【この記事で分かること】
・ メインバンク変更手続きの流れと上手なやり方
・ メインバンクを変える場合に失敗しやすいこと
・ メインバンクだけと取引することの弱点
本日のテーマは、「メインバンクの変更」。
そこに、どんなリスクや、メリット・デメリットが考えられるのでしょう。
今日は、一緒に考えてみたいと思います。
【目次】
あなたは、何をもってメインバンクと考えますか?
☑ 売上代金を入金したり、手形小切手を切ったり、引き落としを指定したり、預金・決済機能を集中させている
☑ 困ったときに最初に相談する
☑ 融資残高が最も多い
☑ 取引期間が一番長い
経営者ごとに色々な定義があると思います。
銀行の場合は、メインバンクかどうかの判断について、融資残高を最も重視します。融資の量が多いところがメインバンクだと思っています。
融資判断の際、銀行は自分たちがメインバンクかどうか、とても重視します。
そのため、緊急時にメインバンク以外(サブバンク)を頼ると、「メインバンクに相談してください」と、冷たく言われたりします(特に業績が厳しいとき)。
【参考記事】メインバンクの概念について~メインバンクが企業にされて嫌なこと~
企業経営にとって重要なメインバンクですが、経営者は以下の様な場合に、変更を決断することがあります。
☑ 代表者が後継者に変更した場合、心機一転、新しい銀行をメインバンクに変更したくなった
☑ 今のメインバンクに対して、融資対応やサービスなどに不満がある
☑ 今のメインバンクの先行きが不安(銀行間の合併や店舗統合で不便にならないか)
☑ いつも銀行都合のお願いばかりで、企業側にメリットのある提案が少ないから
☑ 自社の業績拡大により、銀行の規模感が合わなくなってきた
☑ 他の銀行が融資肩代わり提案で、いい案を提示してきた
などのケースが考えられます。
一気にメインバンクを変える場合ですが、通常以下の流れになります。
① 他の銀行から融資を受ける(同時に不動産担保を後順位に設定)
② メインバンク口座に資金を送金し、メインバンクの融資を返済する
③ メインバンクの不動産担保設定を抹消してもらう
④ 売上代金入金口座や手形小切手の振出口座、口座引き落としを新しいメインバンクに変える
これをされると、元のメインバンクは大ダメージを受けます。支店長や担当者は社内処分を受けるかもしれません。
メインバンクの必死の抵抗により、企業もある程度、返り血を浴びます。
どうしてもやむにやまれぬ事情が発生し、メインバンクを一気に変更したいとき。
融資を受けて融資を返済することを「融資肩代わり」と言いますが、融資肩代わりにおいて最も気をつけるのは、引き受け手の銀行がきちんと引き受けてくれるかという確認。
途中ではしごを外されると、目も当てられなくなります。
そうなると、メインバンクとの信頼関係も崩壊。今後の融資取引に影響が出る可能性があります。
そのため、きちんと融資稟議決裁が取れたのか、担当者だけでなくその上司にも確認しておく必要があります。
通常ここまでの手続きは、秘密裏に行われます。メインバンクへの情報漏洩は避けます。
経営者も気持ちがふらふらするのではなく、ここまできたら覚悟を決めねばなりません。
融資肩代わりを実行すると、元のメインバンクとは、以前の良好な関係に戻れることはないでしょう。
銀行は融資肩代わりされることを嫌がります。融資担当者とって、とてもつらいことなのです。そのあたりの事情を以下記事で説明しています。ご参考ください。☟
【参考記事】融資肩代わりに関する銀行の考え方 ~なぜ銀行員は、他銀行の融資を奪いたいのか~
メインバンクを変更するためには、メインバンクの融資を新しいメインバンクの融資で返済する必要があります。
このとき融資形態によっては、中途返済違約金が発生するケースや、中途返済を禁止しているケースがあります。
その場合、融資返済金をメインバンクに振り込んでも、中途返済を拒否されたり、違約金分の資金が足りなかったりする可能性があります。
融資を受けた際の「融資契約書」から融資条件を確認しておく必要があります。
メインバンクに「中途返済の手数料かかりますか?」と問い合わせることは、メインバンクに融資肩代わりを事前察知されることになりますので、おすすめしません。
新しいメインバンクの担当者などに確認してもらうと良いでしょう。
もしそのような条件が融資につけられていると、条件付きの融資は残したり、中途返済違約金分を上乗せした融資を受けたり、など対策が必要です。
新しいメインバンクと、しっかり打ち合わせしておきます。
融資肩代わりにより、メインバンクを変えてしまうデメリットは、取引の歴史が失われることです。
新しいメインバンクとは、これから歴史を作っていかねばなりません。
以前のメインバンクには、良いときも、悪いときも、一緒に乗り越えてきた取引の歴史がありました。
新しいメインバンクの支店長や融資担当者が転勤したら。会社の業績が悪化したら。
以前のメインバンクと同じように、支えてくれるでしょうか?不明です。
デメリット面もしっかり検討し、正しい経営判断が求められます。以下の記事に、メインバンク変更のデメリット面を考察しています。併せてご参考ください。☟
【参考記事】メインバンク変更のデメリットとリスク ~一時の感情や金利で動くと失うもの~
どうしてもメインバンクを変えたい、ただリスクや軋轢(あつれき)はできるだけ避けたい。
その場合、徐々にシフトしていく方法もあります。
☑ メインバンクの融資返済を進めていき、不要な追加融資を受けない
☑ メインバンクからの抵抗が少ない日本政策金融公庫や商工中金など、政府系金融機関の融資シェアを高める
☑ 設備投資などの新規融資の際、新しいメインバンクにしたいサブバンクと取引する
このような方法を時間をかけて実行していけば、できるだけ角を立てない形でメインバンクの変更が進んでいきます。
もともと取引があるサブバンクがメインバンクに変わるのですから、信頼関係もある程度は期待できます。
経営者が義理堅く、長年メインバンクだけ、1行取引している企業があります。
経営者は、こちらが大切にしているから、メインバンクも最大の配慮をしてくれているはずだ、、、
本当にそうでしょうか?
銀行17年+コンサル10年合計27年間の私の経験から、1行取引の会社に対して、銀行は油断が生じて、必ずしも良い提案をしていないケースも散見されます。
会社の業績が良いときはそれでいいですが、業績が悪くなってメインバンクに見放されたら、、、
複数銀行から多面的な金融情報を収集するため、銀行側にもプレッシャーを感じてもらい良い提案を受けるため、調達の選択肢を広げておくため。
あなたの企業の規模にもよりますが、民間銀行(含む信用金庫)から3行、政府系金融機関から1行、合計4~5行あたりと取引しておけば良いのかもしれません。
メインバンク変更後には、取引先(販売先、仕入先)への通知を以下の手順で実施します。
事前にではなく、情報漏洩を防ぐために、メインバンク変更手続きが完了後に行います。
①事前通知の準備
通知文の作成: メインバンク変更の理由、変更日、新しい銀行の情報を含む正式な通知文を作成します。
連絡先の確認: 取引先の最新の連絡先情報を確認し、通知が確実に届くようにします。
②通知の送付
メールや郵送での通知: 取引先に対して、メールや郵送で通知文を送付します。重要な取引先には、電話でのフォローアップも行います。
公式ウェブサイトでの告知: 必要に応じて、公式ウェブサイトや取引先専用のポータルサイトで告知を行います。
③変更内容の詳細説明
変更理由の説明: メインバンク変更の背景や理由を明確に伝えます。例えば、より良い条件を得るためや、企業の成長戦略の一環であることを説明します。
新しい銀行の情報提供: 新しい銀行の名称、支店名、口座番号、連絡先などの詳細情報を提供します。
④取引条件の確認
取引条件の維持: メインバンクの変更が取引条件に影響を与えないことを明確に伝えます。例えば、支払い条件や納期が変更されないことを保証します。
新しい振込先情報の提供: 新しい銀行の振込先情報を提供し、取引先がスムーズに支払いを行えるようにします。
⑤フォローアップとサポート
フォローアップの実施: メインバンク変更後、取引先に対してフォローアップを行い、問題がないか確認します。
サポートの提供: 取引先からの質問や懸念に対して迅速に対応し、必要なサポートを提供します。
以下の様なフォーマットで通知すると良いでしょう。
【メインバンク変更通知書フォーマット】
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