銀行員が嫌がる決算書の勘定科目に「代表者勘定」があります。
代表者勘定とは、
①資産勘定の「役員貸付金」(または社長名義の「短期・長期貸付金」)。
②負債勘定の「役員借入金」。
似たような名称ですが、資金の流れは全く逆です。
今年は、この「代表者勘定」に関して、銀行員と社長の間のやり取りが増えるかもしれません。
理由と対策をお話しします。
【目次】
貸借対照表の資産勘定に記載されている役員貸付金(または短期貸付金、長期貸付金)。
社長が会社から借りたお金です。
会社 → → → 社長
一方、負債勘定の役員借入金。
社長が会社に貸したお金です。
社長 → → → 会社
お金の流れ、まったく反対ですよね。
私は支援先企業の社長に、
「この役員貸付金、内訳は何ですか?」「役員借入金が増えてますが、理由は?」
と聞くことがあります。
代表者勘定について、理解していないことが多いです。
「さて、なんだろう?」「会社からお金を借りた覚えも、会社に貸した覚えもないけど?」
という反応もあります。
ピンとこない理由は、
現金が動いていないから、 もうひとつは、
経理処理の方法を理解していないから、です。
様々なケースがあるのですが、少し例を挙げます。
◇役員貸付金
✔ 使途不明金を決算期に代表者勘定で処理した
✔ 領収書がない経費を代表者勘定で処理した
◇役員借入金
✔ 会社にお金がなく役員報酬をとれなかった
✔ 会社から(事務所用地などの)地代家賃をもらえなかった
お金が動かないし、経理処理が理解できていないので、借りた、貸したという感覚がないのです。
一方で銀行員は、代表者勘定に対して、強い関心を示します。
役員貸付金には特に厳しいです。
融資実行後、試算表を確認して役員貸付金の残高が増えていれば、追加融資を拒絶することもあります。
【参考記事】銀行が試算表を求めてきた、何をチェックしているのか?
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
理由は、「融資金が事業に使われず、会社の外に持ち出された」と考えるからです。
銀行員は、役員貸付金のことを「社外流出金」と呼んでいます。
それぐらいマークしていて、嫌なのです。
この記事に詳しく説明しているので、参考ください。
【参考記事】銀行員は「代表者勘定」をこう見ている
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
今年4月から、「経営者保証」において、大きな指針変更があります。
銀行融資で今まで当たり前に求められてきた経営者保証。
免除されるケースが出てきます。
しかし、代表者勘定があれば、話は別になります。
「代表者勘定」があれば、銀行との経営者保証交渉において、不利になるのです。
詳細は以下の記事に詳しいので、参考ください。
【参考記事】2023年 経営者保証はどう変わるか?
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
では、そんなやっかいな代表者勘定。
どのように減らしていけば良いのでしょう。
犠牲を伴いますが、以下の様な方法があります。
◇役員貸付金
✔ 役員報酬の中から毎月決まった額を会社に返済する
✔ 個人預金で一括返済する
✔ 役員退職金で相殺する(お金を動かさず対応可能)→だだ将来的なことなので即効性はない
◇役員借入金
✔ 役員報酬を減らして、減額分を会社から毎月返済してもらう
✔ 債権放棄する(会社は債務免除益として特別利益となり財務が良くなる)
✔ 資本金に振り替える(純資産勘定が増え、会社の財務が良くなる)
役員借入金の減らし方は、以下の記事に詳しいので参考ください。
【参考記事】役員借入金5つの減らし方を簡便に解説
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
今まで「代表者勘定」を引き継ぎ、苦労をしている「後継者」をたくさん見てきました。
「先代からずっと決算書に残っているんだ」
「担当が替わるたびに、銀行員に毎回質問されるんだ」
ぼやきたくなるのも分かります。
代表者勘定を引き継いだ後継者は、長い間苦しむのです。
負の資産を、できるだけ後継者に引き継がないために、今、あなたにできることは何でしょう?
以上、今日は「代表者勘定」ついて、お話ししました。
この記事が、「あなたの会社の財務改善 」に役立ち、その結果、会社の成長につながりますと幸いです。
中小企業の場合、「法人と個人が一体であること」は、今まで当たり前のこととされてきました。
しかし、経営者保証の指針改定などを見ていると、政治も行政も、舵を切り始めたと感じます。
財務の透明化、情報の適切な開示、法人と個人の分離、、、。
「代表者勘定」は、その流れの中で、大きな意味合いを持つように感じます。
今後ますます、「代表者勘定」に関して、銀行とのやり取りが増える予感がするのです。
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