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【貸借対照表 読み方】3つのポイントで会社が見える!純資産・バランス・主要比率(2025年版)

「貸借対照表(バランスシート)って、数字が並んでて難しそう…」

「会社の財政状態が良いのか悪いのか、貸借対照表のどこを見ればいいの?」

「資産超過と債務超過って、具体的にどう違う?うちの会社はどっち?」

会社の決算書の中でも、損益計算書(P/L)と並んで重要なのが貸借対照表(B/S: Balance Sheet)です。しかし、「資産」「負債」「純資産」など、専門用語が多く、どこをどう見れば経営に役立つのか分からない、という経営者の方も多いのではないでしょうか。

しかし、貸借対照表の基本的な読み方さえ理解すれば、会社の財政状態、安全性、資金の調達と運用のバランスなどを読み解くことができ、経営判断に役立つ多くの情報を得られます。

この記事では、ここ愛媛県をはじめ多くの中小企業をご支援してきたコンサルタントとして、貸借対照表 読み方の基本から、経営者が特に注目すべき3つの重要ポイント(純資産、資金の流れと資産の質、貸借対照表 バランスを示す主要比率)について、架空の会社(A社)の例も交えながら分かりやすく解説します。資産超過・債務超過の違いや、「実質債務超過」のリスク、自己資本比率、流動比率、負債比率といったキーワードについても触れていきます。

貸借対照表とは?基本的な見方

まず、貸借対照表がどのようなものか、基本的な構造を確認しましょう。

会社の「財政状態」を示すスナップショット

貸借対照表は、ある特定の時点(通常は決算日)における会社の「財政状態」、つまり、会社が「どのような資産(財産)を」「どのような方法で調達した資金(負債と純資産)で」保有しているかを示す一覧表です。いわば、会社の健康状態を示すスナップショットのようなものです。

左側(資産)= 右側(負債+純資産)の原則

貸借対照表は、必ず左側の「資産の部」合計と、右側の「負債の部」と「純資産の部」の合計が一致するように作られています。これが「バランスシート」と呼ばれる所以です。

・資産(左側): 会社が保有する財産(現金、売掛金、在庫、土地、建物、機械など)。どうお金を使っているか(運用)。
・負債(右側上部): 会社が将来支払わなければならない義務(買掛金、借入金、未払金など)。他人から調達した資金。
・純資産(右側下部): 会社の正味の財産(資本金、利益剰余金など)。株主から調達した資金や、過去の利益の蓄積。

※(基本式) 資産合計 = 負債合計 + 純資産合計

【注意】合計が合わない時の問題点

稀に、中小企業の決算書で左右の合計が合わないことがあります。これは多くの場合、使途不明金などを「役員貸付金」や架空の「現金」として無理やり計上し、帳尻を合わせているケースです。このような貸借対照表は、会社の真の姿を反映しておらず、非常に問題がある状態と言えます。

[関連記事:現預金とは?帳簿にあるのに現金がない理由と対策]
[関連記事:役員借入金vs役員貸付金 – 銀行評価の違いは?]

(A社の貸借対照表サンプル )

(解説:左に資産、右に負債と純資産が記載され、左右の合計が一致している例)

ポイント①:「純資産の部」で健全性をチェック

貸借対照表を読む上で、まず最初に確認すべき最も重要な項目が、右下の「純資産の部」の合計額です。

純資産とは?会社の正味財産

純資産は、「総資産」から「総負債」を差し引いた、会社の正味の財産を表します。株主からの出資金である「資本金」や、会社設立からの利益の蓄積である「利益剰余金」などが含まれます。

資産超過 vs 債務超過:一目で分かる判定法

・資産超過: 純資産合計がプラスの状態。つまり、「資産合計 > 負債合計」であり、理論上は会社が保有する資産で全ての負債を返済できる、財務的に健全な状態を示します。

・債務超過: 純資産合計がマイナス(△や▲、括弧書きなどで表示)の状態。つまり、「資産合計 < 負債合計」であり、会社の全資産を売却しても負債を返済しきれない、極めて危険な状態(実質的な支払い不能状態)を示します。債務超過は、銀行からの信用を失い、融資を受けることが困難になるなど、事業継続に重大な支障をきたします。

A社の例: 純資産合計は15,440千円(プラス)なので、資産超過です。

自己資本比率で安全性を測る

純資産(自己資本)が総資産に占める割合を示す**「自己資本比率」**も、会社の安全性を測る重要な指標です。

・計算式: 自己資本比率 (%) = 純資産 ÷ 総資産 × 100
・目安: 高いほど財務が安定しているとされます。業種にもよりますが、一般的に30%以上あることが望ましいと言われます。
・A社の例: 15,440 ÷ 195,000 × 100 ≒ 7.9%。資産超過ではありますが、自己資本比率は低く、財務安全性は高いとは言えません。

隠れたリスク「実質債務超過」に注意

決算書上は資産超過であっても、安心はできません。 資産の部に計上されている**在庫や売掛金、固定資産などの「質」**によっては、**実態としては債務超過(=実質債務超過)となっているケースがあるからです。

例えば、売れない不良在庫や回収不能な売掛金、価値が大幅に下落した土地などが多額に含まれている場合、それらの資産価値を実態に合わせて評価し直すと、純資産がマイナスになってしまうことがあります。銀行は融資審査の際、この「実質的な純資産」**を評価します。

[関連記事:決算書の見方 – 資産超過と債務超過の違いとは? 実質債務超過と解消法も解説]

ポイント②:「右から左へ」お金の流れと資産の質を見る

貸借対照表は、「右側(負債・純資産)で資金をどう調達し、それを左側(資産)でどう運用しているか」という視点で見ると、お金の流れや経営の実態が見えてきます。

右側(調達)と左側(運用)の関係

・右側(貸方): 資金の源泉(他人資本である負債、自己資本である純資産)
・左側(借方): 資金の使い道(現金、売掛金、在庫、設備、投資など)

資金調達と資産運用のバランスを見る

・短期的な資金(流動負債)は、短期的な資産(流動資産)の運用に充てられているか?
・長期的な資金(固定負債+純資産)は、長期的な資産(固定資産)の運用に充てられているか?

この**期間のミスマッチ(例:短期の借入で長期の設備投資を行う)**は、資金繰りを悪化させる要因となります。

特に「現預金」と「資産の質」に注目

貸借対照表 現預金: まず、現預金が十分にあるかを確認します。月商対比などでその水準を評価します。

資産の質: 次に、現預金以外の主要な資産項目(売掛金、棚卸資産(在庫)、貸付金、固定資産など)の中身を精査します。回収可能性の低い売掛金、陳腐化した在庫、使途不明な貸付金、過大な評価の固定資産など、「不良資産」が多く含まれていないかを確認します。純資産の額だけでなく、それを構成する裏付けとなる資産の質が重要です.

ポイント③:主要な比率で「貸借バランス」を評価

会社の財務的な安定性や効率性を、より具体的に評価するために、以下の主要な経営指標(財務比率)で「貸借対照表 バランス」を確認します。

流動比率:短期的な支払い能力

・計算式: 流動比率 (%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

・意味: 1年以内に現金化できる資産(流動資産)が、1年以内に返済すべき負債(流動負債)をどれだけカバーできているかを示します。短期的な支払い能力の指標です。

・目安: 100%を下回ると、短期的な資金繰りに懸念があります。一般的に150%~200%以上あると安全性が高いとされます。(ただし、流動資産の中の不良資産は除いて考える必要があります)

・A社の例: 75,750 ÷ 64,810 × 100 ≒ 117% (最低限はクリアしていますが、余裕があるとは言えません)

固定長期適合率:長期的な安定性

・計算式: 固定長期適合率 (%) = 固定資産 ÷ (固定負債 + 純資産) × 100

・意味: 長期間使用する固定資産が、返済期限のない自己資本(純資産)と、返済期限が1年超の長期負債(固定負債)で、どれだけ賄われているかを示します。長期的な財務安定性の指標です。

・目安: 100%以下であることが望ましいです。100%を超えていると、固定資産の購入資金を短期の借入などで賄っている可能性があり、資金繰りが不安定になりやすい状態を示します。

・A社の例: 117,500 ÷ (115,000 + 15,440) × 100 ≒ 90% (100%以下であり、良好な水準です)

負債比率:財務リスクの度合い

・計算式: 負債比率 (%) = 総負債 ÷ 純資産 × 100

・意味: 自己資本(純資産)に対して、どれだけ他人資本(負債)に依存しているかを示します。財務レバレッジの度合いや、財務リスクの大きさを表します。

・目安: 低いほど財務の安全性が高いとされます。一般的に100%以下が理想とされることもありますが、業種や成長段階によって目安は異なります。極端に高い場合は、借入依存度が高く、金利負担や返済負担が重いことを示唆します。

・A社の例: (64,810 + 115,000) ÷ 15,440 × 100 ≒ 1,164% (極めて高く、借入依存度が非常に高いことが分かります)

バランスが崩れると資金繰りが悪化

これらの比率が悪化し、貸借対照表 バランスが崩れている状態は、短期・長期いずれかの資金繰りが厳しい状況にある可能性が高いことを示しています。

分析結果の活用:A社の例と改善の方向性

これまでの分析ポイントを踏まえ、例題A社の貸借対照表を評価しまとめると、以下のようになります。

・健全性: 純資産はプラスで資産超過だが、自己資本比率は低く(7.9%)、負債比率は極めて高い(1164%)。財務安全性は低い。

・バランス: 流動比率(117%)、**固定長期適合率(90%)**は基準を満たしており、短期・長期の資金調達と運用のバランス自体は、現時点では大きく崩れてはいない。

・課題: 借入依存度が非常に高く、自己資本が脆弱であること。

改善の方向性: A社の場合、貸借対照表 バランス自体よりも、根本的な自己資本(純資産)の不足が課題です。したがって、**損益計算書(P/L)で継続的に利益を計上し、利益剰余金を積み上げていく(内部留保の蓄積)**ことが、財務体質改善の最優先課題となります。利益が増えれば、借入金の返済も進み、結果として自己資本比率や負債比率も改善していきます。

[関連記事:損益計算書 読み方 – 経営に活かす3つのポイント]

まとめ:貸借対照表は会社の土台。3つのポイントで読み解こう

貸借対照表は、会社の財政状態という「土台」の健全性を示す重要な決算書です。その読み方のポイントは、

1. 「純資産の部」を確認し、資産超過か債務超過か、実質的な純資産はどうかを把握する。
2. 「右から左へ」資金の流れを見て、資産の質(現預金、不良資産の有無)を確認する。
3. 「流動比率」「固定長期適合率」「負債比率」などの指標で、貸借対照表 バランスを評価する。

この3つの視点で貸借対照表を読み解くことで、会社の安全性、安定性、そして隠れたリスクが見えてきます。ぜひ、損益計算書と合わせて定期的にチェックし、自社の財務状況を的確に把握して、経営改善に役立ててください。

「自社の貸借対照表の読み方が分からない」「財務分析をして経営改善に繋げたい」「債務超過かもしれないが、どうすれば…」といったお悩みがあれば、当事務所の初回無料相談をご利用ください。貴社の状況に合わせた分析とアドバイスをいたします。

この記事が、貴社の貸借対照表への理解を深め、健全な経営判断の一助となれば幸いです。

 

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