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融資金利が上がる|短プラ引き上げに社長はどう備えるか

日銀が7/31、政策金利を0.25%に引き上げました。

今までは0.0%~0.1%の間で誘導していたので、0.15%程度の引き上げになります。

早速、三菱UFJ銀行などメガバンクは、短期プライムレート(以下短プラと略す)を現状1.475%→1.625%まで0.15%引き上げることを発表しました。

次は地銀にも利上げの波が来ます。

今後あなたの会社にどのような影響があるのでしょう?

どのような備えをしておけば良いのでしょう?

近い将来あなたの会社にも、銀行担当者が融資金利交渉に訪れる可能性が高いのです。

 

短プラは融資金利の主な基準指標

短プラとは、銀行の1年未満の貸し出しの最優遇貸出金利のことです。

実務上は、短プラをベースに期間スプレッドを加味して、長期借入金の融資金利(短プラ+期間スプレッド)が決まっていることが多いのです。

メガバンク、地銀、第2地銀、信用金庫と銀行の規模によって、若干の違いはありますが、現在1.475%~1.725%の間で、長年据え置かれてきました。

日銀の統計資料を確認すると、2009年1月13日から現在まで14年以上、まったく変化がありません。

短プラ以外に主な金利基準指標として「東京銀行間取引金利  通称:TIBOR(タイボー)」があるのですが、中小企業の場合は多くが、短プラを基準に融資金利が決定されています。

短プラ + ○○%
短プラ - ○○%  など。

あなたの会社の融資金利が短プラを大きく下回っているのなら、TIBORが基準になっているのかもしれません。

ちなみにTIBOR(3カ月物)は、7/31→8/1の1日で、0.36727%→0.44727%へ0.08%上がりました。

 

長期借入金|融資金利の種類を確認する

まずあなたがやるべきは、自社の融資金利が何を基準に決定されているか確認することです。

①長期借入金(返済期間が1年以上の証書貸付)

融資を受けた時の契約書「金銭消費貸借契約書」の写しなどを確認します。証書貸付の場合は、以下2つのケースが多いでしょう。

・固定金利・・・制度融資で固定金利の場合は、短プラが上がっても最終返済期日まで金利に変化はありません。

・短プラ連動金利・・・短プラが上がれば、自動的にその上昇幅が上がります。

当初の融資契約書通りなので、自動的に金利は上がり、そのまま新しい融資返済表が送られてきます。

 

短期借入金|短プラの上り幅を確認する

対応が難しいのは、むしろ手形貸付や当座貸越などの短期借入金です。

短期借入金には、個別の金利交渉が発生します。

銀行も会社も14年以上利上げ交渉をしていないので、交渉現場は混乱が予想されます。

銀行が短期借入金の利上げ要請をしてきたら、短プラの引き上げ幅を確認します。

メガバンクにならい、今回は0.15%の短プラ引き上げが多いと予想されます。

銀行にとり政策金利は通常の商売で言えば「仕入」に該当します。0.15%の引き上げはやむを得ないのかもしれません。

問題は、短プラ上昇以上の金利引き上げを要請してくる場合です。

いずれにしろ回答はその場で即答とせず、「少し検討させてください」と、一旦回答を保留しましょう。

冷静に状況を整理する時間を確保します。

 

金利上昇 銀行はどう捉えているか

銀行は今回の金利上昇局面を、「14年ぶりに巡ってきたチェンス」と捉えるでしょう。

物価や人件費の上昇が恒常化してきたのですが、日銀がなかなか政策金利を上げなかったので、融資金利の引き上げ交渉には環境が整いませんでした。

やっと日銀が政策金利を上げ、「お墨付き」を得られたのです。

今後積極的に利上げ交渉に動き始めることが予想されます。

一方で、現場の若い担当者は、利上げ交渉を経験したことがありません。

役席以上の経験者が同席してくるかもしれません。

銀行は利上げを了承されるとホッとしますし、回答を保留されれば不安な気持ちになります。

 

金利を上げやすい会社、上げにくい会社

とはいえ、金利引き上げ交渉は一律0.15%利上げと言うわけではありません。

銀行は金利交渉の失敗で、融資シェアを失うことを恐れます。

 

【参考記事】融資肩代わりが会社に与える影響

 

金利を上げやすい会社と上げづらい会社があるのです。

私は15年以上前になりますが、現場の銀行員として利上げ交渉を最前線でやってきました。

また独立後は13年に渡り、中小企業のサポート役として銀行交渉を担ってきました。

その経験を踏まえ、以下の特徴を感じています。

【金利を上げやすい会社】

✔ 財務内容が悪い(連続赤字や債務超過)

✔ 取引銀行数が少ない(特にメインバンクとの1行だけ取引:選択肢が他になく、他銀行の情報収集もできない)

✔ 社長が財務に弱い、または財務に意識を向けていない(自身で情報収集せず、銀行の説明を鵜呑みにする)

【金利を上げづらい会社】

✔ 財務内容が良い(黒字、資産超過。金利を上げると融資シェアを落とされる)

✔ 取引銀行数が適度(メイン・サブの間に良い緊張関係がある、政府系銀行(日本公庫、商工中金)とつながりが深い)

✔ 社長が財務に関心をもって、情報収集をしている

 

利上げ交渉に向け社長が備えること

来たるべき利上げ交渉に向け、以下の様な準備が必要でしょう。

✔ 銀行別に取引内容を整理
・融資残高、融資金利(各銀行ごとの金利の違いを把握しておく)、年間返済額、返済期限、不動産担保

【参考記事】銀行融資と担保のバランス

・預金残高(特に定期預金の額)
・支払手数料の額(振込手数料や各種支払った手数料)
・保有してる銀行株式数
・お付き合いで協力した投資信託や保険の内容
・役員取引、従業員取引(給与振り込みの指定など)

例え融資金利が低くても、銀行はほかの部分で、あなたの会社から儲けを得ているかもしれません。交渉材料に使います。

✔ 保険・定期預金の解約、遊休不動産の売却で融資圧縮が可能かどうかのシミュレーション

【参考記事】銀行が繰り上げ返済を嫌がるのはなぜか?

✔ 会社の財務改善(時間はかかるが将来的に一番大切)
・現状自社の財務はどうなのか
・どこをどのように改善すれば良いのか
・どういう優先順位で実行するのか

【参考記事】アクションプランと数値計画:作成の流れと良い計画

昨年コロナ明けから、私のところには将来を見据えたアクションプランと数値計画を作りたいという依頼が増えています。

以上、「融資金利の引き上げに向け社長が備えておくこと」について、お話しました。

今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。

 

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ご覧いただきありがとうございました。

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