【この記事で分かること】
・ 銀行が一番怒ること その理由
・ 銀行が一番嫌がること その理由(繰り上げ返済を嫌がる理由)
・ 銀行から信用されるために必要なこと
【この記事のポイント】
✔ 銀行が経営者に対して怒るのは、信頼関係を壊されたと感じたとき。
✔ 信頼を失う、または気分を害する行動として、「粉飾決算」「融資の繰り上げ返済」がある。
✔ 銀行員は、「融資を約束通りの条件で、期限通り返済してもらうこと」を好む人種である。そのため、「繰り上げ返済」に関して、経営者の感覚とズレることがある。経営者は、「なぜ銀行が繰り上げ返済に気分を害するのか」、理解できないことがある。
では、詳しく見ていきましょう。
支援先経営者の銀行対応に、同席することがあります。
そのとき、経営者の言動が、銀行の逆鱗に触れることがあります。
相手は銀行員なので、もちろん声を荒げたり、机をたたいたりはしません。
しかし、顔色がスッと変わったり、口調が冷淡になったり、かなり怒っていることが分かります。
今後の融資取引に影響を及ぼす可能性があります。
経営者のどのような行動が、銀行を怒らせたのでしょう。
今日は、「粉飾決算」、「繰り上げ返済」、2点について、お話しします。
銀行が怒るケース。
多いのが、決算書の不正がバレた時です。
決算書の数値を操作して、赤字を黒字に見せること、ないものをあるように見せかけることを、粉飾決算と言います。
逆に、納税額を抑えたい経営者が、黒字額を減らすことを逆粉飾と言います。税務署には目を付けられますが、銀行は特段問題視しません。
ただし、「本当は黒字なんです!」と説明しても、書類上赤字なので、融資は受けづらくなりますが。
銀行が怒るのは、実際は赤字なのに黒字に見せかけることです。
経営者が主導して、あきらかに「ごまかす」こともあります。
一方で多いのが、経営者に悪気がない粉飾です。
だから銀行から粉飾を指摘されても、「どこが悪いのだろう?」と、キョトンとしています。
以前、私が銀行交渉同席の場で、実際に聞いたコメントを紹介します。
企業の粉飾決算が、銀行に発覚した時です。
「社長、当行はこの正しくない決算書を信じて、融資させていただいたのですよね」
社長はキョトンとしています。
あきらかに銀行側と会社側に温度差があります。
銀行は、決算書を融資するための最重要判断材料として扱っています。
利益から融資金の返済財源をはじき出して、融資の可否を判断しています。
赤字であれば、融資の姿勢を厳しくするのです。
それなのに決算書の数値が正しくなければ、「何を信用すれば良いのか?」と不信感を募らせます。
先ほど、経営者に悪気がない、とお話ししました。
裏を返せば、「自社の決算書、財務に関して意識が薄い」、と言えます。
経営者に、「どのような財務処理が粉飾決算に該当するのか」、理解がありません。
どういう財務処理が粉飾に該当するのか、以下参考記事に詳しく記載していますので、ご確認ください。
【参考記事】銀行は中小企業の粉飾決算を警戒している ~意図した粉飾と意図的でない粉飾~
細かい疑問点は、経理担当者に確認すれば良いと思います。
ただ、会社の実態はどうなのか、正しい姿を経営者が捉えておくことは必要です。
そのためにはまず、経営者自身が決算書に対して関心を高く持つ姿勢が大切です。
決算書、財務に最終責任をもつのは、経理担当者でも税理士事務所でもありません。
経営者のあなたです。
粉飾発覚のとき経営者が、
「税理士が、、、経理担当者が、、、。任せていたのですが。」
この言葉を発しても、銀行員は責任転嫁にしか受け取りません。
もう一つ、銀行が怒ることに、融資のまたは繰り上げ返済があります。
繰り上げ返済とは、融資契約期間の途中で残金を一括で返済することです。
怒るというか、「残念な気持ちになる」というほうが、もしかしたら正しいかもしれません。
融資先企業が他銀行から融資を受けて、その資金で融資金を繰り上げ返済することがあります。
銀行員用語で融資の「他行肩代わり」と言います。
私も銀行員時代に「他行肩代わり」をされた経験があります。
長年のメイン取引先だったので、心情的に落ち込み、人間不信になりました。
経営者からは、「貸したお金が無事返ってきたのだから、良いことでしょう」と言われました。
これは、私の20年前の経験です。
この融資の他行肩代わりほど、銀行員の気持ちが波立つことはありません。
銀行側からすれば、「今までの取引の歴史すべてが否定された」ように感じるからです。
それでもやんごとなき事情があり、どうしても融資肩代わりを実行することがあるでしょう。
そのとき経営者には、「もう二度とその銀行とは取引しない」というぐらいの不退転の覚悟が必要です。
銀行員の前で、覚悟無く軽い気持ちで、「他行肩代わり」「融資の繰り上げ返済」を匂わすような言動をすると、銀行員は怒ります。
怒りの背景には、銀行員の恐れがあるのです。
銀行が怒る2つのケース「粉飾決算」「一括返済」を見てきました。
最後に、「銀行から信用されるとはどういうことか」、私の意見を言います。
銀行から信用されるために一番大切なことは、
融資を受けた当初の条件で、約束通り返済すること
他行肩代わりをせず、リスケジュールをせず。
つまり、返済の実績を積み上げることです。
返済が約束通り完了した暁には、銀行から「是非もう一度借りてください」と、お願いしてくるでしょう。
銀行から信用を得る人の特徴には、「言行の一貫性がある」「いつも変わらない」「長年継続している」などがあります。
それは信用される長所ではあるのですが、見方を変えれば、「柔軟性がない」「以前の自分の言動に縛られ固執している」「新しいことに挑戦しない」などの短所とも言えます。
銀行は、閉鎖的で古い体質の場合が多く、経営者の信用について「変わらないこと」を求めます。
取引銀行を変えない、同じ事業を継続して堅実に続ける、、、、。
しかしながら、企業にとって生き残るためには、「環境に合わせて臨機応変に変わっていくこと」「新分野に挑戦すること」は、大切なことです。
「君子豹変す(くんしひょうへんす)」「朝令暮改(ちょうれいぼかい)」
これらマイナスのイメージで使われる言葉ですが、経営者にとっては必要な資質なのかもしれません。
【関連記事】
融資肩代わりが会社に与える影響 ~銀行員が勧める理由、怒る理由~
この記事の様なことで悩んでいる経営者のあなた。お問い合わせはこちらから(暗号化対応をしているので、コメントやメールアドレスが外部に漏れることはありません。24時間コメント受付、返信は翌営業日以降になることがあります)。☟