【この記事で分かること】
(記事の最後にチェックリストがあります)
・決算報告には何を準備し、どう段取りすれば良いか
・決算報告では誰を相手に、何を話せば良いか
・決算報告で会社が得られることは何か
この記事のポイントは以下の通り。
☑ 銀行との信頼関係を深める一番の方法は、自社の内容を正しく説明すること。具体的には、経営者が自ら、銀行を訪問して決算報告することである
☑ 銀行への決算報告は、会社の改善点を把握出来たり、経営者自身の能力向上となったり、など様々なメリットがある
☑ 決算報告のための銀行訪問について経営者には遠慮があるが、銀行員は嬉しいので、積極的に実施すべきである
☑ ただし、訪問の際に注意点があり、以下記載の通り、対応を誤らないようにする
詳しく見ていきましょう。
会社経営のうえで、取引銀行と信頼関係は、深ければ深いほどプラスに働きます。
ではどのようにすれば良いのでしょうか?
☑ 銀行との懇親会を開催する
☑ 役員や支店長とゴルフに行く
☑ 銀行の行事に積極的に参加する
いずれも効果は大きいでしょう。
しかし、私が最も大切だと考えるのは、「会社の内容を正しく説明すること」です。
その一番良い方法は、「経営者が銀行に決算書を持って行くこと」。
もちろん、持って行くだけでなく、決算書を通じて、
☑ 自社の1年間の業績内容
☑ 今後1年間の目標と方向性
を経営者自身が説明します。
自社の決算書は、一年間の成績表です。
取りに来た銀行の営業担当者に、自社の経理担当からなにげなく渡したりしていませんか?
もったいない、と思います。
いつもの営業担当者に、何気なく自社の決算書を渡すことで、会社が成長するチャンスをみすみす逃しているのです。
以下に、経営者自らが実施する決算報告の段取りとメリットを説明します。
決算書持参・説明に当たり、訪問日時のアポイントを銀行営業担当者を通じて、事前に入れます。
訪問したい1~2週間程度前に、日程を調整します。
その際、経営者自身が訪問することを伝えます(可能なら支店長面談のアポを入れるのが理想です)。
銀行へ持参するのは、出来上がった決算報告書一式の写し(内訳明細や別表も含む)。
銀行へ渡すものと、自分が説明用に使用するもの。2部用意します。
また可能なら、前期実績の背景や今後の見通しなど、当日説明する内容を1枚のレジメにまとめて手渡せば、銀行員の貴社への理解がより深まります。
特に業績が悪いときは、①原因は何か②今後どう改善していくのか、を簡単にまとめていくと良いでしょう。
経営者はもちろん、自社の財務担当者がいれば同席させると良いでしょう。
財務担当者には、銀行員に言われたことをメモさせます。
また、後継者がいれば、是非同席させてください。
銀行への決算報告の場。
これほど、後継者教育に適した場はありません。
普段社長が、①銀行にどのようなことを聞かれているのか、②どのように接しているのか、身をもって体験させるのです。
顧問税理士の同席は必要ありません。決算報告は、経営者が銀行員に報告する場です。経営者自身が責任をもって自分の言葉で説明します。
細かいことで即答できないことがあれば、後日税理士事務所に照会し、調べて回答すれば良いのです。
銀行側の対応を見ておく
いざ当日、経営者が訪問した際、銀行側は誰が対応するのか。
よく見ておくと良いでしょう。
支店長など上席者なのか、融資担当者なのか、それともいつもの営業担当者なのか。
①支店長が出てくる
・貴社は大事にされています
・貴社が決算報告で訪問することが、銀行内で情報共有されています
②いつもの営業担当者
・貴社はあまり大切にされていないのかもしれません
・貴社が決算報告で訪問することが、銀行内で情報共有されていないかもしれません
銀行の貴社に対する姿勢や、銀行の顧客対応方針が分かります。
何を質問されたのか、経営に活かす
一通り決算報告を行うと、質疑応答に入ります。
銀行から色々質問されます。
経営者は、大切なポイントさえ押さえておけば、細かい数値まですべて即答できる必要はありません。
質問内容が分からなければ、後日確認して回答すれば良いのです。
質問されることにより、銀行が気にして見ているポイントはどこなのか、勉強になります。
銀行から質問されることは、(特に銀行側対応者のレベルが高ければ)経営にとって重要ポイントです。
今後の経営力強化に活かせます。
複数銀行を回ることで、銀行ごとの特徴が分かる
取引銀行が複数あれば、可能な限り訪問します。
対応や質問される内容によって、各銀行ごとのレベル感を把握し比較することができます。
☑ 貴社のことに関心をもって、熱心に質問したり、事前準備したりなどして、決算報告の場に臨んでくれたのは、どの銀行か
☑ 過去の経緯まで把握して、決算報告の場に臨んでくれたのは、どの銀行か
☑ 貴社の今後の展開にプラスになるような、助言や情報提供をしてくれたのは、どの銀行か
経営者が、銀行ごとの違いについて直接情報を得ることは、会社経営にとって大きな財産です。
また、こうした場に、もし面談に後継者を同席させることができれば、後継者教育としての効果は大きくなります。
銀行員は、決算報告に来てくれることを喜ぶ
私は、銀行員として経営者から決算報告を受けたことも、またコンサルタントとして経営者の決算報告に同席したことも、数多くあります。
その経験から、経営者自身の決算報告訪問に対して、銀行員のほとんどは好意的です。
経営者からすると、「忙しい銀行員を訪ねて迷惑ではないか」と心配しますが、銀行員は逆に「経営者自身が報告に来てくれること」が嬉しいのです。
ただし、毎年継続していくことが大切です。
業績が良いときも悪いときも、変わらず決算報告のため銀行を訪ねる。
このような姿勢が、銀行から信頼を得るのです。
ただし、以下の通り、注意点があります。
☑ 事前にきちんとアポイントをいれること(月末や月初など繁忙時期は避ける)
☑ 粉飾された嘘の決算書を出さない、正直に説明する
☑ たとえ内容が悪くとも、毎年継続的に行く(良いときだけいかない)
※内容が悪いときは、今後の改善策も説明する
☑ 主旨は「決算報告」なので、露骨な融資申込や金利交渉は避ける(別の機会を設けて融資申込は正式に行う、ただし匂わせる程度は可)。
ちなみに、社長が銀行支店長につい口走ってしまう「NGワード」を、私の銀行員時代の経験からまとめています。良かったら参考にしてください。
【参考記事】経営者のその言動、銀行員は嫌がっているかも?②~経営者が意識せずに言ってしまう、銀行支店長への禁句~
決算報告に行くことの効果
経営者自身が決算報告に行くことの効果は以下です。
☑ 取引銀行との信頼関係が深まり、今後良い提案を受けられたり、情報を得られたり、事業展開のプラスになる
☑ 取引銀行が複数あれば、銀行ごとの雰囲気や事業方針が分かり、今後の銀行選定の判断基準になる
☑ 銀行員に説明するために、決算内容を正しく把握しようとするので、経営者の財務能力が上がる
☑ 質問されたことを調べたり、改善することで、経営能力のアップにつながるヒントが得られる
☑ 後継者を同席させれば、教育効果が期待できる
こんな機会を意識せずに、結果放棄しているのは、もったいない、と思うのです。
いかかでしょう?決算報告を始めませんか。
最後に銀行への決算報告チェックリストを添付します。
(表のうえでクリックすると拡大します。印刷してご使用ください)
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