コロナの影響による業績不振や、原材料費の上昇、人材確保のための人件費増加、、、。
中小企業にとって、赤字になりやすい経営環境が続いています。
私はコンサル開業後、数多く赤字会社の立て直しのお手伝いをしてきました。
その中で感じるのは、社長が正しく赤字原因を把握できていない、ということです。
特にたたき上げの現場に強い社長にその傾向があります。
営業現場では強烈な力を発揮し業績をけん引しますが、財務に少し弱い。
どういうことか?一緒に見ていきましょう。
【目次】
会社を取り巻く環境は、赤字になりやすい状況です。
赤字になった社長は、出来上がってきた決算書を見て首をかしげます。
材料代や仕入コストを抑えたり、価格交渉をして利幅を改善したり、経営努力をしてきたはずだ。
小売や卸なら取引先別採算、建設なら工事別・プロジェクト別採算、運輸なら車両別採算、飲食なら店舗別採算、、、。
いつもリストは確認しているが、採算割れはしていないはずだ。
しかし、決算報告書は赤字。
なぜでしょう?
理由は間接経費が意識から抜け落ちているからです。
現場に直接関係するのが、直接経費。
現場人件費、原材料費、外注費、工場や店舗に関する燃料費、水道光熱費、機械設備の修繕費などです。
現場に直接関係しないのが、間接経費。
この間接経費が頭から抜け落ちやすいのです。
間接経費とは、事務所の家賃、事務所の光熱費、通信費、広告宣伝費、販売促進費、交際費、旅費、営業車のガソリン代、士業やコンサル会社への支払手数料、リース代、会員費、事務所や営業車両に関する減価償却費、社会保険料の会社負担分、事務員人件費、そしてあなたの役員報酬などのことです。
加えて、「金融機関借入金の支払利息」も間接経費になります。
ちなみによく勘違いされるのですが、「金融機関借入金の返済元金」は、決算書のうえでは経費にはなりません。
事情は以下の記事に詳しいので、参考にしてください。
【参考記事】銀行借入金返済額は損益計算書(PL)には記載されない。では決算書のどこを見れば良いか?
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
間接経費は、現場に強い社長の頭から抜け落ちやすくなります。
現場で仕事をしていると、間接経費はあまり関係がなくなるからです。
材料費、外注費、現場社員の人件費は、いつも現場で接しているので、気になっています。
しかし間接経費には、現場で接することはありません。
悩ましいのは、間接経費は固定費であることが多いことです。
つまりあまり変化しない。
業績が良くても悪くても、一律に必要となります。
家賃、手数料、支払利息、減価償却費、事務員の給与、あなたの役員報酬。
売上は落ちても、変わらずお金は出ていきます(減価償却費だけはお金が出ていきませんが、損益では経費としてコスト計算されます)。
減価償却費については、以下の記事が詳しいです。参考にしてください。
【参考記事】減価償却とは~中小企業経営者が知っておくべきポイントを簡単に解説!~
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
コロナは確かに大変でした。
しかし一方で政治が素早く対応したため、コロナ融資(ゼロゼロ融資)や各種助成金も手厚く準備されました。
コロナだから仕方ない、そういう雰囲気が社会にまん延。
今までなかなか融資を受けられなかった会社も、コロナ禍においてセロゼロ融資は受けられました。
資金手当てで一息ついて、事業は継続できたのです。
そこで、経営環境変化に危機意識を持ち経営を改善した会社と、危機感なくそのまま改善ぜず進んだ会社に分かれました。
5類変更により平時に移行したとみなされて、金融機関は今、融資姿勢を厳しくしています。
そのため、追加融資を受けることが難しくなった会社は、苦しんでいるのです。
以下の記事でそのあたりの事情を説明しています。
【参考記事】コンサル現場で感じる銀行の融資態度変化 ~ポストコロナの銀行融資をどう対策するか~
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
特に業績悪化局面に言えることです。
現場に強い社長は、粗利を意識しています。
粗利とは、売上から現場経費や商品仕入れを引いたものです。
現場を重視する社長に密接に関わっています。
粗利を重視すれば、利益は取れるはずだと考えます。
そのため粗利のもととなる売上増加に目を向けます。
売上が1,000で粗利が30%の場合、利益を30上げるために必要な売上増加は100です。
【売上を100増やす;売上高10%アップ】
1,000売上→300粗利→間接経費250→利益50
☟
1,100売上→330粗利→間接経費250→利益80
(利益は50→80に30増えた)
一方売上を伸ばす代わりに間接経費を30削ると、利益は同じく30上がります。
【売上同額で間接経費を30減らす】
1,000売上→300粗利→間接経費250→利益50
☟
1,000売上→300粗利→間接経費220→利益80
(利益は50→80に30増えた)
どちらが現実的で取り組みやすいでしょうか?
多くのケースで、間接経費を削るパターンの方でしょう。
間接経費を削減するための最初のステップは、間接経費に関心を持つことです。
決算書で言えば、「一般費及び販売管理費の内訳書」です。
私は赤字会社のコンサルティングに入ると、以下の様なアプローチを採ります。
過去5年間の決算報告書を引っ張り出してきて、数値をExcelシートに抜き出します。
以下の様なシートに数値を入力します。
【コスト確認シート;実績確認用】(表のうえでクリックすると拡大します)
特に気になる間接経費は、総勘定元帳(経費の1年間の内訳が記されてる元帳)で内容を確認します。そして内訳の欄に記載してみます。
例えば、リース料(賃借料)の内訳は何か、支払手数料はどこに払ったのか、雑費の内訳は何なのか、など細かく把握します。必要なものと不要なものを理解します。
実績を抜き出したら、次に今後5ヵ年の目標を以下のExcelシートに入力します。どのコストをどれぐらい削減するのか、社長とディスカッションしながら、目標値を作成します。
【コスト確認シート;目標入力用】(表のうえでクリックすると拡大します)
このように具体的に動いて確認し戦略を練って、間接経費を削減していくのです。
もちろんその過程では、増やしたほうが良い経費も出てくるかもしれません。
【参考記事】販売管理費の使い方を考える~削る経費、削らない経費~
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
また、コスト削減目標は、数字合わせでは効果や実現性がありません。具体的手法が必要です。以下の記事に詳しいです。参考にしてください。
【参考記事】営業利益がマイナス。会社を立て直すコスト削減の具体的方法
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
以上、今日は「現場重視の社長が陥りやすい財務の罠」について、お話ししました。
今後の貴社の財務安定のために、お役に立てていただけますと幸いです。
社長がいつ行っても会社にいない。
朝から晩まで現場に出ている。
全国の営業現場を出張で飛び回っている。
一見、良さそうですが、管理面でリスクが生まれることがあります。
現場活動と会社管理業務のバランスが大切なのだと思います。
財務に関心が薄いと、業績悪化の場面で後手に回ります。
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