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【銀行融資】なぜ試算表が必要?銀行提出時のチェックポイントと注意点(2025年版)

「銀行に追加融資を申し込んだら、試算表の提出を求められた。」

「毎年、決算書は提出しているのに、なぜわざわざ試算表まで必要なの?」

「銀行は試算表のどこを見ている? 融資審査に通りやすい試算表の作り方は?」

スムーズな融資実現のためには、銀行が試算表から何を読み取ろうとしているのか(試算表とは 銀行にとって何か)を理解し、適切な試算表を銀行提出用に準備することが重要です。

この記事では、中小企業支援の現場に立つ経営コンサルタントとして、銀行が試算表を求める理由、チェックしているポイント、注意すべき点、そして融資に繋がりやすい試算表作成の基本的な考え方(試算表 作り方 融資のヒント)について、詳しく解説します。

試算表のチェックポイントを示す吹き出しイメージ

試算表とは?銀行融資における役割

まず、試算表がどのようなもので、なぜ銀行融資審査において重要なのか、基本を確認しましょう。

試算表の基本:決算書への中間報告書

試算表(月次試算表など)は、年に一度作成される決算書(貸借対照表 B/S、損益計算書 P/L)に至るまでの、途中経過を示す中間的な財務諸表です。日々の取引を仕訳し、勘定科目ごとに集計した結果が試算表であり、その12ヶ月分の積み重ね(と決算整理)が決算書となります。

なぜ銀行は決算書だけでなく試算表を求めるのか?

銀行が試算表 銀行提出を求める最大の理由は、**「最新の経営状況を把握したい」**からです。決算書は年に一度しか作成されません。前回の決算から時間が経過している場合、その間の業績変動を把握するために、直近までの試算表が必要不可欠となるのです。

例えば、決算後6ヶ月経過時点の試算表があれば、銀行は以下のように簡易的に今期の業績を予測します。

・例:6ヶ月間の売上6,000万円 → 通期予測:1億2,000万円 (6,000万円 × 2)
・例:6ヶ月間の利益300万円 → 通期予測:600万円 (300万円 × 2)

この予測値や、前期決算からの変化を、融資可否や融資条件を判断するための重要な材料としています。

銀行が試算表でチェックする4つのポイント

銀行は提出された試算表のどこに注目しているのでしょうか? 主なチェックポイントは以下の4点です。

1. 売上高の推移と変動要因:
・前期の同期間と比較してどうか?(増減傾向)
・期初の計画通りに進捗しているか?
・大きな変動がある場合、その「理由」は何か?(一過性か、構造的なものか)

2. 利益の状況(黒字か赤字か、どの段階か):
・売上総利益(粗利)、営業利益、経常利益は確保できているか?
・赤字の場合、どの段階で赤字になっているか?
・前期と比較して利益率はどう変化しているか?

3. 借入金の変動と内訳:
・前回の決算時から銀行借入金残高は増えているか、減っているか?
・増えている場合、どの銀行から、どのような融資を受けたのか?(他行からの借入状況を把握)
・**(補足)**借入金に対する支払利息の状況も確認します。特に変動金利の借入が多い場合、市場金利(短期プライムレートやTIBORなど)の動向を踏まえ、今後の金利負担増リスクがないかも考慮されます。

4. その他勘定科目の異常な動き:

・貸借対照表(資産): 役員貸付金、仮払金、未収入金などが不自然に増えていないか?(資金使途の不透明さ、実質的な損失隠しの可能性)
・貸借対照表(負債): 未払金、未払費用、預り金などが急増していないか?(資金繰り悪化の兆候)
・在庫: 売上に対して在庫が過大になっていないか?(不良在庫化のリスク)

要するに、銀行は試算表を通じて、**「前回の決算時から、経営状況に大きな変化や懸念事項が発生していないか」**を重点的に確認しているのです。

銀行融資に通りにくい?銀行が嫌がる試算表とは

せっかく試算表を銀行提出しても、内容によっては融資審査が難航したり、マイナス評価に繋がったりすることがあります。銀行が嫌がる試算表の例を見てみましょう。

1. 実態が反映されていない(例:完成基準): 建設業や一部の製造業などで、売上を工事(プロジェクト)完成時に一括計上する「完成基準」を採用している場合、期中の試算表では売上が計上されず、経費だけが先行して大幅な赤字に見えてしまうことがあります。業績が順調でも、銀行は数字を見て「赤字ですね」と判断しかねません。

・改善策: 可能であれば、工事の進捗度に応じて売上・原価を計上する「進行基準」への変更を検討する。それが難しい場合は、進行中の工事一覧や受注残高などの補足資料を提出し、実態を説明する必要があります。

2. 前期比較が困難(例:分類方法の変更): 経理担当者や顧問税理士の変更などを機に、勘定科目の分類方法や部門別会計のやり方を変更してしまうと、前期比較ができなくなり、銀行は業績の推移を正確に把握できません。 特に、詳細な分類をやめて大雑把な集計に変更するのは、情報を隠していると疑われかねません。

・改善策: 会計処理方法を変更する場合は、継続性を意識する。担当者変更時には、従来の処理方法を正確に引き継ぐ。税理士を変更する際は、事前にこれまでの会計処理方法を説明し、対応可能か確認する。

これらの「分かりにくい試算表」は、銀行が審査しにくいだけでなく、経営者自身にとっても経営判断の材料として使いにくいものです。 改善を検討する価値は十分にあります。

試算表提出が遅れる…潜む問題点と「作り方」の基本

銀行から試算表 銀行提出を求められても、すぐに対応できない…。もし、あなたの会社がそうなら、社内の経理・事務フローに何らかの問題が潜んでいる可能性が高いです。

「経理・税理士に任せているから分からない」は危険信号

試算表の提出遅延理由を銀行に尋ねられた際、「担当者に任せているので詳しくは…」「税理士にお願いしているので…」といった回答は、経営者の管理能力に対する不安を銀行に抱かせます。「自社の数字を把握できていない会社に追加融資をして大丈夫だろうか?」と思われてしまうのです。

提出が遅れる背景にある問題点

試算表がタイムリーに出てこない場合、以下のような原因が考えられます。

・日々の記帳が遅れている、または正確でない。
・営業担当者などから領収書や請求書の提出が遅い、または漏れている。
・経営者自身が必要な書類を経理に渡していない。
・経理担当者のキャパシティオーバー、またはスキル不足。
・税理士事務所との連携がスムーズでない(資料のやり取りが滞るなど)。
・(最悪の場合) 不正な経理処理が行われている可能性。

経営者は、これらの原因を特定し、速やかに業務フローを改善する責任があります。これは、銀行対策だけでなく、会社を守るためにも不可欠です。

スムーズな試算表作成(作り方)の基本フロー

融資に繋がりやすい試算表の「作り方」の基本は、特別なテクニックではありません。正確な月次決算をタイムリーに行う体制を構築・維持することです。

1. 日々の記帳: 取引が発生したら、速やかかつ正確に仕訳を入力する。(会計ソフトの活用が一般的)
2. 月初の資料収集: 前月分の領収書、請求書、通帳コピーなどを漏れなく収集する。
3. 月次処理: 会計ソフトへの入力、売掛金・買掛金の残高確認、現預金残高の照合などを行う。
4. 月次試算表の作成: 月末締め後、できるだけ早いタイミング(例:翌月10営業日以内など)で試算表(B/S, P/L)を作成・確定させる。

この定型的な業務フローを確立し、毎月実行することが、タイムリーな試算表作成、ひいてはスムーズな銀行提出と融資審査に繋がります。

なぜ決算書と試算表の数値はズレるのか?

11ヶ月目までの試算表では黒字だったのに、最終的な決算書では赤字になったということが起こり得ます。これは、主に**決算時に特有の「決算整理仕訳」**が行われるためです。

・主な決算整理仕訳:
‣ 在庫の棚卸評価(期末在庫の確定)
‣ 減価償却費の計上(通常、年1回まとめて計上)
‣ 未払費用・前払費用・未収収益・前受収益などの計上
‣ 引当金(貸倒引当金、賞与引当金など)の設定
‣ 固定資産の除却損・売却損益の計上
‣ 法人税、住民税及び事業税の計上

これらの決算整理を経て、最終的な確定数値が決まるため、期中の試算表の累計値とは差異が生じることがあります。

まとめ:試算表は銀行との対話、そして自社経営の羅針盤

銀行が融資審査のために求める試算表。それは単なる手続き書類ではなく、企業の最新の健康状態を示す重要なコミュニケーションツールです。

・銀行は試算表から、直近の業績推移や財務状況の変化を読み取り、融資判断の材料としている(試算表とは 銀行にとっての価値)。

・タイムリーかつ正確な試算表提出は、良好な銀行関係の基礎であり、スムーズな融資獲得に繋がる(試算表 作り方 融資の基本)。

・提出が遅れたり、内容が不正確だったりすると、管理体制への懸念から融資審査に悪影響を及ぼす可能性がある。

・銀行がチェックするポイントを意識した試算表は、経営者自身の経営判断にも役立つ。

ぜひ、月次での試算表作成体制を整備し、自社の経営状況を的確に把握するとともに、銀行との円滑なコミュニケーションにお役立てください。

この記事が、貴社の銀行との良好な関係構築、そしてスムーズな融資実現の一助となれば幸いです。試算表の分析や作成体制の改善についてお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

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