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決算書を理解して会社を成長させる【中級編】~⑩借入金の適正ラインを見極める~

いまさら聞けない「決算書の読み方」。

今回10回目は、【中級編】最終回です。

「借入金」の話です。

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3回目の「減価償却編」【基本編】はこちら
2回目の「貸借対照表編」【基本編】はこちら
1回目の「損益計算書編」【基本編】はこちら

「学び直し」にご活用いただければ幸いです。

 

今日は決算書「借入金」の話をします。

「借入金」とは銀行融資のことですが、今日は簿記用語を使い、「短期借入金」「長期借入金」の言葉で説明します。

自社の「借入金」は、

✔ 規模として適正なのか?

✔ 最近増加しているのはなぜか?

✔ なかなか減らないのはなぜか?

✔ どうすれば良いのか?

一緒に考えていきましょう。

 

短期借入金とは1年以内に返済する借入金

短期借入金とは、1年以内に返済期限がくる借入金のことで、貸借対照表の流動負債にあります。

銀行融資の「手形貸付」や「当座貸越」のことです。

理論上は、1年以内に返済ですが、実務上は複数年に渡り同額で書き換えする「コロガシ融資」になっていることが多いです。

短期借入金は、運転資金の名目で融資されます。

 

短期借入金の適正金額計算法

短期借入金の適正金額は、以下の算式で計算できます。

【計算式】
(売掛金+受取手形+在庫)-(買掛金+支払手形)・・・運転資金

運転資金=適正短期借入金額です(もちろん無借金経営は、なお良いです)。

下図で言えば、短期借入金の適正金額(単位:万円とします)は、

(500+500+1,000)-(500+500)=2,000-1,000=1,000万円

適正な短期借入金額は、1,000万円となります。

運転資金を短期借入金で調達
すぐに支払わないといけないお金を短い期間融資(短期借入金)で調達し、売上(売掛金)が入ってきたら短期借入金を返済することになります。

しかし、事業を続けている間は、常に1,000万円は発生し続けるので、書き換えを繰り返す「コロガシ融資」となります。

運転資金範囲内の短期借入金(コロガシ融資)なら、事業を中止しても売掛や在庫の売却で返済できるので、オッケーです。

正常な金額と言えます。

 

長期借入金とは1年以上かけて返済する借入金

長期借入金とは、1年以上かけて返済していく借入金のことで、貸借対照表の固定負債にあります。

銀行融資の「証書貸付」のことです。

毎月返済が基本で、元金と利息を足したものが、口座から引き落とされます。

長期借入金は、設備投資をした際に発生します。

設備投資とは、機械設備や車両、事務所・倉庫の建築、土地の購入などのことです。

これらは、貸借対照表の固定資産に属します。

固定資産を固定負債(長期借入金)で調達するのが基本的な考え方です。

 

設備投資してないのに長期借入金が発生する

上記の考え方から言うと、設備投資以外で長期借入金があるのはおかしいことです。

しかしながら、多くの中小企業は、長期借入金を複数の本数で、多額に有しています。

長期借入金が赤字の補てん資金になっているということです。

コロナ禍でゼロゼロ融資は、中小企業を助けました。

時間の経過で今、コロナ禍からの脱却の過程において、長期借入金の過剰問題が足かせになっています。

 

長期借入金の適正金額

長期借入金の適正金額はざっくいうと、返済財源の10年以内です。

返済財源とは、これもざっくり1年間の税引後利益と減価償却費を足したものです。

〇 適正範囲    借入金合計 < 年間返済額×10
✖ 借入多い    借入金合計 > 年間返済額×10

例えば、長期借入金が8,000万円あると、返済財源は年間800万円以上必要です。

以下の記事で計算法を詳しく説明していますので、チェックしてみてください。

 

【参考記事】銀行融資を受けるための利益管理【計算シート付】

 

長期借入金の本数が増えると資金繰りが厳しくなる

今まで、短期借入金で書き換えしていても、赤字が続くと銀行から「短期借入金を長期借入金に組み替えて、毎月返済にしてください」と要請されます。

長期借入金の本数が増えます。

以下の図のような状態になります。

運転資金を長期で借り、資金繰りが狂う
継続的に発生する運転資金を、年間利益の中から毎月返済しないといけません。

長期借入金の本数が増え、資金繰りが厳しくなります。

 

【参考記事】融資の組み替え拒否 |銀行が融資一本化を避ける理由

 

経営を立て直して借入金を減らす

政府は、コロナ禍の資金繰り中心の支援から、ポストコロナ時代の事業継続支援への方針転換を打ちだしています。

今後は、中小企業の積み上がった過剰債務をどのように削減し、財務体質を強化して事業継続につなげていくか(事業再生支援)の方向に政策の舵を切りました。

金融機関も目先の資金繰り支援→事業再生支援に重点を移しています。

 

【参考記事】銀行が救う会社、見捨てる会社

 

経営者は待ちの姿勢ではダメです。

事業継続のため、今できることから、借入金削減のアプローチを始めねばなりません。

たくさん借入をしてレバレッジをかけて経営できるのは、ブランド力と経営体力がある大企業の話です。

事業承継するうえで、中小企業の多額の借入金は支障になります。

借入金を減らすためには、経営を立て直して返済財源を作るしかありません。

会社の経営状態や財務状況に応じて、対策は千差万別ですが、まずは自社の現状を把握し、正しいうち手を素早く実行に移すことが大切です。

会社内で分析・対策立案が難しければ、取引金融機関、行政の経営支援機関などに相談してみても良いかもしれません。

私が会社の経営立て直しをお手伝いする際のアプローチを、以下の記事で紹介しています。

 

【参考記事】

決算書を理解して会社を成長させる【基本編】~①損益計算書の読み方3つのポイント~

決算書を理解して会社を成長させる【基本編】~②貸借対照表の読み方3つのポイント~

銀行借入金返済余力と追加借入可能額の計算方法【計算シート付】

 

以上、「借入金」について、お話しました。

今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。

この記事に関するご質問、ご意見は以下のコメント欄からどうぞ。

 

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ご覧いただきありがとうございました。

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