新型コロナ禍において、金融機関から融資を受ける際。
融資決定の評価基準は、コロナ発生前の財務内容に重点が置かれています。
近年は、決算書以外から判断する事業性評価融資が流行していましたが、危機下の今、その機運は後退しています。
やはり金融機関は、融資判断に過去の決算書を重視しています。
経営者は、知らずに融資評価にマイナスとなる財務処理を選択していて、苦戦することもあります。
では、どのような財務処理がマイナス評価となるのでしょう。詳しく見ていきます。
業績不振時に、役員報酬を削減し、足りなくなった生活費を補填するため、役員貸付金で処理します。
役員報酬が減額になると、社会保険料負担も減少します。
役員貸付金は経費ではありませんから、利益も増えます。
2重で得したような気になります。利益が増える処理なので、税務署に突っ込まれることもありません。
しかし、大きな落とし穴が待っています。
こうした財務処理に対して、金融機関は役員貸付金残高分をマイナス処理します。
役員貸付金が500万円あれば、利益から500万円補正して、融資判断します。
加えて、粉飾決算とみなし、企業と経営者の評価を下げます。
本当は利益も出ていないのに、税金を払う羽目になり、良いことはありません。
そして、いつまでも残しておくと、将来経営者の相続負債として処理に苦労します。
役員報酬と相殺するなどで、役員貸付金の残高を減らし、改善する必要があります。
会社の資金繰りが厳しいとき、経営者は個人名義でカードローンやフリーローンなどの消費性ローンを組み、運転資金として会社に貸し付けます。
決算書には、負債勘定の役員借入金として計上します。
個人ローンは、基本的に消費性の資金使途として借入します。原則、事業性資金に転用禁止です。
でも背に腹は代えられない経営者は、この処理をやってしまいます。
会社の事業性資金に使用しているので、返済は会社がします。利息も10%前後と高いので、元金返済と利息払いが資金繰りの負担になります。
金融機関が役員借入金の中に、個人ローンによる調達を発見した場合、財務評価は低くなります。
この状態は早く改善する必要があります。
利益が少なかったり、赤字が見込まれる際、経営者は「減価償却費を計上しない」という判断をすることがあります。
減価償却費は税法上、任意計上なので、税務署からは指摘されません。その分利益が上乗せされるので、良い気がします。
しかし、金融機関はこの処理を「利益を過大に計上している」として、厳しく見ます。
減価償却費の未計上額は、決算書の「別表16」で確認できるので、その金額を金融機関はマイナス補正します。
本来は経費処理できるのにしないことで、業績は厳しいのに税金負担が発生します。
減価償却費未計上は、金融機関から決算利益操作をしていると見られることもあり、融資判断にマイナスになります。
減価償却費の未計上額は、店舗を閉鎖したり、設備を廃棄したりする際、最終的には一括して特別損失「固定資産除却損」として表に出てきます。大幅赤字の要因になります。
税金負担が発生するのを避けるために、過度に決算期末に節税処理します。
備品・消耗品を買い込んだり、接待交際費をかさ上げしたり、役員保険で保険料を多額に払い込んだり、高額なリース契約を結んだりする処理です。
期末に経費で落とすということは、現金が多額に出ていくということです。資金繰りも厳しくなります。
ある程度は税金を払っていかないと、会社に現金は残りません。
決算期末に経費処理が増えるということは、最終利益が減るということです。
いくら「税金対策です」と説明しても、決算書に利益が少ないわけですから、融資判断にはマイナスになります。
以上、新規融資を困難にする財務処理を4つ紹介しました。
会社を守るのは経営者です。知らずにやってしまうこともありますので、気を付けましょう。
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