お問合せ

銀行融資と担保の関係を理解する~バランスの見方と計算方法~

会社が銀行と融資取引をしていると、担保は切っても切り離せないものと言えます。

もし、「うちは完全に無担保融資だから」、、、。

あなたの会社は、銀行が融資提案に行列をなす優良会社か、

または、無担保だと勘違いしているか。

今日はそんな担保について、経営者が知っておきたい考え方について、お話しします。

 

担保は大きく2種類

担保物件には、色々あります。

不動産担保、車両、機械装置、預金、株式、生命保険、、、。

ただ、中小企業の融資取引の場合、多くが土地や建物などの不動産担保です。

もう一つ厳密には担保とは言いませんが、「信用保証制度」があります。

信用保証協会付融資のことです。

銀行は、信用保証協会付融資を担保の一種として考えています。

だから今日は、便宜的に担保は大まかに2種類ある、「不動産担保」と「信用保証協会付融資」(以下保証付融資という)として、話を進めていきます。

 

不動産担保には抵当権と根抵当権がある

不動産担保には、抵当権と根抵当権があります。

簡単に言うと、抵当権は残高が減ると担保権も同じように減ります。

法人融資ではないですが、例を挙げると個人の住宅ローンなどが抵当権です。

1,000万円融資を受け、800万円まで返済が進めば、抵当権も800万円に減っています。

一方、根抵当権は、融資残高が減っても、最初に担保設定した金額がそのままです。

1,000万円の根抵当権は、融資残高が800万円になっても、担保権は1,000万円のままです。

抵当権は、日本政策金融公庫など政府系銀行が活用します。

根抵当権は、民間銀行が活用します。

その理由は以下の記事に詳しいので、参考にしてください。

 

【参考記事】銀行と経営者で、担保に見解相違が生じるわけ

(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

 

銀行が保証付融資を重宝するのは代位弁済があるから

あなたが銀行に融資を申し込んだ際、銀行員から「では、保証付融資で」と提案された経験があると思います。

必要なのは資金なので、経営者は融資方法をあまり気にしません。

困った時の保証付融資なので、助かることも多いですよね。実際、コロナ禍で中小企業の資金繰りを支えたのは、保証付融資のゼロゼロ融資です。

ただ、銀行が保証付融資を勧めるのは、先ほどお話ししたように、担保の一種として見ており、リスクを避けるためなのです。

もし会社が業績不振により、返済不能となったと仮定します。

そのとき、保証付融資については、信用保証協会があなたに代わり銀行に対して、一括返済してくれます。代位弁済(だいいべんさい)制度と言います。

代位弁済を受けると、以後の新規融資は、受けられなくなります。

債権者は銀行から信用保証協会に代わり、会社は信用保証協会と協議のうえ、返済体系を組み直します。

このように、銀行は焦げ付いた融資を、代位弁済制度により信用保証協会に補てんしてもらいます。

傷みが少ないので、保証付融資を担保(のようなもの)として考えています。

ただ、保証付融資にも100%保証のものと、80%保証のものがあります。

80%保証は、銀行が20%のリスク負担を負いますので、保証付融資といえども、銀行は融資に慎重になることがあります。

コロナのゼロゼロ融資は、市町村のセーフティネット付(コロナの影響で売上減少の割合が大きければセーフティネット対象となった)のものが多かったです。

セーフティネット付のゼロゼロ融資は100%保証だったので、銀行は積極的に融資をしました。

この辺りの事情は以下の記事に詳しいのでご参考ください。

 

【参考記事】コロナ禍で銀行の融資姿勢はどう変わったか
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

 

融資額と担保の関係から銀行の融資方針を知る

自社の担保と、銀行融資の関係性。

多くの経営者が、あまり理解していません。

自社の融資額と担保の関係を把握することで、銀行ごとに違う、あなたの会社への取り組みの姿勢がよく見えてきます。

メインバンクが担保や保証付融資で、損が出ないようにがっちり抑えていたり。

裏話ですが、担保や保証付融資で融資額がカバーできていると、あまり経営再建支援に力が入らないこともあります。

融資先が倒産しても、銀行に損が出ないからです。逆に担保でカバーできていないと会社に何とか再建してもらい、融資を返済してもらった方が得です。銀行では、経済合理性と言います。

もちろん、ほとんどの地方銀行、信用金庫はそうではないですが、そのような銀行、融資担当者も、まれにいます。

だから、自社の融資額と担保の関係を知っておいたほうが良いです。

確認の仕方を説明します。

 

銀行融資と担保のバランス確認フォーマット

以下の様なフォーマットを使います。

例として、架空の会社A社で説明します(表のうえでクリックすると、拡大します。可能なら印刷して手元に表を置いて読み進めていただくと、理解しやすいと思います)。

 

表の見方を説明します。
【表の見方】

・融資額(A)と、保全額(B)を比較し、各銀行がどれだけA社に対して、リスクを取って融資をしているか、確認する。保全状況(E)の金額を確認する。

・上記例のA社では、メインバンクが、がっちり担保と保証で固めており(保全状況は+480万円)、仮にA社が倒産しても、損をしないようになっている。

・サブバンクの××銀行が、政府系の日本政策金融公庫を除けば、最もリスクを取って(保全状況は▲1,900万円)A社を支援していることが分かる。

・銀行全体で見ると、1.15億円の融資に対して、担保+保証付融資で7,580万円ある。A社は3,920万円分、無担保の状態で融資を受けていることになる。

自社で作成する場合、作成の手順を説明します。

 

【作成の手順】

①銀行ごとに融資残高を確認する(融資返済表を全部集めて、決算書の銀行借入金内訳と突き合わせしながら、抜き出す。※長期借入金と短期借入金があるときは、両方抜き出すこと!)。融資額(A)欄に、現在の融資残高を記載する。

②融資の中で上記表のように、保証付融資とプロパー融資(保証付でない融資)に分ける。

③保証付融資がある場合、保証協会負担割合(100%か80%か)を確認する(銀行か信用保証協会に聞き、保証協会(D)の欄に記載する)。そのとき100%保証は融資残高×1とし、80%保証は融資残高×0.8とする。

③法務局で不動産の登記簿をとり、銀行の担保設定の状況を確認する。

④各市町村が発行する固定資産税納税通知書を用意する。

⑤不動産担保を提供している物件について、固定資産税納税通知書の「評価額」を、担保提供している銀行の不動産(C)欄に記載する。

⑥(C)+(D)により、保全額(B)を出す。

⑦(B)-(A)により、保全状況(E)を出す。

※Excelシートで作成すれば、分かりやすいでしょう。

そして出てきた数値を見比べれば、どの銀行がどのような状態で融資してくれているか、よく分かります。

 

銀行ごとの融資と担保のバランスを知っておく

銀行融資と担保のバランスを知っておくことは、銀行と良いパートナーシップを築き、長く付き合っていくうえで大切なことです。

そのために、経営者は無関心にならず、日頃から知っておこうとする姿勢が大切です。

順調に会社業績や資金繰りが回っているうちは、担保のことは問題になりません。

あなたがこの問題で頭を悩ましたことがないなら、それは今まで会社が順調ということで、素晴らしいことです。

ただ、今後もその状態が続く保証はありません。それはどんな会社にも言えることなのです。

 

以上、今日は「銀行融資と担保のバランス、その見方」について、お話ししました。

それと、今日の話とは少しズレますが、「担保物件売却の際の注意点」の記事も貼っておきますね。興味があればご確認ください。

【参考記事】担保物件を売却するときの注意点
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

 

この記事が、「あなたの会社の財務改善 」に役立ち、その結果、会社の成長につながりますと幸いです。

また、今日お話しした件を知りたい方、お気軽にご相談ください。

 

あとがき

「根抵当入ってますから、担保は抜けません」。

つい最近も、支援先企業と同行訪問してるときに、銀行員が言ってました。

銀行融資と担保のバランスについて、経営者はあまり意識しません。

必要なのは資金だからです。

知ろうとしないと、銀行の方が融資知識や仕組みについて圧倒的に情報を持っている状態、「情報の非対称性」が起こってしまうのです。

融資交渉で不利な状態になってしまうかもしれません。

 

 

【関連記事】

銀行融資と担保の関係【前編】~銀行と経営者で、見解相違が生じるわけ~

銀行融資と担保の関係【後編】~担保物件を売却するときの注意点~

担保アリでも融資ナシ!| 銀行が教えない不動産担保の真実

 

 

この記事の様なことで悩んでいる経営者のあなた。お問い合わせはこちらから(暗号化対応をしているので、コメントやメールアドレスが外部に漏れることはありません。24時間コメント受付、返信は翌営業日以降になることがあります)。☟

「銀行融資と担保の関係を理解する~バランスの見方と計算方法~ 」
ご覧いただきありがとうございました。

関連タグ:タグ: , , , ,

「銀行融資審査の考え方」 関連の記事一覧

お問合せ
セミナーの依頼
 
注目の記事カテゴリ

経営者の方へ

銀行員の方へ

中小企業診断士の方へ

ページトップ