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4月から変わる「経営者保証」 ~何が変わり、どう準備すべきか~

4月から金融機関融資に関する「経営者保証」の仕組みが抜本的に変わりました。

近い将来あなたの会社にも、金融機関の担当者が「経営者保証」の説明のため、訪問してくると思います。

そのとき、一から説明を受けるのではなく、今日お話しする予備知識をもっておけば、より交渉がスムーズかと思います。

どうぞ読み進めて下さい。

経営者保証

 

経営者保証 何が変わるのか

では何が変わるのか?

今までは融資を受けるために、当たり前のように経営者保証を提供してきたと思います。

金融機関が差し出す「金銭消費貸借契約書(借用書のこと)」に、社長のあなたはサインしてきたはずです。

これからは、当たり前ではなくなります。

金融機関は4月から、

「なぜあなたの会社に、経営者保証が必要なのか」

「どうすれば、経営者保証を解除できるのか」

を説明して、監督官庁に対して結果報告する義務が発生するのです。

金融庁に件数を報告する義務は、金融機関からすると大きなプレッシャーになります。

報告する内容は、「【無保証融資件数】+【有保証融資で、適切な説明を行い、記録した件数】」です。

以下に行政発表の文章を掲載します。

★金融機関が個人保証を徴求する手続きに対する監督強化
(以下 経産省、金融庁、財務省作成資料より抜粋)

① 金融機関が経営者等と個人保証契約を締結する場合には、保証契約の必要性等に関し、事業者・保証人に対し て個別具体的に以下の説明をすることを求めるとともに、その結果等を記録することを求める。【23年4月~】
 どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか
 どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか

② ①の結果等を記録した件数を金融庁に報告することを求める。【23年9月期 実績報告分より】 (※) 「無保証融資件数」+「有保証融資で、適切な説明を行い、記録した件数」=100%を目指す。

③ 金融庁に経営者保証専用相談窓口を設置し、事業者等から「金融機関から経営者保証に関する適切な説明がな い」などの相談を受け付ける。【23年4月~】 ④ 状況に応じて、金融機関に対して特別ヒアリングを実施。

(ここまで行政発表の文書)

 

経営者保証を要求されるケース

とはいえ、「経営者保証をとってはいけない」、ということではありません。

「なぜ保証が必要なのか、きちんと説明しなさい」ということです。

そうすると金融機関は、経営者保証ガイドラインに基づいて、「あなたの会社はこの要件を満たしていないので、経営者保証が必要です」と言ってきます。要件は3つです。

①法人・個人の資産分離
②財務基盤の強化
③経営の透明性の確保

経営者保証ガイドラインについては、以下の記事に詳しく説明しています。参考ください。

【参考記事】「経営者保証ガイドラインを有効活用する」
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

 

3つの要件とは何か

上記3つの要件に関して、具体的に金融機関はどんなことを言ってくるか。

以下が想定されます。

①法人・個人の資産分離
・代表者勘定がありますね。会社から代表者にお金が流れています。
【参考記事】決算書「代表者勘定」に向けられる銀行の厳しい目
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

・個人の不動産を法人に賃貸していますね。家賃を受け取っていますね。
・個人の不動産を法人融資に担保提供していますね。

②財務基盤の強化
・赤字が続いていますね。
【参考記事】2期連続赤字になると銀行がチェックしてくる決算書3つの項目
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

・事業規模と比較して有利子負債(金融機関借入金のこと)が過大ですね。
【参考記事】銀行借入金返済余力の簡便な計算方法~決算書からみる追加融資金額の出し方~
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

・営業利益で利息を払えていませんね。
【参考記事】ゾンビ企業から脱却せよ!
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

③経営の透明性の確保
・試算表を毎月提出できていませんよね。
【参考記事】銀行が試算表提出を求めてきた~試算表で何をチェックしているのか~
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

・資金繰り表を作成できていませんよね。
【参考記事】お金の流れを知りたければ、資金繰り表を作りなさい!~資金繰り表作成の方法と効果~
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

全てを言ってくるとは限りませんが、可能性が高いのが、「代表者勘定による社外流出」「連続赤字体質」「試算表の未提出」です。

そして、どうすれば経営者保証を解除できるかについては、「上記問題点を改善していただくと解除できます」と言ってくるでしょう。

 

経営者はどう備えれば良いか

色々面倒だと感じると思います。

ただ、よく考えると「3つの要件」をクリアしていくことは、会社の財務体質を強化させ、会社を筋肉質な形で次世代に引き継いでいくことにつながりませんか?

あなたは、自社について3つの要件を理解し、優先順位付けし、改善に向けて一歩を踏み出す時です。

まずは現状分析。

どこが弱点か。優先順位は何か。経営資源はどれだけ存在するか。会社の強みは、弱みは。

現状や課題が把握出来たら、改善のための打ち手は何が必要か。

いつからどの順番で行動に移せば良いか。

行動計画とスケジュール、役割分担を紙に書いて見える化します。

一例を挙げると、代表者勘定をクリアにするためには、「役員報酬との相殺」「個人資産からの返済」「役員退職金との相殺」「会社からの受取家賃との相殺」などが考えられます。

ただ、問題点に気づかなければ、長年放置されます。後継者に負の遺産を残すことになります。

あなたが取り組もうとするか、それとも無関心を装うか、にかかっているのです。

 

以上、今日は「4月から変わる経営者保証、あなたは何に取り組むか」についてお話ししました。

今後の貴社の財務安定のために、お役に立てていただけますと幸いです。

 

あとがき

もう30年も前になりますが、銀行員として駆け出しだったころのことです。

借用書に4人のサインをもらうため、全国を飛び回りました。

相続人全員のサインが必要だったからです。

借用書のサイン欄は、保証人が多すぎてスペースがなくなり、切り貼りして割り印をいただいたことを思い出します。

今は財務内容が良好だと、保証人を求められなくなりました。

先代と後継者の「ダブル保証」も減っているようです。

経営者保証変化の歴史に、時代の流れを感じる今日この頃です。

 

 

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