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外部環境分析はこれだけヤレ:事業デューデリ|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|④

私は、経営再建計画を作る際、外部環境分析をあまり重視しません。

かわりに、内部環境分析に9割の労力を使います。

外部環境分析

 

はじめに:外部環境分析をどう経営再建に活かすか?

前回の記事では、経営再建計画書(経営改善計画)作成の基盤となる事業デューデリジェンス(事業DD)において、自社の内部を徹底的に掘り下げる「内部環境分析」の重要性を解説しました。今回は、事業DDのもう一つの側面である**「外部環境分析」**に焦点を当てます。

外部環境分析は、自社を取り巻く市場動向や競争環境などを把握するために行われますが、その進め方や重点の置き方については、専門家の間でも様々な考え方があります。この記事では、経営再建に関わる皆様に向けて、外部環境分析の基本的な手法とその注意点、そして中小企業の実務において特に有効とされる「業界平均比較分析」というアプローチについて、経営再建計画書の書き方のステップとして分かりやすく解説します。

 

外部環境分析とは?:事業を取り巻く「外」の要因を探る

まず、外部環境分析の基本的な考え方を確認しましょう。

事業デューデリジェンスにおける位置づけ

外部環境分析は、事業デューデリジェンス(事業DD)における現状分析の一つです。会社の経営に影響を与える可能性のある「外部」の要因、すなわち自社では直接コントロールすることが難しい要因を分析対象とします。具体的には、市場の動向、競合他社の動き、技術革新、法規制の変更、社会経済情勢の変化などが含まれます。

代表的な分析フレームワーク(PEST分析、SWOT分析の機会・脅威)

外部環境分析を行うための代表的なフレームワーク(思考の枠組み)として、以下のようなものがあります。

PEST分析:

・Politics(政治・法規制): 法改正、規制緩和・強化、税制変更、政権交代など
・Economics(経済): 景気動向、金利、為替レート、物価変動など
・Society(社会・文化): 人口動態、ライフスタイルの変化、環境意識の高まり、世論など
・Technology(技術): 技術革新、新技術の普及(例: AI、IoT)、研究開発動向など これら4つの視点から、自社に影響を与える可能性のあるマクロな環境変化を洗い出します。

SWOT分析における「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」:

SWOT分析は、内部環境(強みStrength・弱みWeakness)と外部環境(機会Opportunity・脅威Threat)を整理するフレームワークです。このうち「機会」と「脅威」が外部環境分析に該当します。
・機会: 市場の拡大、競合の撤退、新たな技術の登場、規制緩和など、自社にとって追い風となる要因。
・脅威: 市場の縮小、強力な競合の出現、技術の陳腐化、規制強化など、自社にとって向かい風となる要因。

これらのフレームワークを活用することで、外部環境の要因を体系的に整理することができます。

 

外部環境分析の注意点と限界

外部環境分析は重要ですが、その進め方によっては時間と労力をかけた割に、経営再建に役立つ示唆が得られないケースもあります。

情報の羅列だけでは意味がない

政府統計や民間の調査レポートなど、外部環境に関するデータは数多く存在します。しかし、これらのデータを単に切り貼りしてレポートのページ数を増やしただけでは、「だから自社はどうすべきか?」という問いに答えることはできません。重要なのは、収集した情報が自社の事業に具体的にどのような影響を与えるのかを分析し、意味のある洞察を引き出すことです。

AIによる自動化と分析の質の低下リスク
近年、生成AIの進化により、「〇〇業界の外部環境について教えて」といった質問を投げかけるだけで、PEST分析やSWOT分析(機会・脅威)の項目をリストアップすることが容易になりました。これは効率化の面ではメリットがありますが、一方で、誰でも同じような分析結果しか得られなくなり、分析の質で差をつけることが難しくなるという側面もあります。表面的で一般的な分析に終始し、自社特有の状況を踏まえた深い洞察が得られないリスクに注意が必要です。

 

実践的な外部環境分析:「業界平均比較分析」のすすめ

一般的な外部環境分析の手法には上記のような注意点があるため、経営再建の実務においては、より具体的で実践的な分析が求められます。その一つとして、多くの専門家が有効性を指摘するのが**「業界平均比較分析」**です。

なぜ業界平均との比較が有効なのか?(客観的な立ち位置の把握)

業界平均比較分析とは、自社が属する業界の平均的な財務データと、自社の過去数年間の財務データを比較する手法です。

多くの中小企業経営者は、日々の業務に追われ、自社の財務状況を同業他社と比較する機会は少ないかもしれません。しかし、業界平均値という客観的なモノサシと比較することで、以下のようなメリットが期待できます。

・自社の財務的な強みや弱みが、業界内でどのレベルにあるのかを客観的に把握できる。
・経営者が自社の立ち位置を認識し、改善に向けた具体的な課題意識を持つきっかけになる。
・漠然とした危機感ではなく、数値に基づいた具体的な目標設定につながる。

この分析結果を経営者と共有することで、経営再建に向けた具体的な行動変容を促す効果が高いとされています。

分析の具体的なステップ

業界平均比較分析は、以下のステップで進めます。

ステップ1: 比較データの入手

業界平均データとして、公的機関などが提供している統計データが活用できます。代表的なものに、日本政策金融公庫が毎年調査・公表している**「小企業の経営指標調査」**があります。これは業種別に詳細な財務指標データがまとめられており、無料でアクセス可能です。(参照:日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査 ※リンク先は変更される可能性があります)

ステップ2: 比較する経営指標の選定(内部環境分析との連動)

業界平均データには数十種類の指標が含まれています。その全てを比較するのではなく、自社の経営課題に関連性の深い指標を5~6個程度選定することが重要です。
ここで活きてくるのが、前回の記事で解説した**「内部環境分析」**です。内部環境分析を通じて明らかになった自社の課題(例:粗利率の低さ、在庫回転の悪さ、人件費負担の重さ、借入依存度の高さなど)に対応する指標を選ぶことで、比較分析がより意味のあるものになります。適切な指標を選定できるかどうかが、この分析の品質を左右します。

ステップ3: 分析シートの作成と活用(フォーマット例)

選定した指標について、自社の過去3カ年程度のデータと業界平均値を並べて比較できるシートを作成します。単純な比較だけでなく、乖離の大きさや推移なども分析し、その要因を探ることが重要です。

業界平均比較分析シート

経営者の「気づき」と行動変容を促す効果

この業界平均比較分析の結果を客観的なデータとして提示することで、経営者は自社の状況をより冷静に認識し、「なぜ業界平均とこれほど差があるのか」「この指標を改善するためにはどうすれば良いのか」といった具体的な問題意識を持つことができます。これが、経営再建計画における具体的なアクションプランの策定や、その後の実行に向けたモチベーションにつながるのです。

 

まとめ:外部環境分析を経営再建に活かす視点

経営再建計画書における外部環境分析は、PEST分析やSWOT分析といったフレームワークを知っているだけでは不十分です。特に中小企業の再建スキームにおいては、一般的な市場動向を長々と記述するよりも、自社の立ち位置を客観的に把握し、具体的な改善行動につながる分析を行うことが重要です。

その意味で、「業界平均比較分析」は、内部環境分析の結果と連動させながら行うことで、経営者の気づきを促し、経営再建に向けた具体的な一歩を踏み出すための有効なツールとなり得ます。外部環境分析に多くの時間を割けない場合でも、この分析だけは実施する価値があると言えるでしょう。

 

経営再建計画書作成の参考情報

計画書のサンプル・テンプレートについて
経営再建計画書の具体的な書き方や構成の参考に、中小企業庁、中小企業活性化協議会、認定経営革新等支援機関などのウェブサイトで提供されているサンプルやテンプレート、手引きなどが役立ちます。これらを参照することで、計画書に盛り込むべき標準的な項目を理解することができます。

ただし、繰り返しになりますが、最も重要なのは自社のデューデリジェンス(現状分析)結果に基づいた、オーダーメイドの計画書を作成することです。サンプルはあくまで雛形として捉え、自社の実情に合わせて具体的な内容を検討してください。

(補足)事業DDの他のステップや支援制度について

この記事では外部環境分析に焦点を当てましたが、事業デューデリジェンスには、前回解説した「内部環境分析」や、次回解説予定の「SWOT分析」と「結論の導き出し」といったステップがあります。これら全体の流れを理解することが、質の高い経営再建計画書作成につながります。

(関連情報)
次回は、事業デューデリジェンスの集大成である「SWOT分析」と「結論(窮境原因と除去可能性)」の導き方について解説する予定です。

 

【参考記事】

内部環境分析のポイント:事業デューデリ|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|③

経営再建計画は「デューデリ」が8割|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|②

経営再建計画が必要な状態とは?|経営危機を乗り越える!経営再建計画の作り方|①

 

 

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