入コストはどうなっているか、前年比利益はどうなっているか、前年比現預金はどうなってるか、前年比融資残高はどうなっているか、前年比人件費負担はどうなっているか、、、。
前年と比較することで、会社の現在地が見えてきます。
上記お話ししてきた確認方法は、作成される試算表が実態を正しく反映していることが前提条件になります。
以下の様な場合は注意が必要です。
✔ 建設業やプロジェクト型事業で完成基準を採用している
→ 月払いの経費ばかりが先行して計上され試算表では赤字。案件が完成しないと売上計上できず試算表では実態が分からない。
✔ 在庫棚卸が決算期のみで、決算に棚卸しないと売上原価が確定しない
→ 在庫の金額により売上原価、粗利が期末にブレる。決算書で思わぬ黒字や赤字が発生する。試算表段階では把握できない。
✔ 領収書提出漏れが多い
→ 経理に領収書提出が遅く、経費実態が試算表で把握できない。領収書不明分は、決算期に使途不明金(役員貸付金、短期貸付金、長期貸付金)として処理される。
上記に該当する場合は、試算表段階で正しく実態を把握できるための改善策が必要です。
自分の感覚と試算表で出てきた数値が違っていることがあります。
その時は違和感の原因を確認することが大切です。
✔ 値上げ効果が浸透して売上や利益が上向いているのかもしれません
✔ 仕入価格の上昇が予想以上に利益を圧迫しているのかもしれません
✔ 賃上げに見合った売上増ができていないため、利益が下がっているのかもしれません
自分で納得するまで確認してみます。
このように試算表数値確認の習慣をつけることで、数字に少しづつ強くなっていきます。
社長がフィードバックする相手を持つことは良いことです。
数字に強く、自社のことをよく知っている人が好ましいです。
信頼できる関係なら、顧問税理士などが良いかもしれません。
私も定期的に試算表を見ている会社が複数あります。
私は税理士ではなく中小企業診断士なので、まずは事業計画を作って、その伴走支援(モニタリング)として、計画通り進んでいるか、試算表の数値で確認しています。
試算表数値について、社長に質問したり、意見交換したりしています。
社長が、壁打ちの相手に試算表について自分の感想を述べることで、その後の行動につながります。
(社長)利益が少ないので、価格交渉が必要かもしれませんね。
(壁打ち相手)その時期かもしれませんね。
(社長)A社と価格交渉してみますね。
(社長)売掛が増えているので、売上だけでなく資金回収も加味した人事評価が必要かもしれません。
(壁打ち相手)まずは人事の評価基準が必要かもしれませんね。
(社長)自分が社員の何を評価したいのか、少し考えてみます。
このように 、壁打ち相手との意見交換が行動変容につながることがあります。
以上、「社長が試算表を見るときのポイント」について、お話しました。
今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。
【参考記事】
銀行が試算表で見ているポイントとは?融資審査に通るためにすべきこと
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