元銀行員なので、金融関係のコンサルが多くなります。
資金調達の場に同席したり、再建計画を中小企業と一緒に作って銀行に説明したり、計画策定後のモリタリング支援で業績報告会に同席したり、、、。
その場で最近感じるのは、ポストコロナを見据えた銀行の融資態度の変化です。
今日はコンサル現場で感じたことをお話しします。
【目次】
2020年に新型コロナが発生して以来、銀行は中小企業(以下会社といいます)に対して、ゼロゼロ融資を中心に、積極的な資金繰り支援を実施してきました。
銀行にとって、ゼロゼロ融資には強力なインセンティブが働いたためでした。そのあたりの事情は以下の記事でご確認ください。
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
それから約3年が経過し、状況は変化しました。
赤字会社が追加融資を申し込んできたとき、「いままで十分支援したのだから、これ以上の追加融資は無理。後は自助努力で」
と銀行は考えるようになりました。
連続赤字など、業績不振の会社に対して、追加融資が厳しくなったのです。
【参考記事】銀行融資を断られる会社 6つの特徴
ゼロゼロ融資は、赤字で返済財源がなくとも、受けられました。
融資に政府保証がついており、仮に融資先が倒産しても、銀行は融資焦げ付きリスクが少なく済みます。
また100年に一度と言われる未曽有の危機の中、社会貢献度をアピールするには、ゼロゼロ融資は絶好の商品です。
銀行間で融資争奪戦のような形になりました。
そのため、ゼロゼロ融資は普段なら融資を受けるのが難しい会社まで融資実行されたのです。
これが、コロナ禍において、今のところ倒産件数が落ち着いている理由です。
ゼロゼロ融資の後継制度が今年1月〜開始されました。
「コロナ借換保証」です。
信用保証協会付なのは、ゼロゼロ融資と同じですが、大きく違うことがあります。
改善のためのアクションプランや数値計画を盛り込んだ、「経営行動計画書」を策定することが融資の要件となったのです。
経営行動計画書には、融資する銀行が確認印を押す欄があります。
つまり、融資する銀行が「経営行動計画書」にお墨付きを与え、融資期間中モリタリングをしていく責任が生じるのです。
制度の詳細は以下の記事でご確認ください。
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
これを伴走型支援と言います。
この伴走型支援を伴う「コロナ借換保証」に対して、積極的に取り組む銀行と、消極的な銀行が存在するようです。
伴走型支援に消極的な銀行は、ゼロゼロ融資の時には積極的に取り組んでいたはずです。ゼロゼロ融資は銀行側にリスクが少なく、事後管理の手間もほぼないからです。
一方、コロナ借換保証は、事後管理など手間がかかり、面倒があります。
経営行動計画書に記載される数値計画やアクションプランにお墨付きをあたえることは、銀行自身にリスクが発生します。融資先の会社の状態や業務内容を正確に把握していないと、怖くて書類(経営行動計画書)にサインできません。手間のかかることです。
しかしながら、責任やリスク、手間が発生すると、融資を避けるような状態では、若い銀行員の成長も期待できません。困難なことに立ち向かって伴走型支援に携わってこそ、若手は成長し、銀行業務に対して、誇りや、やりがいを感じるものです。
目先のリスクは避けられても、今後地域会社からの期待度が低くなるでしょう。
他方で、伴走型支援であるコロナ借換保証に積極的に取り組む銀行は、この制度をきっかけに、融資先会社の資金繰りだけではない、経営再建支援にもコミットしていくことになります。
融資をしても業績が改善せず、経営行動計画書と実績の間にかい離が生じた場合、融資した銀行にも責任が降りかかってきます。
銀行も必死になります。
経営行動計画書には、コスト削減や人員整理など、会社自身も痛みを伴う取り組みの記載が求められるでしょう。
最近あきらかに、業績不振の会社に対しての銀行の融資態度が、厳しくなりました。
コンサル現場で支援先会社に同席したり、債権者会議に出席したりしますが、その時に、銀行が「返済財源がないものに融資はできない」とはっきりいうことが増えました。
会社再建に資金が必要なケースでも、「今までうちの銀行は十分助けました、これ以上は融資できません、後は会社で何とかしてください」、という態度が感じられます。
つまりは、赤字だと基本追加融資ができないということです。
(例外的に以下記事の様な場合もあります)
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経営者は「銀行に手のひらを返された!」と感じます。
そう感じるのは、銀行は今現在の業績数値を見ているのに対して、社長は今までの銀行との取引の歴史を覚えているからです。
業績が良いときは色々銀行担当者の頼みを聞いてきたのに!支店長ともよく懇親会をしたのに!
銀行員は2〜3年で転勤しますが、会社は銀行と何十年も付き合っています。
業績が良いときも悪いときも、パートナーとして共に歩んできたという、気持ちがあります。
しかし、銀行が見ているのは、「現在業績がどうなのか」です。
時間的なギャップがあり、それが温度差となり、社長は「銀行に手のひらを返された!」と感じるのです。
年に1回、決算書が出来上がれば、社長は決算書をもって銀行を訪問します。
決算書を手渡した社長は、赤字になった理由を説明します。
そして、今後の見通しについて、色々と口頭で説明します。
今後こうして売上を増やします、新しい事業に挑戦して黒字化します、売上は回復するはずです、黒字になるはずです、と力説します。
しかし、銀行員は上の空で、話をほとんど聞いていません。
そしてこんなことを心の中で考えています。
「あちゃー、赤字か。今後しばらく追加融資は難しいな」
「貸したお金、きちんと返してくれるかな」、、、。
いくら社長が力説しても、数値的な裏付けがない、根拠のない話は説得力がありません。
銀行員は、会社の状況や今後の見通しを上司や本部に説明する必要があります。
口頭で熱く語られても困ってしまいます。
だから赤字決算が出た場合、社長がすることは、文書で赤字の要因分析と今後の黒字化への具体策を提出することです。
銀行に決算説明に行く時の段取りと注意事項を以下の記事に書いています。参考にしてください。
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文書には、現状分析、改善のためのアクションプラン、アクションプランを実行した後の数値目標、を記載します。
そうすることで、今後会社がどう進んでいけば良いか考えがまとまりますし、銀行員も上司や本部に説明するための材料ができて喜びます。銀行には稟議審査システムが存在するのです。
銀行の融資稟議については、以下の記事に詳しいので参考ください。
(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ)
以上、今日は私が最近感じている銀行の融資姿勢についてお話ししました。
今後の貴社の財務安定のために、お役に立てていただけますと幸いです。
今年に入り、全国の経営者からの対銀行融資に関する相談が増えてきました。
支援先の経営者からはもちろんですが、Webサイトを通じてのスポット相談が増えています。
お話を聞いていると、銀行との付き合い方に関する戸惑いが、一様にあるようです。
コロナ禍で「未曽有の危機だから全面的に支援する」方針から、ポストコロナで「支援できるところと出来ないところを見極めていく」方針へ。
支援方針について、銀行が舵を切り始めたことが、背景にあるのかもしれません。
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