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メインバンクとの距離感に悩む経営者 ~メインバンクとの融資取引確認法~

経営者から銀行融資に関して相談を受けます。

時々あるのが、「メインバンク以外から魅力的な融資提案を受けたが、どうしたら良いと思いますか?」

というものです。

そこで今日は、メインバンクとの付き合い方について、考えてみたいと思います。

 

 

メインバンクの定義

皆さんは、メインバンクについての定義がありますか?

どのような取引をもってメインバンクと位置づけしていますか?

✔創業時から一番付き合いが長い

✔事業展開について何でも相談している

✔売上代金受け取りや各種代金支払いなど、預金口座を使っている(銀行では「入出金パイプ」といいます)

✔預金残高が一番多い

✔融資残高が一番多い

色々考えられます。

一方、銀行側が、取引先をメイン取引と考える定義は明確です。

「融資残高が最も多い銀行が、メインバンクである」です。

【参考記事】メインバンクの概念について~メインバンクが企業にされて嫌なこと~

 

言葉としては出さないかもしれませんが、融資残高を基準として、「メインバンクが資産価値のある不動産担保を取るものだ」と考えています。

 

サブバンクは、なぜ良い提案を持ってくるのか

この記事では、メインバンク以外の取引銀行を「サブバンク」とします。

サブバンクが良い提案をもってくることがあります。

メインバンクより熱心に訪問してきて、「魅力的な金利の制度融資提案」や「ビジネスマッチング情報」をもってきたりします。

なぜならあなたの会社は、サブバンクから見て「魅力的で融資取引を拡大していきたい会社」だからです。

最終目的は、メインバンクの融資シェアを奪い、自身がメインバンクになることです。

 

良い提案に揺らぐ経営者

「運転資金が必要だな」

「そろそろ追加融資を申し込むかな」

「設備投資をしたいな」

感じていた時、サブバンクがタイミングよく提案してくると、経営者の気持ちは揺らぎます。

今回はサブバンクで融資を受けるか、、、。

その時考慮したいのが、「サブバンクで融資を受けることをメインバンクはどう感じるか」ということです。

【参考記事】銀行融資を申し込む際の注意点③~てんびんに注意~

 

サブバンクからの融資提案を受け入れることで、メインバンクとの関係にヒビが入る事態は避けたいものです。

「注意が必要な融資」があります。

メインバンクとの長年の関係性やその時の状況により、経営者がとるべき対応は違ってきます。

言葉は悪いですが本音で言うと、「メインバンクとの力関係」が影響します。

事業展開において、融資が必要ない。多くの銀行から融資提案があり、引く手あまた、、、。

メインバンクの気分を気にする必要がない会社があることも事実です。

このような会社は、サブバンクから融資を受けることを、メインバンクに事前説明しておく必要がないのかもしれません。

ただ多くのケースでは、事前にメインバンクの耳に入れておいたほうがよさそうです。

 

特に注意が必要な融資

特に注意が必要な場合をお話しします。

① サブバンクから融資を受けてメインバンクの融資を一部返済する場合(金利メリットを受ける目的で)

融資返済資金の出所を確認され、サブバンクの融資資金であれば、メインバンクは態度を硬化させます(銀行用語で「融資を肩代わりされた」と言い、銀行員が恐れ嫌悪していること)。

【参考記事】銀行融資を申し込む際の注意点⑤~メインバンクの融資に手を出さない~

 

② 設備投資をする際に受ける融資

設備投資に関して「メインバンクが融資するべきだ」というこだわりを持っています。補助金採択の場合の立替融資なども、注意が必要です。

 

③ 信用保証協会付融資(以下保証付融資と記載)

口には出しませんが、プロパー融資(銀行が保証を付けずにリスクを取り、直接する融資)でリスクを取っているメインバンクが、回収リスクが低い(倒産時に代位弁済してくれる)保証付融資の権利もあるはずだ、と考えているため。※保証付融資は、公的保証として中小企業の資金繰りを支えるうえで大切な制度です。ただ、メインバンクがプロパー融資でしっかり融資先を支えるという覚悟や融資姿勢があって、より有効化する制度と言えます。※

 

④ 銀行に私募債を引き受けてもらう時

私募債引き受けはプレスリリースで目立ちますし、引受手数料は銀行にとって重要な手数料収入になるため。私募債はメインバンクが引き受けるべきだと考えています。

 

上記のような場合は、メインバンクがどう感じるかを考慮し、よく検討して取り組むほうが良いでしょう。

 

メインバンクとの融資取引確認の方法

メインバンクの融資態度が気になります。

メインバンクとの融資取引において、経営判断をする際に参考にすればいいのは、

「自社とメインバンクとの取引関係はどうなっているか」のデータです。

確認の方法をお話しします。以下の手順です。

 

① 決算期の過去5ヵ年の融資残高を抜き出す

a.短期融資:手貸と当貸、b.長期融資:証貸、c.私募債、に分けると良いでしょう。融資を増やしているのか、減らしているのか、どのような融資姿勢かよく分かります。

 

② 抜き出したものうち、保証付融資の金額を把握する

プロパー融資と保証付融資の融資残高増減が分かります。

 

③ 不動産担保の評価額を出してみる

提供している不動産担保物件の「固定資産税納税通知書の評価額」を抜き出す。不動産担保にどれだけの価値があり、それに対してどれだけの融資が実行されているか分かります。

 

④ 定期預金など残高を動かしていない預金の残高を抜き出す

 

このように①~④を抜き出し、融資残高と銀行が負うリスクの関係を比較してみると、メインバンクがあなたの会社の融資に対して、どういう姿勢で取り組んでいるか、よく分かります。

そして同じ作業で、サブバンクの融資姿勢を見ることもできます。

数値データは、真実をあぶりだします。

 

良いメインバンクの条件

上記の方法で、メインバンクとの融資取引が確認できました。

会社が業績不振に陥ったとき。そしてその状態が長期化すると。

メインバンクの融資が「不動産担保」と「保証付融資」により十分に保全できていたら。

会社が倒産しても、銀行側に「とりっぱぐれ」がありません。

そうなると、銀行は費用対効果を考え、「経営支援にあまり手をかけないこと」を選択するかもしれません。

しかし声を大にして言いたいのですが、メインバンクの価値は「業績不振になった時の対応」にあります。

業績の良いときは、ほおっておいてくれてもいいのですが、業績が厳しくなった時に手を差し伸べてくれる銀行が良いメインバンクです。

追加融資をするということではありません。業績が悪くなると、追加融資は難しくなります。

そうではなく、経営再建に向けて助言してくれたり、方向性を提案してくれたり、、、。

次の人生が歩みやすいように、「ソフトランディングな廃業支援」という支援の仕方もでてくるかもしれません。

 

経営者はメインバンクとどう付き合うか

銀行員には頻繁に転勤や部署移動があります。

一方会社は、メインバンクと何十年にもわたる長い付き合いをしています。

若い支店長や担当者は、業績不振企業の「今」しか知りません。

冷たくされた経営者は、業績が良いときはあれだけお付き合いしたのに、、、。と不満を持ちます。

ここに意識のギャップがあるのですが、銀行にはシビアな部分があり、経営者は「手のひらを返された」となります。

経営者はどうすれば良いのでしょうか?

まずは、お話しした上記の方法で、メインバンクとの融資取引の現状把握が第一歩です。

そして、現状を把握したうえで、メインバンクと自社の方針を持って付き合っていくことが大切だと私は考えます。

 

まずは、できる範囲で始めませんか?

進め方や客観的な助言は、当事務所でお手伝いできますので、気軽にご相談ください。

当事務所のサービスで言えば、簡易経営診断サービスに該当します。

またはzoom簡易経営相談でも対応できます。

 

あとがき

経営診断報告書などで、金融機関別の融資残高推移表を作ることがあります。

コロナ禍を挟んで、会社の業績と金融機関融資残高の関係がよく分かります。

データは真実をあぶりだす、です。

政府系金融機関を含め、ゼロゼロ融資は終了しました。

コロナに加え、物価高が進行して、中小企業は苦しんでいます。

今後地域金融機関が、追加融資による資金繰り支援で地域経済を支えるのか、または融資機能以外で業績不振企業を支援するのか、注目しています。

 

 

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