【はじめに】
「はじめに」の文章を書いている今は、2020年3月。この「中小企業診断士独立に失敗しない方法」を書いたのは、1年半前の2018年の夏です。それから社会を取り巻く状況が大きく変わりました。「新型コロナウィルス」の世界的流行です。日本でもあらゆる分野で影響が出ています。先行きが見通せない状況です。
実務実習が終わり、独立開業を検討されている方は、「こんな時に独立して大丈夫だろうか?」と、迷っていることでしょう。私が独立開業した9年前は、東日本大震災が発生した年です。退職を決め実務実習を受けていたちょうどその時、地震が発生しました。原発の問題もあり、日本自体の存続が危ぶまれました。今後が見通せないという面で、今は当時と似た状況かもしれません。
この記事にたどり着いた皆さんは、「こんな中で、果たして今後診断士が必要とされるのだろうか?」と疑問に感じていることでしょう。私自身は独立したことを後悔していませんが、皆さんに美味しい話ばかりして、独立をお薦めしたりしません。思い描いた理想通りにはいかないことも多く、現実は厳しいものです。
それでもこの苦しい環境の中、「自己責任でリスクをとり勝負したい!」という方は、ぜひこの記事を読み進めてください。日本経済が中小企業が苦しい時期だからこそ、診断士の役割は大切になり今後ますます必要とされる、と私は現場で感じているのです。
2020年3月 中小企業診断士 和田 健一 愛媛県松山市在住 【プロフィール】
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【目次】
試験合格者向けの、登録のための夏の実務補習も7月、8月コースが終了した頃かと思います。参加された皆さん、お疲れ様でした。
実務補修期間に、中小企業の経営診断をしたり、診断士の先輩である担当教官の話を聞いたりしているうちに、診断士の資格を活用して、いつかは(もしくは今すぐ)独立してみたい、と感じている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
私も7年半前に実務補修を受けました。その時はもう退職して、後戻り出来ない状態でしたので、脱サラして独立しようかどうか、悩んでいたのは、それより前の受験勉強中ですが。
独立して7年強が経過しました。
診断士資格獲得後の一番最初の経営判断は、「独立するか、もしくは勤務先に残って資格を有効活用するか」、になるかと思います。
その経営判断をするにあたり、判断材料が必要です。
今回は、独立を検討している方向けのお話しをしますね。
今、診断士資格を活用して、プロコンとして活動するものとしての感覚は、私が独立した時よりも更に、診断士が活躍できるフィールドが広くなってきているということです。
それは、政権が中小企業の生産性向上や事業承継、災害復旧支援などを、政策として重視して進めているからです。
経営革新計画、経営力向上計画、事業承継計画、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT補助金、経営改善計画、災害復旧にかかる補助金の計画策定、BCP、各種のファンド申請書、などなど。その他、診断士の書類作成スキルを活かすことができる業務は、まだまだあります。
試しに、中小企業庁ホームページを開いてみると、支援策が多岐に渡っていることがよく分かります。アドバイザー業務の公募もあると思います。
【参考記事】コロナ共生時代の中小企業診断士 ~資格活用に迷っている診断士へのメッセージ~
私は、中小企業の経営者に寄り添い、生産性向上を支援できる人材の一番手は、診断士だと感じています。この分野で診断士は、他の士業よりリードできます。政府や行政にも期待されています。
生産性向上支援については、最近、新聞でも担い手として「中小企業診断士」が一番手として記載されていました。今までは税理士、弁護士等の「等」の中に入っていることが多く、一般世間の認知度の低さに、悔しい思いをしていました。
しかしこれからは、徐々に診断士の役割やスキルの認知度向上が進む、と感じています。上記のように、診断士が必要とされる業務も増加傾向にあります。追い風が吹いてるのは、現場の実感としても事実です。
ただし、「独立すればすぐ順風満帆」「バラ色の診断士ライフ」とは、中々いかないと思います。
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以上、診断士が必要されている業務について、お話ししました。
ここからは、プロコンしての開業時のポイントを、私の経験を踏まえてお話しします。
これが必ずしも正解とは限りませんし、他にもやり方はあると思いますので、参考の一つとしてお読みいただけると幸いです。
診断士は販売する商品が、目に見えにくいスキルやサービスです。
よって最初は、クライアント候補から、「この人は何ができる人か?」「お願いして効果があるのか?」とお金を払うことに抵抗を受けます。自分も実績がないので、「成果が出るのですか?」と聞かれると不安げな応答をしてしまいます。これは仕方がないことです。
また、税理士、弁護士、司法書士、行政書士、社労士などのように業法で守られた独占業務がないため、サービスを料金として見える化しづらい側面もあります。
「信用や実績がある程度できるまで売上は厳しい」と、覚悟しておく必要があります。人によって期間に差はありますが、3年程度はかかるかもしれません。その間どのように生活資金を確保するか、考えておかねばならないのです。
ただし、経営コンサルタント業が良いところは、初期投資もランニングコストも少なく済むことです。売上が少なくても支出を抑えていけば、信用・実績がついてくるまで、他の業種と比較すれば続けやすい面もあります。
このように、厳しいファーストステージ。乗り切るために、どうすればいいか?私の考えをお話しします。
まず信用と実績をつけるために、行政や公的中小企業支援機関が公募するコーディネータ業務に手を挙げて、採用を目指します。
コーディネータ業務に採用され、週に2~3回程度勤務できれば、安定収入の獲得、信用と実績の積み上げにつながります。
もちろんコーディネータ業務は、公募でしょうから、実績のないファーストステージでは、不採択になる可能性もあります。しかし、何度も公募に手を挙げ、誠実さや熱意など、自分をアピールしていけば、その後ひょんなところから声がかかることがあります。(公募には不採択になったけれど、後日別の事業から声がかかったなど、あるようです)。
行政や中小企業支援機関のインキュベーション施設に入居すると、行政機関支援人材の方とのつながりもできて、情報も集まりやすくなるかもしれません。
もう一つおすすめは、地元の診断士協会に入会し、勉強会や各種行事などに積極的に参加することです。
そうすることで、ベテランや先輩診断士と知り合うことができます。礼儀正しく、謙虚な姿勢で接することで、先輩診断士に気に入ってもらえれば、仕事のチャンスも生まれてきます。
最初は雑事や先輩診断士から回された費用対効果の低い仕事も、実績と経験が大切なファーストステージは、積極的にチャレンジします。まずは何でもやってみる姿勢が大切です。割のいい仕事が、最初から回ってくるはずがありません。まずは実績と経験作りです。
愛媛県協会などのように、県によっては、診断士協会が行政事業を受託し、若手の診断士に経験作りを積極的にさせるケースもあります。(今の愛媛県協会は、若手に積極的に事業を受託させる方針のようです)。
以上、ファーストステージを上手に漕ぎ出すための、2つの方法を紹介しました。
自分の経験と、私以降の世代を見ていると、行政事業や地元の診断士協会と上手に付き合うことができると、うまく最初の波に乗りやすいようです。
最初の波に乗れば、あとは目の前の仕事を「依頼者の要望を踏まえた正確で誠実な仕事を行う、それを積み重ねていく」ことで、リピート受注からコンサル事業の安定化につながってくのではないでしょうか。
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