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【試算表黒字 決算赤字】なぜ?決算処理で利益が消える3つの原因と対策(2025年版)

「毎月の試算表では黒字だったのに、最終的な決算書を見たら赤字になっていた!」

「期中の利益はどこへ消えた? なぜこんなことが起こるの?」

「決算処理で赤字になるのを防ぐ方法はある?」

月次試算表を確認し、「今期は順調に黒字で進んでいるな」と安心していたにも関わらず、期末の決算処理を経たら最終的に赤字になってしまい、愕然とした経験をお持ちの経営者の方はいらっしゃいませんか? 「試算表黒字 決算赤字」というこの現象は、特に月次決算体制が十分に整備されていない中小企業で起こりがちです。

銀行に「今期は黒字の見込みです」と報告していた手前、決算書が赤字になってしまうと、信頼関係にも影響が出かねません。

この記事では、ここ愛媛県をはじめ多くの中小企業をご支援してきたコンサルタントとして、なぜ「試算表黒字 決算赤字」という事態が起こるのか、その主な3つの原因と、会社として取るべき対策について、決算処理の観点から分かりやすく解説します。

なぜ試算表と決算書で利益が異なるのか?決算整理仕訳とは

まず理解しておくべきなのは、月次試算表と期末の決算書では、その性質と精度が異なるということです。

試算表は「途中経過」、決算書は「確定値」

試算表: 月々の取引を集計したものであり、いわば**「経営成績の速報値・途中経過」**です。全ての会計処理が反映されていない場合があります。

決算書: 1年間の経営成績と期末時点の財政状態を**最終的に確定させた「確定値」**です。試算表の数値をベースに、期末特有の調整(決算整理仕訳)を行って作成されます。

試算表黒字 決算赤字」は、この「決算整理仕訳」によって、試算表段階では見えていなかった費用や損失が計上されることで発生します。

「試算表黒字 決算赤字」を招く主な3つの原因

では、具体的にどのような決算処理(決算整理仕訳)が、利益を押し下げるのでしょうか? 主な原因は以下の3つです。

原因①:減価償却費の期末一括計上 (減価償却 決算処理)

・問題点: 中小企業の会社では、減価償却費を毎月の試算表に計上せず、期末の決算処理で1年分をまとめて費用計上するケースが多く見られます。減価償却費は、特に設備を多く保有する会社では大きな金額になるため、これを期末に一括計上すると、試算表段階での利益が大幅に吹き飛んでしまうのです。

・対策:
‣ 期初に年間の減価償却費の見込み額を計算し、毎月12分の1を月次試算表に費用として計上する(月次計上)。
‣ これにより、期中の試算表でも、より実態に近い利益状況を把握できます。(年間の見込み額は顧問税理士に依頼すれば計算してもらえます。)

[関連記事:減価償却とは?経営者が知るべき基本と融資返済財源への影響]
[関連記事:償却不足とは?発生理由と確認方法、銀行評価への影響]

原因②:棚卸資産(在庫)の期末一括評価・整理 (棚卸資産 決算処理)

・問題点: 在庫(棚卸資産)の数量確認(棚卸)や評価を、期末の決算処理時にしか行わないケースです。期末に実際に棚卸をしてみたら、「帳簿上の在庫より実際の在庫が少なかった(紛失・不明ロスなど)」「売れ残って価値が下がった不良在庫が大量にあった(評価損)」といったことが判明すると、**売上原価が想定より増加し、利益が大幅に減少(または赤字化)**します。

・対策:
‣ 定期的な実地棚卸の実施: 最低でも年1回の期末棚卸は必須ですが、可能であれば半期・四半期・月次など、より短いサイクルで実施し、在庫の実態をタイムリーに把握します。
‣ 在庫評価ルールの徹底: 不良在庫や滞留在庫について、適正な評価減(評価損の計上)を行うルールを定め、決算処理を待たずに、必要に応じて期中の試算表にも反映させることが望ましいです。

[関連記事:在庫多い?決算書の棚卸資産は大丈夫?原因と対策]
[関連記事:在庫と利益の関係 – 在庫が増えると利益はどうなる?]

原因③:期中の会計処理ミス・漏れの決算時修正

・問題点: 日々や月次の会計処理(記帳)において、計上すべき費用が漏れていたり、売上を誤って計上していたりするミスが、期末の決算処理段階で発見・修正されるケースです。
‣ 例:未払いの役員報酬や社会保険料の費用計上漏れ。
‣ 例:前受金(まだ役務提供していない売上)を、入金時点で売上として計上してしまっていた。
‣ 例:その他、単純な記帳ミスや経費計上漏れ(領収書の未提出など)。

・対策:
‣ 正確な月次決算体制の構築: 日々の記帳精度を高め、毎月、売上・費用・債権・債務などをきちんと確定させる**「月次決算」**の仕組みを導入・運用します。
‣ ダブルチェック体制: 可能であれば、経理処理を複数人でチェックする体制を整えます。
‣ 経営者自身のチェック: 経営者も試算表の数値を見て、「何かおかしいぞ?」という違和感を持つことが重要です。現場の感覚と数字が乖離していると感じたら、その原因を経理担当や税理士に確認しましょう。

決算整理が「営業赤字」を顕在化させることも

これらの決算処理(決算整理仕訳)は、最終的な当期純利益だけでなく、営業利益に影響を与えるものも多くあります。

例えば、

・棚卸資産 決算処理における評価損や棚卸減耗損(売上原価の増加要因)

・減価償却 決算処理(販管費または製造原価の増加要因)

・その他、販管費に属する経費の計上漏れの修正

などが期末にまとめて行われると、月次試算表の段階では営業黒字に見えていたものが、最終的な決算書では営業赤字(本業赤字)になってしまうというケースも起こり得ます。これは、会社の収益性の実態を大きく見誤っていたことを意味し、より深刻な問題と言えます。(営業赤字の影響については別記事参照)

[関連記事:営業利益マイナスは放置厳禁!その理由と改善策]

正確な月次決算体制の重要性

試算表黒字 決算赤字」を防ぎ、会社の経営状況を正しく把握するためには、正確でタイムリーな「月次決算」の体制を構築・運用することが極めて重要です。

経営判断の精度向上

毎月、決算に近いレベルで精度を高めた試算表(月次決算書)を作成することで、経営者は会社の「今」の状況をよりリアルタイムで、かつ正確に把握できます。これにより、問題の早期発見と迅速な意思決定が可能になります。

銀行等への信頼性向上

定期的に精度の高い月次試算表を作成し、それを銀行などの関係者に提出・説明できる会社は、「経営管理がしっかりしている」という高い評価を得られます。これは、円滑な融資取引や信頼関係の構築に繋がります。

経営者の「違和感」を活かす

精度の高い月次試算表があれば、経営者が感じる「現場感覚とのズレ(違和感)」は、会計処理上の問題ではなく、実際の事業活動における課題(例:想定外のコスト増、売上不振など)を示している可能性が高くなります。この「違和感」をきっかけに、本質的な経営改善に着手できるのです。

まとめ:月次決算の精度向上が「決算ショック」を防ぐ鍵

試算表黒字 決算赤字」という現象は、多くの場合、期末の決算処理で、それまで月次試算表に反映されていなかった減価償却費や棚卸資産の評価損、その他の費用計上漏れなどがまとめて計上されることによって発生します。

・試算表はあくまで速報値であり、決算整理を経ていない数値に頼るのは危険。
・主な原因は「減価償却の期末一括計上」「在庫評価・整理の期末集中」「期中処理ミス・漏れ」。
・これらの調整が、最終赤字だけでなく、営業赤字を顕在化させることもある。
・対策の基本は、正確でタイムリーな「月次決算」体制の構築・運用。

決算発表時に慌てないためにも、日頃から会社の数値を正確に把握する努力が必要です。ぜひ、月次での試算表の精度向上に取り組み、経営の「見える化」を進めてください。

この記事が、貴社の財務管理体制の強化、そして的確な経営判断の一助となれば幸いです。

 

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