【この記事で分かること】
・ コロナ禍で中小企業の資金繰りを支えたのは何か
・ コロナ禍において民間金融機関がとっている融資行動
・ 今後民間金融機関に求められる融資姿勢
今月、リモート形式のセミナー講師として登壇することになっていまして。
色々資料を準備しているのですが、気になるデータを見つけました。
「コロナ禍で金融機関の融資姿勢がどう変わったか」が、分かる数値データです。
【目次】
金融機関融資には、プロパー融資と保証付融資があります。
プロパー融資とは、民間金融機関が独自に貸倒リスクを取る融資です。
一方、保証付融資とは公的機関である信用保証協会など政府保証を付ける融資です。
金融機関には、都市銀、地銀、第2地銀、信金などの民間系と、日本政策金融公庫、商工中金などの政府系があります。
ここではおおまかに、民間金融機関が貸し倒れリスクを取るプロパー融資と、貸し倒れリスクを政府がとる政府保証付融資に分けてお話しします。
政府保証付融資には、民間金融機関が行う信用保証協会付融資と政府系金融機関が行う融資があります。
ざっくりいうと、コロナ発生後の金融機関の融資姿勢は、政府保証付融資に依存していたと言えます。
特に地方銀行、第2地方銀行、信用金庫にはその傾向が強く出ています。
データで見てみましょう。
以下は、全国銀行協会と日銀が発表した数値データです。
コロナ禍の2020-2021の1年間で、地方銀行は10兆1,532億円、第2地方銀行は3兆3,867億円、信用金庫は5兆7,600億円の融資増加額を計上しています。
3業態合計で、約19兆3,000億円の融資増加(全国)です。
比較して、その期間に民間金融機関のコロナ融資実行額は、22兆437億円です(東京リサーチ調べ)。
コロナ融資とは、皆さんもよくご存じの金利・保証料の負担が少ない、いわゆるゼロゼロ融資です。
ゼロゼロ融資には政府保証がついています。貸し倒れになっても民間金融機関には、ほぼリスク負担はありません。
都銀がいくらかゼロゼロ融資を実行したかもしれませんが、融資規模(MAX6,000万円)から判断すると融資主体は、地銀、第2地銀、信用金庫と考えられます。
3業態融資増加額 19兆3,000億円 < ゼロゼロ融資実行額 22兆437億円
そうです、この間の融資増加額は、ゼロゼロ融資の実行によるものです。
個別金融機関の取り組みについてはよく分かりませんが、民間金融機関全体(全国)で見ると、ゼロゼロ融資の実行により、リスク負担があるプロパー融資が、リスク負担のないゼロゼロ融資に一部切り替わっている気配すら伺えます。
ゼロゼロ融資実行額 22兆437億円- 3業態融資増加額 19兆3,000億円 =2兆7,437億円
差額の2兆7,437億円はどこに行ったのでしょう?考えられるのは、
①都銀もゼロゼロ融資を実行した
②ゼロゼロ融資はプロパー融資の返済に回った
③ゼロゼロ融資は既存の保証付融資の返済に回った
④毎月の元金約定返済に充当された
などです。
特に②は、今まで継続的に受けられていた手形貸付など短期運転資金が期日に返済され、再度融資されず、そのあとゼロゼロ融資に切り替わっているようなケースが考えられます。
「社長、ゼロゼロ融資は金利も保証料もゼロですから、とりあえず借りておかないと損ですよ!」
と銀行員からの甘い声掛けの裏には、こうしたからくり(プロパー融資を分かりづらく間接的に回収)が隠れている可能性もあります。
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この間、政府系金融機関は積極的に、コロナ関連融資を実行しました。
データで見てみましょう。
2020-2021の1年間で、政府系金融機関(日本政策金融公庫、商工中金)は、13兆4200億円(日本銀行調べ)の融資増加額を計上しています。
その期間に政府系金融機関のコロナ融資実行額は、16兆8,962億円です(東京リサーチ調べ)。
特に民間のゼロゼロ融資が出揃うまでの2020年3月~5月までの間は、政府系金融機関のお世話になった企業が多かったのではないでしょうか。
上記で見てきたように、民間22兆437億円、政府系16兆8,962億円、合計38兆9,399億円のコロナ関連融資が実行されました(2021年5月時点;東京商工リサーチ調べ)。
政府が積極的に財政出動し、かなり重厚な資金繰り支援が実施されたことが分かります。
これが未曾有の危機においても、今現在、中小企業の倒産件数が抑えられている要因です。
ただ、政府もいつまでも政府保証で資金繰りを支えることはできません。財政出動にも限界があります。
今までは、緊急時であり、資金繰り支援は政府保証中心でやむを得ない部分があったかもしれせん。
地域民間金融機関は、「地域の中小企業を資金繰り面から支え、地域経済を発展させていく」というミッションを掲げています。
今、地域金融機関の姿勢として必要なのは、今後生き残る企業と、事業継続が難しい企業を見極めること。
生き残り可能と判断した企業には、ビジネスマッチングやコンサルティングを通じた本業支援により業績改善を後押しします。
反対に、継続が難しいと判断した企業には、出来るだけ影響が少ない形で廃業を支援していく(廃業後経営者や社員が路頭に迷わないように)ソフトランディングの廃業支援が必要です。
融資先企業の事業継続の可否を判断するためには、融資先企業の事業をよく理解することや、業界の今後の展望を予想することなど、財務諸表(定量面)に出ていない定性面の理解が大切になります。
いわゆる事業性評価です。
前向き支援、廃業支援、いずれの過程でも、資金面でのバックアップが必要です。
新事業展開を行うにも、廃業準備で色々なことを整理するためにも、いずれも資金がいるからです。
その時に、民間金融機関自身がプロパー融資でリスクを取り、取引先の資金繰りを支えていけるかどうかが、地域経済・中小企業、再生のポイントとなります。
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