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決算書を理解して会社を成長させる【基本編】~②貸借対照表の読み方3つのポイント~

いまさら聞けない「決算書の読み方」。

【基本編】の第2回目。

今回は「貸借対照表」の話です。

(前回の「損益計算書」はこちら

「学び直し」にご活用いただければ幸いです。

 

貸借対照表とは簡単に

貸借対照表は、「バランスシート」と呼ばれます。

左の「借方合計」と右の「貸方合計」が必ず一致し、バランスが取れるからです。

左側(借方)には「資産の部」があります。

右側(貸方)には「負債の部」と「純資産の部」があります。

計算式はこうなります。

「資産の部」(左側)=「負債の部」+「純資産の部」(右側)

繰り返しますが、左=右 必ず一致します。

 

バランスが取れないときに使う方法

左側=右側とならないと、貸借対照表になりません。

しかし困ったことに、経理処理が甘い会社は、使途不明金が出て、合計が一致しないことがあります。

そこで決算期に仕方なく顧問税理士事務所が採る方法が、

✔ 差額を役員貸付金(短期貸付金)とする

✔ 差額を現金勘定で処理する(現金はないのに帳簿上は多額になる)

【参考記事】現預金とは。~決算書にあるのに、手元にお金がないわけ~(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)

などです。

こうして、悪意はないとしても、長年の積み重ねにより、不透明な決算書になっていきます。

社長は、「役員貸付金」「現金」勘定の内容について、説明できません。

今日は詳しくお話ししませんが、解決策は社長が財務について理解を深めて、会社として正しい経理処理をすることです。

対策はこの記事(試算表の記事ですが、事務フローの問題点と対策を記載)に書いています。ご参考ください。

 

例題A社

話を進めるうえで貸借対照表の例を添付します。

私が作った架空会社A社は、地方都市の食料品小売業です(表のうえ、クリックで拡大します)。

 

(1)純資産の部を見る

一番最初に見るのは、右下の「純資産の部」です。

純資産の部がプラスであれば、「資産超過」。

マイナスであれば、「債務超過」と言います。

極論を言うと、会社を止めたいと思ったときに資産超過であれば、畳(たた)むことができます。

また資産超過の会社は、会社に価値があるので、М&Aすることができます。

債務超過の会社は止めたくても、債務(融資、買掛、未払金など)が残ってしまうため、畳むことができません。

だから債務超過は、まずい状態なのです。

傷の浅いうちに業務改善をして、早く抜け出さなくてはいけません。

ちなみに、例題A社は純資産の部がプラスで、「資産超過」です。

ただし、自己資本比率は7.9%と低く、財務安全性は低いようです。

業種にもよりますが、自己資本比率は30%以上が望ましいと言われています。

 

(2)右から左に見る

貸借対照表は、右から左に見ます。

右(負債、純資産)は調達で、左(資産)は運用です。

右の方法でお金を引っ張ってきて、左の方法でお金を運用しているのです。

例えば長期借入金(右)で、工場(建物;左)を建てた。

支払手形(右)を切って、商品在庫(左)を仕入れた。

よくあるケースが、「純資産の部」は多額なのに、現預金が少ないケースです。

この場合は、貸借対照表を精査してみると不良資産が隠れており、実際の「純資産の部」は少なかった、などのケースがあり、注意が必要です。

 

(3)バランスを確認する2つの指標

次にバランスを確認する2つの主要な指標をご案内します。

①「流動比率」

会社の支払い能力を表す指標。1年以内に返済しなければいけない負債に対して、

どれぐらい現金や現金化しやすい資産を持っているかが分かります。

計算式; 流動比率=流動資産÷流動負債×100

100%以上は必要で、200%以上なら、かなり良好な財務状況と言えます。

(ただし、売掛金、在庫、貸付金などの不良資産部分をマイナス補正後の数値)

A社のケース;75,750÷64,810×100=117%

②「固定長期適合率」

固定資産を購入したお金のうち、どれぐらいを自己資本+固定負債で賄えているかを表す指標です。

計算式; 固定長期適合率=固定資産÷{固定負債+純資産(株主資本)}×100

100%以下なら基本的に問題ない。できるだけ低い方が財務状況が良いと言えます。

A社のケース;117,500÷(115,000+15,440)×100=90%

※A社の場合は、流動比率が100%以上で、固定長期適合率が100%以下なので、貸借バランスは取れています。

逆に、流動比率が100%以下で、固定長期適合率が100%以上なら、貸借バランスが崩れています。

例えば流動比率が100%以下だと、1年以内返済の負債の方が、短期で現金化できる資産より多いので、資金繰りが忙しくなります。

現金化できる資産(左側) <  1年以内返済の負債(右側)

例えば固定長期適合率が100%以上だと、長期で運用したい固定資産の調達を1年以内返済の負債でまかなっていることになり、資金繰りが忙しくなります。

つまり、貸借バランスが崩れていると、資金繰りが厳しくなると言えます。

ここでは、貸借バランスを確認する指標が、「流動比率」「固定長期適合率」であることを覚えて下さい。

今日は詳しくはお話ししませんが、貸借バランスを改善するためには、融資の調達方法を見直したり、会社を利益体質にして純資産を積み増す(結果として現預金も増える)などの方法があります。

しかし一朝一夕にはいかず、計画的に粘り強く取り組む必要があります。

 

例題A社貸借対照表の状況

貸借対照表は、(1)純資産の部を見る(2)右から左に眺めてお金の動きを見る(3)貸借バランスを2つの指標で見る、の3つの流れで確認します。

A社の場合は、

✔(1) 「純資産の部」は15,440千円のプラスで「資産超過」(ただし自己資本比率は低い)

✔(2) 短期の調達(右)で短期の運用(左)、長期の調達(右)で長期の運用(左)になっており、お金の使い方に問題はない

✔(3) 流動比率は117%で(100%超)、固定長期適合率は90%で(100%以下)であり、貸借バランスは取れている

などのことが分かります。

自己資本比率が低く負債(特に銀行融資)が多いため、財務安全性が高いとは言えませんが、貸借バランスはとれていると言えます。

今後A社が貸借対照表を改善していくためには、バランスに問題はないので、「純資産の部」を積み上げていく必要があります。

純資産を積み上げるために、業務改善で毎年の利益を増加させます。

「純資産の部」が増えるということは、融資返済財源(利益)が確保できて返済が順調に進むことなので、銀行融資残高も減っていきます。

損益の改善に伴い、貸借対照表の改善も進むのが、A社の状況なのです。

以上、「貸借対照表で押さえる3つのポイント」について、お話しました。

今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。

 

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