決算書は黒字なのに、自社の資金繰りが上手く回らないとき。
一つの原因として、銀行借入金のバランスが崩れている可能性があります。
判定方法と、対処法について、簡単に説明します。
手元に過去3期分の自社の決算書と、銀行借入金の返済表をご用意ください。
長期借入金とは、借入期間が1年以上で、原則毎月返済が発生している借入金です。
まず、決算書の損益計算書の一番下「税引後当期純利益」を見ます。
(ただし、固定資産除却損や固定資産売却益など、その期だけ特別に発生した金額(特別利益や特別損失)は除いてください)。→具体的には、特別利益は当期純利益からマイナスし、特別損失は当期純利益にプラスします。
次に、一般費及び販売管理費および製造原価報告書の「減価償却費」を抜き出します。
(ただし減価償却費の中に、リース資産の減価償却費がある場合は、その金額を除いてください→リース資産の減価償却費はキャッシュアウトを伴うため)。→リース資産の減価償却費は、決算書別表16の「リース期間定額法に償却額の計算に関する明細書」に数値が記載されています。
「税引後当期純利益(特別損益修正後)+減価償却費(リース資産償却費控除後)」が長期借入金の返済財源です。
これを過去3期分計算し、 「税引後当期純利益+減価償却費」の平均値を出します。
続いて、銀行借入金の返済表を見ます。
毎月の返済額には、元金と利息が分かれて、記載されているはずです。
利息は無視(支払利息としてすでに経費処理されているため)して、元金部分だけを見ます。毎月元金に12か月をかけた部分が年間元金返済額です。
この作業を借入の本数分(5口あれば5口分合計する)だけ、行います。
出てきた 「税引後当期純利益+減価償却費」の平均値と、年間返済額を比較します。
例)
当期純利益(特別損益除く)+減価償却費(リース資産除く)の3年平均値 → 1500万円
年間元金返済額合計 → 1800万円
この場合は、返済財源より返済額が300万円多いため、バランスが崩れています(1500-1800=▲300万円)
その結果、借入金を返済するための、新たな借入が発生します(または預金の取り崩し)。
これが、設備投資をしておらず、赤字でもないのに、新規の融資が必要になる理由です。
何らかの原因で新規融資がストップした場合、資金繰りが詰まってしまう状態です。
短期借入金とは、原則1年以内に返済する借入金です。
手形貸付や当座貸越があり、書き換え書き換えで延長していることも多いと思います。
直近決算書の貸借対照表を見て判定します。運転資金額を計算するのです。
資産の部から、売掛金、受取手形、棚卸資産(在庫、商品、仕掛品、仕掛工事など)を抜き出してプラスします。
(ただし回収不能な売掛金、陳腐化して販売できない不良在庫などは除いてください)。
負債の部から、買掛金(仕入れに関する支払)、支払手形を抜き出します。
計算式は、(売掛金+受取手形+棚卸資産)-(買掛金+支払手形)です。この算式で運転資金額が出ます。
※在庫をもたない労働集約型の事業(医療・介護事業、サービス業、情報通信業など)は、簡易的に月間売上の2か月分を運転金額額と判定することもあります。
例)
売掛金 1500万円
受取手形500万円
棚卸資産1000万円
買掛金800万円
支払手形500万円
(1500+500+1000)-(800+500)=1700万円・・・必要運転資金額
この時、短期借入金が1000万円なら少なすぎ、短期借入金が3000万円なら多すぎです。
(少なすぎる)
1000 < 1700 → あと700万円短期借入金の枠がある
(多すぎる)
3000 > 1700 → 1300万円短期借入金を借りすぎている
いずれもバランスが崩れています。
ただし、少なすぎても、長期借入金がなかったり、長期借入金の返済額が返済財源の中に収まっていれば、特段問題ありません。必要運転資金を、預金などその他の資産で手配できているということだからです。
多すぎる場合は、本来長期借入金で借りるべきを短期借入金で借りているか、赤字が短期借入金として張り付いているか、どちらかの可能性があります。
(理想形)
1700(必要運転資金額) = 1700(短期借入金残高)
上記のように借入金のバランスが崩れていると、資金繰りに悪影響がでます。
借入金のバランスを改善する方法を考えてみたいと思います。
①長期借入金
☑ 銀行と交渉し、長期借入金の本数をまとめて、年間元金返済額を削減する。その際には、返済財源内に返済額が収まるようにする。
☑ 短期借入金に運転資金枠(運転資金借入に空きがある場合のようなケース)があれば、銀行と交渉し、長期借入金→短期借入金にシフトする。
☑ コスト削減し、利益の額を上げる。
☑ 遊休不動産を処分し、借入金自体を削減する。
②短期借入金
☑ 少なすぎる場合は、必要運転資金の算式から運転資金必要額をはじき、枠あき部分の短期借入金を申し込む(セットで長期借入金を削減)。
☑ 多すぎる場合は、長期借入金の返済財源に空きがあれば、長期借入金に切り替える(こうすると、借入金総額の削減が進む)。
☑ 売掛金の回収を早めたり、在庫を圧縮したりして、運転資金の額を減らし、余剰資金で短期借入金を削減する。
☑ 遊休不動産を処分し、借入金自体を削減する。
いずれの方法を実施するにしても、まずは自社の現状を分析してみることが必要です。
自社の銀行借入金バランスは崩れていないか、返済能力は適正か、改善はどうすれば良いか、不明点があれば、お手伝いしますので、下記連絡フォームからご連絡ください。
簡易財務診断【無料版】はこちら
【この問題に対処する担当コンサルタント】プロフィール
【支援実績】今まで支援した内容
【お手伝いの際の考え方】【代表挨拶】お手伝いの際の考え方
【この記事の問題を解決するための支援メニュー】
【関連記事】
財務バランスを改善し、資金繰りを安定化させたい方、お問い合わせはこちらからどうぞ (24時間コメント受付、ただし返答は翌営業日以降になることがあります。暗号化対応をしているため、メッセージやメールアドレスが外部に漏れることはありません)。☟