「うちの会社の融資金利、これって適正なのかな?」
「銀行はどうやって融資金利を決めているんだろう?その基準は?」
「金利交渉って、そもそも可能なの?どうすれば有利に進められる?」
会社の経営者や財務担当者にとって、銀行融資の融資金利は、資金繰りや損益に直接影響する重要な要素です。特に、近年の金利環境の変化(マイナス金利解除など)を受けて、短プラ(短期プライムレート)やTIBOR(東京銀行間取引金利)といった指標への関心も高まっています。
しかし、銀行が提示する融資金利は、単に市場金利だけで決まるわけではありません。そこには、会社の状況や銀行との関係性など、様々な要因が複雑に絡み合っています。
この記事では、ここ愛媛県をはじめ多くの中小企業をご支援してきたコンサルタント(元銀行員)として、銀行融資 金利基準の基本的な考え方、短プラやTIBORの位置づけ、融資金利(特に銀行の利益となる上乗せ幅)を決定する主な6つの要因、そして効果的な金利交渉のポイントについて解説します。
【目次】
まず、銀行が提示する融資金利(特に変動金利の場合)は、一般的に以下の2つの要素で構成されていることを理解しましょう。
※融資金利 = 基準金利 + 上乗せ幅(スプレッド)
基準金利とは?:短プラ・TIBORが代表例 (銀行融資 金利基準)
基準金利とは、融資金利のベースとなる市場連動型の金利です。中小企業向け融資でよく使われる代表的な基準金利には以下のものがあります。これが「銀行融資 金利基準」の基礎となります。
・短プラ (短期プライムレート): 銀行が最も信用度の高い企業に対して適用する**短期(1年以内)**の最優遇貸出金利。各銀行が独自に決定しますが、日銀の政策金利などの影響を受けます。
・TIBOR (タイボー – Tokyo Interbank Offered Rate): 東京市場における銀行間の資金調達コストを反映した金利。期間(1ヶ月物、3ヶ月物など)によって金利が異なります。
これらの基準金利は、金融情勢によって変動するため、これに連動する変動金利型の融資金利も上下します。
[関連記事:【2025年最新】銀行融資の金利上昇にどう備える?短プラ・TIBOR動向と中小企業の対策]
上乗せ幅(スプレッド)とは?:リスクやコストを反映
上乗せ幅(スプレッド)とは、上記の基準金利に加えて、銀行が個別の融資ごとに設定する利幅のことです。このスプレッドに、銀行の融資業務にかかる経費や、貸倒れリスクに対するプレミアム、そして銀行自身の利益が含まれます。
融資金利の交渉とは、多くの場合、この「上乗せ幅(スプレッド)」を引き下げる交渉を意味します。
では、銀行はこの「上乗せ幅(スプレッド)」をどのように決定しているのでしょうか? 主に以下の6つの要因が影響します。
1. 要因①:銀行の調達金利: 銀行自身が預金や市場から資金を調達するコスト。これが高いと、スプレッドも高く設定せざるを得なくなります。(一般的に、大手銀行の方が調達コストは低い傾向があります。)
2. 要因②:企業の信用格付け(財務内容): これが最も重要な要因の一つです。 銀行は決算書などの財務データ(定量情報)と、経営者の資質や事業の将来性など(定性情報)を基に、企業を格付けしています。格付けが高ければ(=信用リスクが低いと判断されれば)、スプレッドは低くなります。逆に格付けが低ければ、リスクプレミアムとしてスプレッドは高くなります。
3. 要因③:保全状況(担保・保証): 土地・建物などの物的担保や、信用保証協会の保証、経営者保証など、融資に対する保全(万が一の場合の回収手段)がしっかりしていれば、銀行のリスクは低減されるため、スプレッドは低くなる傾向があります。
4. 要因④:銀行間競争: これも非常に重要な要因です。 複数の銀行と取引があり、他の銀行からも良い条件の提案が期待できる場合、銀行は取引を維持・獲得するために、スプレッドを引き下げざるを得なくなることがあります(競争原理)。逆に、取引銀行が一行だけ(一行取引)の場合は、競争が働かず、スプレッドが高止まりする可能性があります。
[関連記事:なぜ銀行は他行の融資条件を聞く?複数行取引での情報開示]
5. 要因⑤:取引全体の収益性: 銀行は、融資だけでなく、預金、為替、手数料ビジネス、役員や従業員の個人取引など、その企業との取引全体から得られる収益を見ています。融資以外の取引で銀行への貢献度が高い場合、融資のスプレッドを低めに設定することで、取引全体を維持・拡大しようと考えることがあります。
6. 要因⑥:融資期間: 一般的には、融資期間が長くなるほど、将来の不確実性(リスク)が高まるため、スプレッドは高くなる傾向があります。(ただし、市場環境によっては短期金利の方が高くなる「逆イールド」現象が起こることもあります。)
これらの要因を踏まえ、融資金利、特に「上乗せ幅(スプレッド)」を引き下げるための効果的な金利交渉のポイントを考えます。
最重要ポイント:財務内容の改善
・結局はこれに尽きます。 決算書の数値を改善し、銀行からの信用格付けを上げることが、金利交渉の最も有効かつ本質的なアプローチです。黒字化、自己資本の充実、借入金の削減などを目指しましょう。(ただし、粉飾決算は絶対にNGです!)
[関連記事:銀行が嫌う決算書とは?追加融資が難しいケース]
複数行取引による競争促進
・取引銀行を一行に絞らず、複数の銀行と良好な関係を築いておくことで、自然な形で競争環境が生まれ、金利交渉を有利に進めやすくなります。
自社の強みと取引貢献度のアピール
・決算書に表れない自社の強み(技術力、顧客基盤、将来性など)や、預金・手数料など融資以外の面での銀行への貢献度を、具体的にアピールすることも有効です。
交渉のタイミングと準備
・交渉に適したタイミング: 業績が好調な時、新たな融資を申し込む時、既存の融資の期限が近づいた時などが考えられます。
・準備: なぜ金利引き下げを求めるのか(例:業績改善による格付け向上、他行からの好条件提示の可能性など)、具体的な根拠を用意して交渉に臨むことが重要です。「とにかく下げてほしい」という一方的な要求は効果が薄いです。
「急ぎの融資」は不利になる
・資金繰りに窮して「今すぐ融資が必要」という状況では、足元を見られ、金利交渉どころではなくなってしまいます。資金需要は早めに予測し、余裕をもって銀行と交渉することが大切です。
[関連記事:銀行員が嫌がる社長の態度とは?融資が遠のくNG行動]
銀行融資の融資金利は、短プラやTIBORといった「基準金利」に、企業の状況や銀行との関係性に応じた「上乗せ幅(スプレッド)」を加えたもの(「銀行融資 金利基準」)で決まります。このスプレッドを左右するのは、主に「①銀行の調達金利」「②企業の信用格付け」「③保全状況」「④銀行間競争」「⑤取引全体の収益性」「⑥融資期間」の6つの要因です。
効果的な金利交渉のためには、これらの要因を理解した上で、
・第一に、自社の財務内容を改善し、信用格付けを上げること。
・第二に、複数行取引などを通じて、健全な競争環境を作ること。
が基本戦略となります。
やみくもな金利引き下げ要求ではなく、自社の状況と銀行側の事情を踏まえた、根拠のある戦略的な金利交渉を心がけましょう。
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この記事が、貴社の融資金利への理解を深め、より有利な条件での資金調達、そして健全な経営の一助となれば幸いです。
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