国会では最低賃金アップが議論されています。全国加重平均で1,000円を目指すとの議論が交わされています。
私が学生アルバイトだった30年前、時給800円とか900円だったので、それから今まで、特に中小企業の賃金は、ほとんど上がっていない気がします。賃金が上昇していないこと、それ自体がバブル崩壊後30年、日本低成長の証拠と言えます。
会社経営にとり賃金動向は、業績に直結します。
会社成長のため、今回はどうも避けて通れそうにない賃上げについて考えてみたいと思います。
【目次】
水道光熱費、燃料、生鮮食品、飲料、日用品、電車など通勤移動費。
これだけ物価が上がってくると、賃金が上がらないままでは社員の生活が苦しくなります。
一方、業界によっては人手不足のため、人材の争奪戦が発生しています。
転職サイトなども充実しているため、転職のハードルが下がっています。
上がらない賃金に不満を抱えた社員は、転職を選ぶかもしれません。
優秀な社員ほど、会社に残ってもらうことが難しくなります。
しかしながら、ない袖は振れません。賃上げするためには、賃上げ原資が必要です。
どのような対策が考えられるのでしょう?
【参考記事】企業が困っていること。人材確保と、採った人材を育成すること
原材料や外注費が上がってくると、自社でコスト吸収することが難しくなります。
その上、賃金にも配慮が必要です。
どうしても値上げに目を向けるしかありません。
直接消費者と商売をしている会社は、自社判断で値上げに踏み切れます。
一方、消費者との間にメーカーや元請けを挟んでいる下請け協力会社の場合は、メーカーや元請け会社と値上げを承諾してもらうための交渉が必要となります。
この交渉の難航が予想されます。
そのため、出来るだけ早く交渉に着手すること、交渉の材料を準備することが必要になります。
交渉の材料とは、具体的に数字の根拠です。
原材料費がこれぐらい上昇しており、会社利益を載せると、この金額値上げをお願いしますというような、根拠データです。
やにくもに値上げをお願いしても、販売先も抵抗してきます。
既存商品・サービスでは値上げが難しいこともあります。
そのとき、魅力的な新商品を開発したり、新しいサービスを提供したり、顧客・販売先が得られる便益を高めて利益を獲得する方法が有効です。
既存商品の一段上のプレミアム版を発表したり、VIP客に対して特別なサービスを提供して販売単価を上げるのです。
価格競争に陥らないステージで、勝負することができます。
こうした商品やサービスで利益を確保し、賃金に反映させるのです。
高級品や高級食材を提供している社員の賃金が低いという、ミスマッチを防ぎます。
一人当たりの売上高を高めることで、賃金に反映させる方法があります。
一人当たりの売上高を増やすとは、一人当たりの生産性を高めることと同義です。
退職等で自然減があった場合にも、補充を行わないと一人当たりに割り当てる賃金が増えます。
しかし補充を行わないと、社員からすれば今までより業務量が増えます。
同じ待遇で業務量が増えるだけなら、不満が出やすいのです。
そのため、デジタル化や機械化を積極的に検討して実施します。
デジタル化や機械化などで生産性を向上させたうえで賃金にも反映させられるなら、社員満足は高まるはずです。
今いる人材を有効活用し、一人当たりの生産性を高め、賃金を上げていくためには、社員の多能工化を進めることも一案です。
多能工化とは、一人の社員が様々な業務をすることです。
事務社員が営業をしたり、営業社員が製造の補助が出来たり、などです。
多能工化のメリットは、欠勤や欠員が出た時にフォローに入ることができたり、他の社員の業務に触れることで相手の立場が分かり人間関係が良くなったり、などが考えられます。
多能工化をするためには、ジョブローテーション(一定期間別の仕事を体験させる、仕事をローテーションさせること)の仕組みが有効です。
ジョブローテーションには、不祥事を防ぐ役割もあります。
不祥事が発覚するのは、たいていが担当者が交代した時だからです。
【参考記事】不祥事は企業の信用を落とす~未然防止のために気をつけたいこと~
あとは、他のコストを削減し、人件費に振り向ける方法があります。
役員報酬、接待交際費、地代家賃、リース料、広告宣伝費、交通費、支払手数料、などが削減の候補になるでしょう。
一つ一つのコストを、必要なものか不要なものか確認して、必要なものは残し、不要なものは削減します。
削減して浮いた費用を賃金アップの原資とするのです。
以上、これからおそらく避けることはできない「賃金アップ」について考えてみました。
参考にしていただければ幸いです。
賃上げ対応策について、色々書きました。
対策については、会社の置かれている状況、業界の特性などにより様々です。一概にマニュアルなどはなく、千差万別、臨機応変な対応が必要です。
「そうは言ってもなぁー」と、簡単に実施できないものもあるでしょう。
しかし、まずは自社に当てはめて想定してみる(今後を先取りして予測する)こと、やれることから試してみることが、大切だと私は思います。
実行しながら試行錯誤するのです。
スタートは、「やろうとすること、まずはやって試してみること」だと感じるのです。
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