アクションプランと数値計画の第11回目。
今日は、「アクションプランと数値計画:不良資産回収計画作成のポイント」の話をします。
不良資産とは、デューデリの実態バランスシートによりあぶり出された現時点で資産性が低く回収可能性が少ない資産のことです。
例えば、資産価値のない在庫、倒産した会社の売掛金、有価証券の含み損、資産性のない貸付金や仮払金などが該当します。
しかし、すべて回収不能かというと必ずしもそうではなく、再建計画によって計画的に回収できる不良資産もあります。
アクションプランを実施することで、数値計画の中で不良資産の残高がどう推移するのか。それを明確化するのが不良資産回収計画です。
デューデリジェンスにおいて、実態バランスシートが正しく作成できていないと、不良資産回収計画は作成できません。
参考までに「実態バランスシートの作成方法」の記事をリンクします。
私がいつも使っているフォーマットを使って作成手順を説明します(パソコンサイトの方は表の上をクリックで拡大します)。
【不良資産回収計画】
直近期には、実態バランスシートであぶりだされた補正額を転記します。
補正後の修正後残高ではなく、補正金額(マイナスカウントした金額)を記載することに注意してください。
帳簿上の純資産額をスタートに、各補正金額と合計します。上記例で言えば直近期の実質債務超過金額は▲5,000千円です。
表面上は資産超過(純資産額15,000千円)ですが、実は債務超過(▲5,000千円)であることが、実態バランスシートを作成することで判明しました。
そこからアクションプランに合わせて数値を入力していきます。
上記の例で言えば、売掛金・受取手形の貸倒分は損金処理し、短期貸付金は役員報酬から返済します。その結果、不良資産の残高は減少していきます。
実質債務超過額が確定したら、「中小企業特性を勘案した実質債務超過」の考え方を追加します。
「中小企業と役員は実質的に同一である」との考え方から、役員の資産や負債を実質債務超過額判定に加味します。
上記の例で言えば、不動産(自宅)を20,000千円プラス評価、住宅ローンを15,000千円マイナス評価(毎年1,000千円づつマイナスが減少)、先代社長の父から会社への貸付(役員借入金)を7,000千円プラス評価とします。
例題会社の場合、中小企業特性を勘案後の実質債務超過額は、現時点でも7,000千円のプラスと判定できます。
以上が不良資産回収計画作成の流れとなります。
以下が作成のポイントとなります。
①不良資産の正確な把握
・デューデリの「実態バランスシート」で不良資産を正しく把握します。漏れや抜けがあると正確な不良資産回収計画は作成できません。
②アクションプランとの整合性
・不良資産回収計画の残高推移は、アクションプランと整合している必要があります。上記の例で言えば、短期貸付金の回収の具体策(役員報酬から毎年500千円回収)がアクションプランに盛り込まれていなければなりません。
③PL計画、BS計画との整合性
・PL計画の雑損失、特別損失に記載が必要です。例えば貸倒処理なら全額が損失となり、有価証券の場合なら簿価と売却額の差額が損失となります。
・BS計画の資産減少額と不良資産回収額の整合性が必要です。短期貸付金を毎年500千円回収するなら、BS短期貸付金残高が毎年500千円減少します。有価証券を処分するなら、簿価金額が減少します。
以上、「不良資産回収計画作成のポイント」について、お話しました。
今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。
【関連記事】
経営再建計画は「デューデリ」が8割|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|②
コメントはこちらからどうぞ☟