【この記事で分かること】
・ 損益計算書に銀行借入金返済額は無いこと
・ どうやって返済額を見つけたら良いか?
・ 銀行借入金は、どこに消えてしまったのか?
この記事のポイントは以下3点です。
☑ 経営者は、銀行借入金元金返済を経費と勘違いしているので、損益計算書で探す→経費ではないので、見つからない
☑ 一方、支払利息は経費なので、損益計算書の営業外損失に記載されている。借入金元金はお金の貸し借りであり、貸借対照表(長期借入金、短期借入金)にしか記載されていない。しかし、1年分の貸借対照表には、期末の残高が記載されているだけで、返した額(減少した額)は分からない
☑ 銀行借入金返済額を探すためには、2年分の貸借対照表で増減を比較、もしくは、銀行借入金の返済表の確認が必要である
詳しく見ていきましょう。
【目次】
自社の銀行借入返済金、毎年どれぐらい返済しているのか、気になることがあります。
どれどれ決算書を確認してみるか、
決算書を眺めてみても、まず分かりません。ではどのように理解すれば良いのでしょうか?
説明していきます。
銀行借入金の返済額を確認したい経営者の行動は、だいたい以下のような感じです。
まず、損益計算書を見てみます。
売上、製造原価経費、販売管理経費、営業利益、支払利息、経常利益、、、。
借入金の返済が出ていません。
製造原価報告書か、販売管理費の中に記載しているかも。。。中身を目を凝らして見てみます。
それでも記載が無いようです。
なぜ経営者が、損益計算書を確認するかというと、「銀行借入返済金」を「経費」と勘違いしているからです。
銀行借入返済金は、税務上、経費ではありません。しかし、現金としては出ていくので、経費のような気がするだけです。
経費ではないので、収益と経費が記載されている損益計算書には、記載されていません。(一方、利息は経費なので、記載されています)。
では確かに借りた銀行借入金は、どこにいってしまったのでしょう?
例えば3,000万円借りて2,000万円を設備投資に、1,000万円を商品仕入に使ったとします。
設備投資の2,000万円は、一旦、固定資産として貸借対照表に計上され、そこから毎年減価償却費として、損益計算書で経費処理されます。減価償却した同金額が、固定資産から減少します(下の図の場合;毎年200万円減価償却して、毎年200万円固定資産が減少する)。
商品仕入の1,000万円は、一旦、棚卸資産(在庫)として貸借対照表に計上され、売れれば売上原価として、損益計算書で経費処理されます。同金額が棚卸資産(在庫)から減少します(下の図の場合;売上原価1,000万円経費処理、同時に在庫が1,000万円減少する)。
このように、銀行借入金は形を変えながら、費用として経費処理されているのです。
形が変わって経費処理されているので、あなたが損益計算書を探しても、見つからないのです。
先ほど「利息は経費である」とお伝えしましたが、その理由も確認しておきましょう。
前提として支払利息とは、金融機関からの借入金などに対してかかる金銭のことをいいます。つまり、債権者に支払うべき一定の費用のことですね。
こちらは、あくまでも『費用』であって『負債』ではありません。
そのため支払利息は、利益と損失を管理するため損益計算書(PL)にて確認できる『経費』となります。
もちろん借入金自体は、返済義務のある負債なので経費ではありません。
☑借入金:負債のため貸借対照表(BS)で処理される
☑支払利息:経費のため損益計算書(PL)で処理される
というのが基本的なルールです。
さて、本題に戻りましょう。
借入金の確認方法をいくつかのパターンに分けて解説していきます。
次に貸借対照表を見ます。
ここには、固定負債の部門に、「長期借入金」という項目があります。
でもこれは、決算時点での残高です。やはり借入金返済金額は分かりません。では、どうすれば分かるのでしょう?
確認している決算書のもう1年前の決算書を用意します。そして2期分の決算書の貸借対照表「長期借入金」の残高を比較します。
例えば、1年前は2,000万円、最近の決算で1,400万円であれば、1年間で600万円返済した、ということです。
毎月に直すと、600万円÷12か月=50万円。50万円が毎月の返済額と考えることができます。
ただし、この方法には弱点があります。
決算の途中で、追加借り入れをした場合、毎月の返済額が分からなくなることです。
例えば、上記のケースでは、半年前に500万円借りていたとします。すると、1年間で返済した金額は、先ほど理解した600万円ではなく、1,100万円になります(2,000万円+500万円-1,400万円=1,100万円)。こうなると、期の途中から返済が始まった部分があるため、分かりづらくなります。
実はもう一つ方法があります。この方法は、決算書を使いません。
銀行から送られてくる借入金返済表を確認することです。借入金返済表には、毎月の返済額が記載されています。
元金返済と利息支払い、それぞれの内訳、その合計額が記載されているはずです。
元金返済の部分が、決算書に記載されていない、「銀行借入返済額」です。
もし長期借入金が5口あれば、5口分の返済元金を合算したものが、貴社の銀行借入金返済額の実態なのです。
(例)ある会社の銀行借入金返済表が以下と仮定
№ 銀行名 月額元金 月額利息 月額元利金合計(単位;円)
① A銀行 100,000 5,000 105,000
② B銀行 200,000 10,000 210,000
③ C銀行 150,000 7,500 157,500
④ D銀行 100,000 5,000 105,000
⑤ E銀行 200,000 10,000 210,000
合計 750,000 37,500 787,500
この場合は、月額元金合計750,000円×12か月分=9,000,000円が、1年間の銀行借入金元金返済額となります。
そして、1年間の銀行借入金返済額が、年間返済財源(利益と減価償却費など)より多ければ、資金繰りが厳しくなり、「黒字なのになぜかお金が不足する」と、頭を抱える状態になります。(銀行借入金と返済財源の関係については、以下の参考記事を参照ください)。
【参考記事】長期借入金の返済能力はどう考えればいい?計算シートつき記事で自社をチェック
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以上、銀行借入金の返済額確認方法について、お話ししました。
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