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銀行が試算表で見ているポイントとは?融資審査に通るためにすべきこと

【この記事で分かること】

 

・ 決算書を毎年出しているのに、銀行が試算表提出を求める理由

 

・ 銀行が試算表でチェックしているポイント

 

 銀行が嫌がる融資審査しづらい試算表

 

・ 試算表を、なかなか作成できない会社の隠された問題点

 

 

この記事のポイントは以下の4点です。

 

✔ 銀行が試算表で見ているのは、売上、利益、借入金推移、勘定科目の増減。前年決算との大きな変動がないか、確認している。追加融資の稟議を本店審査部に回したとき、色々聞かれるので、最新数値の推移をチェックしている

 

✔ 銀行が嫌がるのは、数値が実態とかけ離れたり、分類方法を途中で変えたり、審査しづらい試算表。銀行が分からない試算表は、あなたにとっても経営判断しづらい試算表であり、改善が必要である

 

✔ あなたの会社が、銀行から試算表提出を求められてすぐに提出できないとき、事務フロー(経理処理)の中に問題点が隠れている可能性が高い

 

✔ 試算表数値と決算書数値がブレる(差額発生)のは、決算仕訳の減価償却、在庫棚卸、固定資産除却損、法人税などが原因であることが多い

 

 

では、詳しく見ていきましょう。

 

銀行に追加融資を申し込むと、試算表を要求されます。

試算表、資金繰り表、受注予定明細が追加融資の3点セットです。

毎月きちんと試算表が出来上がる体制の会社は問題ないですが、体制ができていない会社は面倒に感じます。

そもそも中小企業の経営者で、試算表を経営の意思決定に使う方は、どの程度存在しているのでしょう?

試算表よりは、内部の業績管理資料や自分の感覚の方が、頼りになると感じるかもしれません。

しかし銀行員は試算表、試算表と、言ってきます。どこをチェックしているのでしょう?

今日はそんな試算表について、考えてみます。

 

試算表とは中間時点の数値を集計した帳票

試算表とは、1年に一度の決算書ができあがる過程において、中間時点の数値を集計したものです。

決算書は、決算期に一気に出来上がるものではありません。毎月の試算表の数値の積み上げで完成します。

試算表は、毎月月末時点で、貸借対照表、損益計算書、販売費および一般管理費などが作成されています。

毎月の試算表を作成し、12か月後のものが、決算書として税務署や銀行に提出されます。

 

銀行が試算表を求めてくるのは融資審査の判断資料だから

決算書を毎年提出しているのに。

追加融資の申し込みで試算表提出を求められた。

そこまで提出する必要があるのか?

銀行は追加融資審査のとき、既に提出した決算書と今回提出する試算表を見比べています。

試算表は、より最近の融資先企業の実態を把握するために、銀行にとって大切なデータなのです。

決算から6か月が経過している場合、6か月間の試算表の提出を受け、今期の見通し数値を、×2倍で算出します。

例えば、6か月の売上が6,000万円、利益が300万円なら、

今期の着地は、売上1億2,000万円(6,000万円×2)、利益600万円(300万円×2)と推測します。

この数値を追加融資審査の参考にするのです。

そのため、銀行にとって試算表は追加融資審査のため、必ず必要な書類となります。

会社側が作成していなければ、「作成して提出してください。審査は提出後になります」と言われます。

 

追加融資申込みのときに提出を要請される

お話ししたように、最も多いのが、追加融資の申し込みをした際です。

その他、事業再建のために経営改善計画を提出している場合は、中間管理資料として提出を求められます。

売上、利益などが計画通り進んでいるか、確認するためです。

同じようにリスケジュールを申請し、利払いのみ実施している場合も提出を求められます。

融資先が業績不振の場合、業況が急に悪化し、その結果融資が焦げ付くことを、警戒しているのです。

 

銀行が試算表で見ているのは前期決算からの変動

銀行が試算表で見ているのは、主に以下4点です。

 

1. 売上は大きく変動していないか

・前期と比較して売上は増加傾向か、減少傾向か

・増減しているのならその要因は何か

 

2. 利益は出ているか

・黒字か赤字か

・赤字ならどの時点で赤字が出ているか(粗利か、営業利益か、経常利益か)

・前期と比較して傾向はどうか

 

3. 借入金残高に変動はないか

・借入金は増えているか、減っているか

・増えているならどの銀行(または信用金庫)から借りたのか

 

4. その他勘定科目に大きな変動はないか

・貸借対照表「資産の部」の中で貸付金、立替金、出資金、営業権など、不透明な勘定科目が発生していないか

・貸借対照表「負債の部」の中で、未払金、未払費用、長期未払金など、負債項目のおおきな金額変動はないか

 

銀行は、融資先から前期の決算書提出を受けて、詳細な財務分析をしています。

ざっくり言うと、試算表を見ることで、「前期決算書の結果から大きな変動がないか」を確認しているのです。

売上なら、例えば決算後10か月経過で試算表数値が1億円あるとすると、「決算着地は1億2,000万円になるな」、など予測を立てています。

【考え方】 1億円÷10か月=1,000万円(月商) 1,000万円×12か月=1億2,000万円・・・着地予測

 

試算表を提出しないと融資審査が進まない

追加融資を申請しても、試算表が提出できなければ、融資審査は進みません。

銀行は融資審査に対して、稟議システムを採用しています。

融資担当者は、稟議書類を作り、あなたの会社に追加融資を実施しても良いかどうか、上司や関係部署に承諾を取っています。

融資稟議に試算表を添付して、「この会社は最新の状況でこうなっています」と報告する必要があるのです。

あなたの会社が、毎月試算表を作っていなければ、融資審査は進みませんから、慌てて試算表作成作業に入らなければなりません。

銀行の融資審査の進め方は、以下記事を参考にしてください。

 

【参考記事】銀行融資審査の仕組みについて ~融資の返事が来ないのはなぜか?~

 

銀行員を不安にさせる社長の言葉は、「任せているから分からない」

あなたの会社が毎月試算表を作成できないのなら、事務フローのどこかに問題があるのかもしれません。

経営者としてその原因を把握していますか?

銀行から理由を問われたとき、「経理に任せているから」「税理士事務所に任せているから」。

だから自分は把握していない、、、。

この返答ほど、銀行員を不安にさせる言葉はありません。

試算表もなかなか出てこない会社に、追加融資をして大丈夫だろうか?と銀行員は感じてしまいます。

 

【参考記事】銀行が嫌う決算書 ~追加融資が難しい低評価の決算書~

 

事務フローの隠された問題点を見つけ出す

経営者は試算表がなかなか出来上がらない、という問題点の原因を見つけ出し、改善する必要があります。

以下の様な問題が考えられます。

☑ 毎月、経理から税理士事務所に伝票が届けられる流れができていない

☑ 社内で営業担当から領収書がきちんとでてこない

☑ 経営者が経理に領収書を渡さない

☑ 販売先、仕入先など取引先と、請求、入金、支払のやり取りがスムーズにできていない

☑ 経理担当者が事務処理を溜め込んでいる、または何らかの理由で事務処理ができない

会社の事務処理フローの中に、トラブルや不正が紛れ込んでいる可能性だってあるのです。

だから、経営者は会社を守るため、問題点を見つけ出し、事務体制を正確に回していく責任があります。

 

【参考記事】銀行が嫌う税理士 ~銀行が嫌がる経理処理と経営者の心構え~

 

銀行員が嫌う追加融資が難しい試算表

銀行が嫌う試算表について、説明します。

 

① 事業期間中の売上や利益が分からない

お話ししたように、試算表は銀行にとり、追加融資判断のための審査資料です。

試算表から、決算途中時点での売上や利益が分からなければ、意味を持ちません。

建設業や製造業などプロジェクト受注型の業種で発生します。

売上を完成基準(プロジェクトが完成した時点で一括計上)で計上していた場合。

決算の途中時点では、売上は計上されず、人件費や間接費などの経費ばかりが先行します。

そのため、業況は順調でも、試算表は赤字の状態が発生します。

銀行は、出た数字のみを見て判断するので、「今期は赤字なのですね」と言われます。

経営者との「認識のかい離」が発生します。

以下の改善策で試算表で実態が確認できるようにします。

【改善策】

・売上や原価のプロジェクト完成基準計上を、プロジェクト進行基準(出来高による売上・原価の計上)計上に変更する

 

② 分類方法が変更した

顧問税理士や経理担当者が変わった際に、発生することが多いのは、分類方法の変更です。

特に、今まで詳細に分類していたものを、一括に取りまとめて集計するのは嫌がられます。

例えば、今まで部門別に売上や原価を計上していたのに、まとめて一括で売上や原価を計上するようになった、などです。

ちなみに、逆のケース(部門別の分類を開始した)は、銀行から喜ばれます。

税理士事務所によっては、「部門別に分けることをしない」ところもありますので、注意が必要です。

銀行から、「今まで通り部門別の試算表を出してもらえませんか?」と催促されます。

試算表は、過去の実績と比較する目的もあるので、連続性がなければ困るのです。

試算表の連続性欠如は、追加融資を難しくします。

【改善策】

・税理士事務所を変更する場合には、分類方法など、今までのやり方を説明し、対応可能かどうか事前確認したうえで変更する。

・経理担当者が変わるときは、部門別会計を引き継ぐ申し送りをする。

 

以上2例挙げましたが、分かりにくく審査しづらい試算表は、銀行から嫌がられます。

ただ、銀行から嫌がられるということは、「経営者自身にも理解しづらい試算表」と言えますので、改善が必要かもしれません。

 

決算のとき数値がブレるのはなぜか

試算表数値は決算処理によって、ブレることがあります。

試算表では11か月間黒字を確認していたのに、決算処理をすると赤字になった。

それは主に以下の要因があります。

① 在庫の棚卸処理
詳しく知りたい方は、この記事(和田経営相談事務所オフィシャルホームページ「なぜ在庫は、決算数値と実態が違うのか」)を読んでみてください。

② 減価償却費の決算一括計上

③ 固定資産除却損など特別損失の計上

④ 法人税の発生

⑤ 各種費用の計上漏れ(事務ミス)

 

月次仕訳は会計ソフトを使えば自社でできる

ほとんどの会社が試算表作成を税理士事務所に委託していると思います。

税理士事務所に試算表を作成してもらうと、銀行など対外的な信用につながるメリットはあります。

しかし一方で、デジタル化が進んでいる昨今、試算表作成は自社でもできるようになりました。

会計ソフトを使用するのです。

会計ソフトfree(フリー)や、やよい会計などクラウド上で、試算表を作成できるサービスがあります。

私は、「やよいの青色申告」を開業から使用しています。以下の様な流れで仕訳をします。

預金口座がインターネットバンキングに接続されていれば、会計ソフトとの連携で自動仕訳をしてくれます。

クレジットカードも使用明細を連携すれば、会計ソフトが自動仕訳してくれます。

現金払いの領収書やレシートは、スマホで写真を撮ると、会計ソフトにデータを送れます。

「試算表作成を自動化する仕組み」が整備されています。

このように自社で会計ソフトを活用して試算表を作成し、決算時だけ税理士事務所や会計事務所に決算処理を依頼する方法もあります(ちなみに私は、自分自身の確定申告について、仕訳から申告まで自分で対応しています)。

自社で行うことで、試算表作成のスピード化、社内に会計ノウハウの蓄積、会計コストの削減などのメリットが出てきます。

DX推進の時代ですから、検討してみても良いかもしれません。

以上、試算表について考えてみました。

以下、本日の記事のポイントをまとめましたので、参考にしてください。

 

 

あとがき

先日、スポット支援先企業と銀行との会合に、立ち会いました。

その場で試算表提出について、銀行と社長の間で激しいやり取りが繰り広げられていました。

銀行員の試算表にかける熱意に触れ、「やはりそうだろうな」、と感じました。

試算表作成は事務です。そのため営業畑の社長は、軽視しがちです。

ただ、この記事でお話ししたように、事務軽視は、大きな事業リスクにつながることがあります。

銀行員時代に「事務は経営の根幹である」と教わりました。

恥ずかしながら営業畑一筋だった私は当時、「大事なのは事務より営業だろ」と感じていましたが、現在は「事務の大切さ」が身に染みている毎日です。

 

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