全国に中小企業は380万9,000社(「平成26年経済センサス-基礎調査」)あり、そのうちの約1割程度が銀行からリスケジュールを受けていると言われています。
リスケジュール(以下リスケ)とは、貸出当初の条件変更による元金返済猶予のことです。銀行借入金の元金返済を当初条件より減額したり、0にしたりして、支払いを待ってもらう状態になります。
最初に銀行に対して約束していた条件を守れなくなることから、銀行に対しての信用が低下します。そして、原則新規融資が受けられなくなります。
元金支払いを猶予していること=融資をしていることと同じ=引き続き金融支援をしている、と銀行は考えています。
しかし、企業経営者から見ると、今まで受けられていたリピート融資が受けられなくなり、不満が高まります。
ここに銀行側と会社側の心理的なギャップが発生します。
リスケを受けると、企業経営者にも「当社は、銀行から新規融資が受けられないようだ。売上を上げたり、利幅を確保したり、コストをカットしたりして、経営を改善しないといけない」という危機感が出ます。
気をつけたいのは、リスケを受けていないけれど、実は「実質リスケ状態」の企業が多いということです。
皆さんの会社は、こういう状態ではないですか?
☑ 長期借入金の残高が、なかなか減らない
☑ 毎年同じ時期に新規の長期借入金を借りている(返した分だけ、また借りている)
☑ 設備投資をしていないが、長期借入金は頻繁に借りている
いずれかが当てはまれば、「隠れたリスケ状態」かもしれません。
これは、長期借入金の減った額を新たに長期借入金で借入しないと、資金繰りが回らないことを意味しています。
つまり、「表面的にはリスケは受けていないが、隠れたリスケ状態である」ということができます。
先ほど申し上げた通り、リスケしている企業であれば、銀行は厳しく接しますし、企業も危機感をもって経営改善に取り組みます。
しかし、隠れたリスケ状態はどうでしょうか?
平常時には銀行は、毎年同じ時期にリピート融資してくれるので、経営者には油断が発生します。「銀行とは長年に渡り良い関係ができており、これからも支えてくれるはずだ」。
はたしてそうでしょうか?
業績が悪化したら?ライバルが近くにできて売り上げが減少したら?自社組織がガタガタしたら?守り重視の銀行支店長が着任したら?
残念ながら銀行は、貴社に対しての方針を転換してくる可能性があります。
今までリピートしていた融資に応じてくれないかもしれません。保証人や担保の追加要請など、条件を厳しくしてくるかもしれません。
その時、経営者は思うのです。「銀行が手のひらを返した!!!」
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しかし経営者であれば、そういう状況もシュミレーションしておく必要があります。
銀行は預金者から集めた預金を原資に融資をしています。
最も困るのは、貸した融資元金が返ってこないことなのです。焦げ付きを発生させた支店長は、厳しく処分されます。そのため貴社の存続より、貸出金の回収を優先することだってあるのです。
つい先日まで、飲み会などでニコニコ接してくれていた銀行員が、貴社の業績悪化を察知すると、厳しい態度で接してくるかもしれません。
そんなものだと、頭の片隅に置いておきたいものです。
こういう事態を避けるため、経営者として準備しておきたいことは以下のようなことです。
①まずは自社の状態を正しく把握する
・資金調達方法は正しいか
・借りすぎていないか
・返済能力と返済額はマッチしているか など
②現状を把握し問題点があれば、対策を立てる
・現在の資金調達方法をどのようにシフトしていけば良いか
・新規設備投資など、今後はどのように資金調達をしていくべきか
・返済能力に見合った返済額にどう持っていくか など
③立てた対策を実施する
いずれにしろ、切羽詰まってからでは、実行したくてもできないことが多いです。余力のあるうちに、戦略を立案し実施することが大切なような気がします。
「隠れたリスケ状態」は、知らないうちにボディブローのように経営を圧迫し、問題が起これば一気に表面に出てくるのですから。
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