(2020年に作成したものを2024年7月の状況に合わせて、加筆修正しました)
中小企業の倒産件数が増加傾向です。人手不足や円安による原材料費高騰、ゼロゼロ融資の元金返済開始による資金繰り悪化などが原因です。
経産省、金融庁、中小企業庁はコロナ禍の目先の資金繰り支援から、抜本的な事業再生支援に支援メニューの舵を切りました。
【目次】
中小企業の倒産件数が増加傾向です。人手不足や円安による原材料費高騰、ゼロゼロ融資の元金返済開始による資金繰り悪化などが原因です。
経産省、金融庁、中小企業庁はコロナ禍の目先の資金繰り支援から、抜本的な事業再生支援に支援メニューの舵を切りました。
その動きをうけて、地域金融機関は、中小企業活性化協議会や信用保証協会への再生案件の持ち込みを増やしています。そうした流れの中、診断士への引き合いも増えてくるでしょう。
一方でここ数年は、コロナ禍で事業再構築補助金など、補助金の予算が増え、中小企業診断士(以下診断士と略す)はそちらの仕事が増えていたようです。私は補助金申請支援の仕事をほとんどしていない(ほぼゼロ)ので、コロナ禍での補助金申請支援の特需は影響がありませんでした(「補助金祭り」と言っていた診断士もいました)。
しかしやはり風向きは変わるもので、コンサルフィー目当てのずさんな案件持ち込みにより無理な案件申請が増え、事業再構築補助金の募集要項が厳しくなりました。採択率も案件審査も非常に厳しくなっているようです。
そちらに比重をかけていた診断士は、今後厳しくなるでしょう。
我々診断士は、事業者を置き去りにした目先のフィー獲得に走るのではなく、腰を据えて、将来を見越した地域での信用形成をしたいものです。もちろん我々プロコン診断士は生活があるので、正当な形でのフィー獲得は大切なことです。
私の13年+2年の経験(銀行最後の2年は中小企業支援機関に出向していたため)では、「補助金しませんか、補助金」と事業者にしきりに営業をかけている診断士は、そのうち信用を失い(なぜならフィー目当てのずさんな机上の空論ばかりで、信用を失うから)金融機関や支援機関から相手にされなくなるような気がします。
そして、噂を聞いた補助金ありきの人間が近寄ってきます。不正受給などに巻き込まれる可能性も出てきます。そしてフェードアウトしていきます。
私は、すべての補助金申請支援業務を否定しているのではありません。
支援先の経営全体を理解し、伴走支援の中で、経営の方向性に合った補助金申請のお手伝いであれば、支援先中小企業にとって役立つでしょう。
そうではなく、自身の法外なフィー獲得のみに焦点を当て、無理な案件持ち込みや実現性の低い机上の空論ばかりを企画・製造する行動のことを言っています。
フィーはしっかりとり、その後の事業リスクは事業者がすべて追うでは、よくない評判もたつでしょう。
補助金申請業務を診断士活動の中心にしていると、周りから「補助金申請を代わりにしてくれる人」という立ち位置で認識されます。
そういう位置づけで認識されると、経営者から経営の根幹、重要経営課題についての相談はされなくなります。
実は私も、13年前の独立開業当時は、補助金申請業務に力を入れようかと考えましたが、上記お話ししたような事情で方針転換して、今はほとんどやっていません。
ただし405事業は、経営全体を俯瞰して、経営を抜本的に立て直していくために有効な補助事業と考えています。
支援依頼があり(405事業の特性上、こちらから事業者へ直接提案営業はしません)、事業者、メインバンク、専門家(経営革新等支援機関)としての私、三者間の合意形成が出来れば、積極的にお手伝いしています。
405事業を進めていくうえでは、これからお話しする「事業デューデリ」が大切です。
私が405事業が経営立て直しに有効だと考える理由は、以下記事で説明しています。
【参考記事】405事業で赤字経営を立て直す!注意点とチェックリスト
事業継続性の判定には、対象企業を正しく分析することが必要です。
今でいう事業性評価です。
対象企業に今後継続していく力があるか、事業面と財務面から分析していきます。
事業面の分析を事業デューデリジェンス(以下事業DD)、財務面の分析を財務デューデリジェンス(以下財務DD)と言います。
資本性劣後ローンは、日本政策金融公庫や商工中金などの政府系金融機関、中小企業再生ファンドは、中小機構や中小企業再生支援協議会、事業引継ぎ支援センターなどの公的支援機関が窓口になります。
日頃から上記支援機関とつながりがあれば、事業DD、財務DD依頼の声がかかってくるでしょうし、つながりがなければこれから構築していきます(診断士も事業ですから、その方法は、自分で汗をかいて探していかねばなりません)。
診断士の、他の士業やコンサルタントとの比較優位性は、「事業DDの品質が高いこと」です。
診断士の資格勉強や実務実習などが、まさしく事業DDの力をつけるためのもの、だからです。
例えばSWOT分析や、競合分析、業務フロー分析、業界特性分析、窮境要因分析などです。
常日頃から、こうした能力を高めておけば、事業DD成果物の質で勝負できるでしょう。
成果物の品質が高ければ、各方面から声がかかりだしますし、手を抜いていれば仕事の依頼が来なくなります。
仕事の品質が下がる理由は、スケジューリングが不十分なことで、やっつけ仕事になってしまうことや、日々の業務に忙殺され、自分の能力を高める自己啓発を行っていないからです。
事業DDの能力を高めるために私が気を付けているのは、経済雑誌を定期的に読むこと(日経ビジネスや週刊東洋経済)、日経新聞を読むこと、経営者の話をよく聴くことです。
外部環境分析で、公的データ・業界データやグラフを連ねている事業DDを目にしますが、一般的過ぎて説得力に欠ける気がします。ネットデータの切り貼りと見られ、DD資料の評価が低くなります。
それより、内部環境分析をしっかり行い、その企業が持つ特色(SWOT)や業務フロー、経営課題、窮境要因を徹底的に掘り下げていったほうが、説得力のあるDD資料が出来上がります。
【参考記事】経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|②経営再建計画は「デューデリ」が8割
財務DDについては、公認会計士などとチームを組む場合は、必要ありません。
とはいえ、財務DDも同時に依頼されることがありますので、一定の知識と能力は必要です。
出来るけどやらないと、出来ないからやらないは、大きく違います。
ここでは詳細はお話ししませんが、やり方は、こちらの記事(財務DDについて)などを参考にしてください。
実態バランスシート作成のポイントや粉飾決算の見破り方などは、知っておく必要があります。
私も17年間銀行員だったので分かるのですが、金融機関職員や再生系の公的支援機関から、診断士の評判が低いのは、数字に弱い診断士がいるからです。
現状分析のための財務諸表の見方、部門別収支分析や原価分析、妥当性のある将来数値計画作成、などの能力は、普段から勉強したり、実務を積んだりして高めておく必要があります。
数字に弱いと理論の裏付けが弱く、説得性の高いDD資料や事業計画は作成できません。
【参考記事】銀行が、提出した経営改善計画を認めない3つの理由
私の見立ては、上記のように資本性劣後ローンや中小企業ファンド導入に際して、診断士に対する期待が増してくるのではないか、ということです。ただ、人それぞれ、やり方は違ってくると思います。
新しい生活様式が始まり、消費行動も変化しています。消費行動の変化に伴い、支援先企業も動き出しています。
金融支援の枠組みも進化しています。
診断士も事業です。今後の見通しを立てて準備しておくことが必要ではないか、と感じるのです。
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