利益と銀行融資の関係について、社長が知っておくべきポイントは、以下の2つです。
①営業利益で支払利息が払えるか
②最終利益で長期借入金が払えるか
詳しく見ていきましょう。
損益計算書において本業の利益を示す、営業利益。
以下の算式で求めれます。
売上高-売上原価=売上総利益。
売上総利益-一般費および販売管理費=営業利益。
銀行融資の支払利息は、営業利益までの計算に入っていません。
表にはありませんが、損益計算書では、その下の営業外損益の中、営業外損失の中に含まれます。
仮に支払利息が年間300万円だったとします。
上記(ケース1)では営業利益の中から支払えますが、(ケース2)では営業利益の中から支払うことができません。
(ただし配当金等の受取利息はほとんどないとします)。
営業利益が赤字だと、利息支払いのために別にお金を用意する必要が出てきます。
〇 営業利益 > 支払利息 → 本業利益で利息が払える(ケース1)
✖ 営業利益 < 支払利息 → 本業利益で利息が払えない(ケース2)
ケース2は、利息を支払うため、以下の様なお金が必要です。
✔ 預金から
✔ 社長の懐から
✔ 銀行の追加融資から
この状態では、いずれ資金が詰まってきます。
支払利息を本業から支払えない状態(営業利益が赤字)は、財務上良くない状態と言えます。
社長は、 融資元金返済を経費だと勘違いしていることがあります。
損益計算書で1年間の融資元金返済額を探すのですが、見つかりません。
融資元金返済は、借りたお金の返済なので、経費ではないのです。
融資を受けて口座にお金が入っても、売上にはなりませんよね。それと原理は同じです。
元金返済により、口座の残高が減るので、経費の様な気がするのです。
元金返済額を把握するために一番確実なのは、銀行から郵送される「融資返済表」を確認することです。
「融資返済表」には、元金と利息が分けて記載されています。
全ての銀行の融資返済表を用意し、「元金部分」を12か月分合計したものが、1年間の融資返済額です。
(ただし返済期間が1年以上の長期借入金の場合です。当座貸越や手形貸付など短期借入金は、毎月返済額が発生しませんので、また別の考え方をします)。
上記のようにして把握できた1年間の長期借入金の返済元金。
財務への影響を把握するために、比較数値となるのは、最終利益(税引後当期純利益)です。
最終利益を補正し、返済財源を確認します。
補正のプラス要因は、減価償却費(ただしリース資産の減価償却費は除く)です。現金が出ていかない経費なので、プラス補正します。減価償却費のリース資産を除くのは、減価償却費の中でリース資産部分だけは月々のリース支払で、現金が出ていくからです。
また、固定資産や株式の売却損は一時的なもので、毎年発生するわけではないので、プラス補正します。
マイナス補正するのは、固定資産や株式の売却益です。同じく恒常的ではなく一時的な利益だからです。
以下の返済能力確認シートに自社の数値を当てはめます。
(表のうえでクリックすると拡大します)
例題(架空A社)上図のケースでは、返済能力750万円(2期間の平均値)に対して、1年間の元金返済(利息は含まないこと!)が1,920万円になっています。
返済能力が不足している状態と言えます。
返済能力が不足していると、別のところからお金を用意する必要が出てきます。
✔ 預金から
✔ 社長の懐から
✔ 銀行の追加融資から
などです。
■利益が出ているのに融資が減らない、
■利益が出ているのにお金が減っている、
要因の一つは、このように返済能力と利益のバランスが悪いからです。
①営業利益で支払利息が払えない
②最終利益で融資返済元金が払えない
このような状態になった時の対策は、
✔ 利益を増やす
✔ 融資残高を減らす
✔ 融資元金返済額を減らす
会社の置かれた経営環境、財務環境によりそれぞれ対策は違いますが、例えば、
利益を増やすためには、売上を増やす、値上げをする、利幅が取れる商品を伸ばす、利幅が取れる交渉をする、コストを削減する、などの方向性があります。その方向性に向けて、更に個々の具体的な改善行動が必要となります。
融資残高を減らすためには、資産を処分する、預金と相殺する、個人資産で返済する、などの方法があります。
融資元金返済額を減らすためには、融資をまとめて本数を減らす、短期と長期のバランスを見直す、元金返済猶予措置を申請する、などの方法があります。
いずれの方法を採るにしろ、まずは社長が自社の現状を正しく把握することがスタートです。
現状の正しい把握なしに、焦ってやみくもに行動してみても、改善効果は少なくなります。
今日お話しした方法をファーストステップとして、自社の現状把握をお勧めします。
以上、「利益と銀行融資の関係」社長が知っておきべき2つのポイント(①営業利益で支払利息が払えるか②最終利益で長期借入金は払えるか)について、お話しました。
今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。
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