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資本性劣後ローンの財務メリットとデメリット

【この記事で分かること】

 

・資本性劣後ローンの融資条件、対象企業

 

・資本性劣後ローンのメリット

 

・資本性劣後ローンのデメリット

 

 

そもそも劣後ローンとは

第一に劣後ローンとは、返済順位が低い債務のことをいいます。

つまり、融資を受けた企業が返済不能になったとき、通常の金融借入金より返済の優先順位が低い融資です。

例えば、ある会社が倒産して他の債務を返済し終わった後、仮にまだ資産が残っていれば、ようやく劣後ローンの返済となります。

 

資本性劣後ローンとは

資本性劣後ローンとは、資本金的意味合いが強い融資であり、資本性劣後ローンと呼ばれています。

要するに、劣後ローンは必ずしも返済されるわけではないため、債務というよりは株式資本のような印象を持たれることが少なくありません。

前提として劣後ローンは債務であるため、帳簿上は債務として処理されます。

しかし株式のような性質を持っているため金融機関からは自己資本の一部として扱われるのです。

そのため『資本性劣後ローン』と呼ばれることも多くあります。

 

資本性劣後ローンで融資を受けるメリット

資本性劣後ローンで融資を受けるメリットは大きく分けると3つあります。

① 期限一括償還であり、長期間元金返済がない(例;日本公庫国民生活事業;返済期日は、5年1か月、7年、10年、15年、20年;貸付限度額は7,200万円)。

② 民間金融機関が、資本性劣後ローンを自己資本とみなす(償還期限5年超の部分)ため、財務評価が高くなる。その結果、民間金融機関から追加支援を受けやすい(※ただし償還期限の5年未満からは1年ごとに20%づつ資本とみなせる額が減少)。

③ 導入に、専門家による事業計画策定がセットになり、融資実行後のモニタリングも定期的に実施されるため、単なる一時的な資金繰り支援にとどまらず、経営再建に向けたスタートが切れる。

というのが利点です。

資本性劣後ローンのイメージ図

資本性劣後ローンで融資を受けるデメリット

一方資本性劣後ローンで融資を受けるデメリットも見ておきましょう。

① 金利負担が大きくなる可能性

金利が業績連動タイプであり、借入後、4年目以降黒字が出た場合は、通常融資と比較して金利が高くなる(ただし赤字期間中は0.5%)。

(例;令和6年2月現在;日本公庫国民生活事業の場合 当初3年間0.5%、4年目以降黒字の場合、2.6%(5年1か月・7年・10年返済)、2.7%(15年返済)、2.95%(20年返済)金利負担が発生します。赤字の場合はずっと0.5%です)。

・当初3年間は、黒字でも赤字でも0.5%

【3年経過後の金利:令和6年2月現在】

税引後当期純利益 期間

5年1か月

期間

7年

期間

10年

期間

15年

期間

20年

黒字 2.6% 2.6% 2.6% 2.7% 2.95%
赤字 0.5% 0.5% 0.5% 0.5% 0.5%

 

② 返済時に多額の資金

期限一括償還ということは、メリットである反面、返済期日に多くの返済資金を用意する必要がある(※5年を超えれば、手数料ゼロで期限前弁済可能)。

 

③ 手続きのハードルが高い

申込みに、再建に向けた綿密な経営計画書提出(※国民生活事業の場合は、原則として認定支援機関の経営指導を受けて事業計画を策定した事業者)や、民間金融機関の融資セットを求められ、手続きのハードルが高い。

 

④ 実行後の事務負担

仮に資本性劣後ローンが、実行された場合も、定期的な実績報告や不振が続いた際の計画の修正が求められるなど、通常融資と比較して、会社側の事務負担が大きい。

ということです。

資本性劣後ローンメリット・デメリット

 

業績が良いときに、金利負担が高くなるのは、通常融資と逆の考え方です。

通常融資の場合は、業績の良い企業が低い金利で融資を受けられますから。

資本性劣後ローンの金利は、株式の配当金の様なイメージ(利益が多く出れば多く配当する)になります。ただしあくまでも支払利息であり、損金処理できることが配当金と違うところです。

赤字だと、金利が低くなります(例;日本公庫国民生活事業 赤字の場合 0.5%)。

日本政策金融公庫や商工中金が、「新型コロナウィルスの影響で資金が不足するスタートアップ企業」や、「一時的に財務が悪化し企業再建に取り組む持続可能な企業」に対して融資を実施します。

 

選定される企業

 

通常の融資とは異なる、資本性劣後ローン。

どのような企業が支援を受けることができるのでしょう。

 

① 雇用や地域経済への影響などが大きい企業や成長が期待できるスタートアップ

② キラリ、事業の強みをもちながら過剰債務で苦しんでいる企業(過剰債務問題を解決すれば立ち直る)

③ 資本性劣後ローンを導入することで、立ち直りが期待される企業

④ 民間金融機関が経営再建を積極的に支援している企業(原則としておおむね1年以内に、民間金融機関から出資または融資による資金調達が見込まれること)

⑤ 経営情報や財務状況に対して、情報開示の姿勢がオープンな企業

⑥ 支援実施後の業績定例報告など、ガバナンス強化に対応できる企業

⑦ 経営者が覚悟を持って経営再建に取り組む意思をもっている企業

でかつ、新型コロナウィルスの影響で一時的に業績が悪化していること、などが要件になると考えます。

 

いずれにしろ、民間金融機関であるメインバンクの積極的な支援姿勢が求められます。

メインバンクが、「この企業を何とか支援したい」と、強く感じていることがポイントです。

よって、通常融資のように企業側から申請するのではなく、メインバンクからの提案により導入することが多くなるでしょう。メインバンクから日本政策金融公庫や商工中金への取り次ぎが想定されます。

 

資本性劣後ローンに政府系金融機関は本気で取り組み始めた

商品化された当初は、ゼロゼロ融資の方が手続き面が簡便で、金利面でも有利だったため、資本性劣後ローンはあまり積極的に推進していなかったようです。

私の周りでも、資本性劣後ローンの問い合わせをしても、ゼロゼロ融資や他の制度融資を勧められたケースが、何回かありました。

しかし現在は、資本性劣後ローンのセミナーを開催したり、活用の成功事例を作成したり、政府系金融機関の取組に本気度が出てきたようです。

中小企業の過剰債務が社会問題になっていることが背景にあるのかもしれません。

日本政策金融公庫が発行している資本性劣後ローンの活用事例集のページリンクを貼ります。

参考にしてください。

 

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