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【銀行借入金】返済額は損益計算書のどこ?見つけ方と勘定科目の誤解(2025年版)

「会社の銀行借入金、年間でいくら返済しているか決算書から知りたいけど…」

「損益計算書(P/L)のどこを見れば、借入金の返済額が載っているの?(借入金 損益計算書 どこ?)」

「借入金の返済って、経費じゃないの?」

経営者や経理に慣れていない方から、このようなご質問をよくいただきます。毎月銀行へ返済しているにも関わらず、損益計算書をいくら眺めても「銀行借入金の元本返済額」が見当たらない。不思議に思われるかもしれません。

この記事では、ここ愛媛県をはじめ多くの中小企業をご支援してきたコンサルタントとして、なぜ銀行借入金の元本返済が損益計算書に記載されないのか(「借入金返済 勘定科目 損益計算書」が存在しない理由)、では実際に年間いくら返済しているのかを把握する具体的な方法、そしてこの理解がなぜ資金繰り管理に重要なのかについて、分かりやすく解説します。

決算書を見ながら借入金返済額を探すイメージ

なぜ銀行借入金の「元本返済」は損益計算書に無いのか?

多くの方が最初に確認しようとする損益計算書(P/L)。しかし、ここに銀行借入金の「元本返済額」は記載されていません。その理由は、会計上のルールにあります。

費用(経費)と負債(借金)の違い

損益計算書は、**会社がその期間にどれだけ儲けたか(または損したか)を示す計算書です。構成要素は、売上などの「収益」と、その収益を得るためにかかった「費用(経費)」です。

一方、銀行借入金の元本返済は、「借りたお金を返す」という行為であり、「負債(借金)の減少」**にあたります。これは、収益を得るために使った「費用」とは根本的に性質が異なります。

「借入金返済 勘定科目 損益計算書」は存在しない理由

上記の理由から、損益計算書には、銀行借入金の元本返済を示す勘定科目は存在しません。借入金 損益計算書 どこ?」と探しても見つからないのは、元本返済が「費用」ではないからです。元本返済は、貸借対照表(B/S)の負債(銀行借入金)を減少させ、会社の現金(資産)を減少させる取引であり、損益には直接影響しません。(※ただし、キャッシュフロー計算書には「財務活動によるキャッシュフロー」として記載されます。)

一方、「支払利息」は損益計算書に記載される

ここで注意したいのは、**銀行借入金の「利息」部分は費用(経費)であるという点です。利息は、お金を借りるために支払うコストですので、損益計算書の「営業外費用」**の区分に「支払利息」として計上されます。

つまり、毎月の返済額のうち、利息部分は損益計算書に、元本部分は損益計算書には載らない、ということです。

・銀行借入金 元本返済: 負債の減少 → 損益計算書には記載されない
・銀行借入金 支払利息: 費用 → 損益計算書の営業外費用に記載される

では、借りたお金(銀行借入金)はどこへ消えた?

「元本返済が費用でないなら、最初に銀行から借りたお金は、会計上どこに行ってしまったの?」という疑問も湧くかもしれません。

資産への変換と費用化のプロセス

銀行から借りたお金(銀行借入金)は、多くの場合、以下のように形を変えて会社の資産となり、その後、徐々に費用化されていきます。

1. 銀行から融資実行: 会社の現金・預金が増加(資産増)、同時に銀行借入金が増加(負債増)。
2. 資金の使途:
‣ 設備投資: 機械や建物を購入 → 現金・預金が減少し、固定資産が増加(資産内での移動)。
‣ 商品仕入: 商品を仕入れる → 現金・預金が減少し、棚卸資産(在庫)が増加(資産内での移動)。
3. 費用化:
‣ 設備投資分: 固定資産は、減価償却費として耐用年数にわたって損益計算書で費用計上される。
‣ 商品仕入分: 在庫は、販売された時点で売上原価として損益計算書で費用計上される。

このように、借りたお金そのものが直接費用になるのではなく、それが形を変えた資産が、減価償却費や売上原価といった形で、時間をかけて損益計算書に費用として反映されていくのです。だから、損益計算書に「銀行借入金返済」という項目は見当たらないわけです。

(「銀行借入金はどこにいった?」図)
銀行借入金が資産に変わり費用化される流れ

年間の銀行借入金「元本返済額」を見つける2つの方法

では、実際に年間いくら元本を返済したのかを知るには、どうすれば良いのでしょうか? 主に2つの方法があります。

方法①:貸借対照表(B/S)の比較【注意点あり】

2期分の決算書を用意し、それぞれの貸借対照表の「短期借入金」と「長期借入金」の期末残高を比較します。(※一年以内に返済期限が到来する長期借入金は「短期借入金」または「一年以内返済長期借入金」として流動負債に表示される点に注意)

もし、その期間中に新たな銀行借入が全く無ければ、 前期末の借入金合計額と当期末の借入金合計額の差額が、年間の元本返済額となります。

・例: 前期末借入金合計 2,000万円、当期末借入金合計 1,400万円 → 年間元本返済額 600万円

(「毎月の返済額が50万円」の図)
貸借対照表比較による年間返済額の推定例

・弱点(注意点): この方法の最大の弱点は、期間中に新たな銀行借入を行った場合に、正確な返済額が分からなくなることです。

‣ 例: 上記の例で、期中に500万円の新規借入があった場合。
■実際の年間元本返済額 = 期首残高 2,000万円 + 新規借入 500万円 – 期末残高 1,400万円 = 1,100万円 となり、単純な差額600万円とは大きく異なります。

(「途中で借入」の図)
期中借入があると貸借対照表比較では返済額が不正確になる例

方法②:銀行の「返済予定表」を確認【最も確実】

年間の元本返済額を正確に知るための最も確実な方法は、借入をしている各銀行から発行されている「返済予定表(または償還予定表)」を確認することです。

この表には、通常、毎回の返済日、返済額(元利合計)、その内訳である元本返済額、利息支払額、そして返済後の残高が記載されています。

すべての借入について、この返済予定表の「元本返済額」を1年間分(12ヶ月分)合計すれば、それが貴社の正確な年間元本返済総額となります。

(返済表合計例)

№ | 銀行名 | 月額元金 | 月額利息 | 月額合計
① | A銀行 | 100,000 | 5,000 | 105,000
② | B銀行 | 200,000 | 10,000 | 210,000
… | … | … | … | …
合計 |   | 750,000 | 37,500 | 787,500

・(解説:この場合、年間元本返済額は 750,000円 × 12ヶ月 = 9,000,000円)

返済額の把握が「資金繰り」に重要な理由

なぜ、わざわざ年間の元本返済額を正確に把握する必要があるのでしょうか? それは、会社の資金繰り管理にとって極めて重要だからです。

返済原資(キャッシュフロー)との比較

会社が銀行借入金を返済するために自由に使えるお金(返済原資となるキャッシュフロー)は、大まかに**「税引後利益 + 減価償却費」で計算できます。
この「返済原資」と「実際の年間元本返済額」を比較する**ことで、会社の返済能力に余裕があるのか、それとも厳しいのかが分かります。

[関連記事:自社の決算書から長期借入金の返済能力を判断する簡易な方法]

返済額 > 返済原資 =「黒字なのに現金がない」

もし、「実際の年間元本返済額」が「返済原資」を上回っている場合、損益計算書上は黒字であっても、会社の現金は返済によってどんどん減少していくことになります。これが「黒字なのに現金がない」という状況を引き起こす大きな要因の一つです。この状態を放置すれば、いずれ資金ショートを起こしかねません。

[関連記事:黒字なのに現金がない3つの原因と解消法]

銀行借入金の適切な管理に繋がる

自社の正確な返済負担額と返済能力を把握することで、

・今後の資金繰り予測の精度が上がる
・新たな銀行借入を計画する際の基礎情報となる
・返済負担が重い場合には、銀行へ条件変更(リスケジュール)交渉を行う判断材料となる

など、計画的で健全な銀行借入金の管理に繋がります。

[関連記事:借入金はどれぐらいが適正か?計算方法]

まとめ:損益計算書に惑わされず、本当の返済負担を知ろう

「銀行借入金の元本返済額は、損益計算書のどこを見ればいい?(借入金 損益計算書 どこ?)」という疑問への答えは、**「損益計算書には載っていない」**です。元本返済は費用ではないため、「借入金返済 勘定科目 損益計算書」というものは存在しません(利息は載っています)。

年間の元本返済額を知るには、

1. 2期分の貸借対照表の銀行借入金残高を比較する(期中借入がない場合のおおよその目安)
2. 各銀行の「返済予定表」で毎月の元本返済額を確認し、合計する(最も確実)

という方法があります。

損益計算書の利益額だけを見て安心するのではなく、実際に会社から出ていく現金の大きな部分を占める「元本返済額」を正確に把握し、キャッシュフロー(返済原資)と比較することが、安定した資金繰りと健全な経営判断のために不可欠です。

この記事が、貴社の銀行借入金に対する理解を深め、財務管理の改善にお役立ていただければ幸いです。

 

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