今年、耳にする機会が増えたのが、「ゾンビ企業」という言葉です。
造語のようですが、実はこの言葉、63か国・地域の中央銀行が加盟する「国際決済銀行(BIS)」が、貸出先のリスクを算定する言葉として、実際に使っているのです。
今日は、自社は「ゾンビ企業」に該当しないのか、もしそうなら「ゾンビ企業」から脱却するにはどうすればいいのか、一緒に考えてみたいと思います。
【目次】
前述した国際決算銀行(BIS)は、ゾンビ企業を以下のように定義しています。
✔設立10年以上の会社で、
✔3年以上にわたって、インタレスト・カバレッジレシオが、1未満
インタレスト・カバレッジレシオとは、
【計算式】
(営業利益+受取利息・配当金) ÷(支払利息)
で、計算できます。
例を挙げてみます。
【インタレスト・カバレッジレシオ 1以上の会社】
営業利益 500万円
受取利息配当金 10万円
支払利息 300万円
(500+10) ÷ 300= 1.7倍 ・・・ 直近3年のうち一度でもこうなれば、ゾンビ企業ではない
【インタレスト・カバレッジレシオ 1未満の会社】
営業利益 200万円
受取利息配当金 10万円
支払利息 300万円
(200+10) ÷ 300= 0.7倍 ・・・ 設立10年以上で、この状態が直近で3年続けば、ゾンビ企業である
つまり、ゾンビ企業とは、「金融機関から受けた融資利息を、企業本業活動(営業利益)+受取利息・配当により、3年連続で払えない会社」のことです。
営業利益の赤字については、以下の記事が詳しいので、参考にしてください。
【参考記事】赤字とは何か~決算書損益計算書 4種類の赤字の見方~
ゾンビ企業になると、当然ながら金融機関(銀行や信用金庫など)から融資が受けづらくなります。
ゾンビ企業は、利息を支払うために、事業利益以外から資金を引っ張ってこなければなりません。
預金や保険を取り崩すか、社長の個人的な資金を会社に投入するか、関連会社から借りるか、資産を売却するか、、、、。
しかし、実はそれ以外に多くのゾンビ企業がやっているのが、「利息を払うために金融機関から追加融資を受けること」です。
融資を返済して残高が減ってくれば、また融資を受けますよね。
今まで通常に行ってきたことが、ゾンビ企業と認定されることで、難しくなるかもしれません。
なぜなら、融資したお金を「融資利息支払」に充当されることを、金融機関は嫌がるからです。
では、どのくらいの会社が、ゾンビ企業になっているのでしょう。
日経新聞(2022.12.27付)が、帝国データバンクの最新データ(2021年度)を紹介しています。
最新データと言えど、1年前なので、状態はもう少し進んでいると思いますが、参考にします。
(ココから日経新聞記事引用)実質破綻状態でありながら事業を続ける「ゾンビ企業」が一段と増えている。2021年度時点で約18万8000社と、新型コロナウィルス禍前の19年度と比べると約3割増えた。
インタレスト・カバレッジレシオが21年度まで3年連続で判明し、かつ設立10年以上の企業は約9万5000社あり、このうちゾンビ企業に該当するのは12.9%だった。この「ゾンビ企業率」を帝国データで経営実態が確認できているすべての企業数(約147万社)に当てはめた。(ここまで引用)
上記は、帝国データバンクが「財務データを把握できている企業」における数値です。
総務省と経済産業省が発表した経済センサス活動調査(経済センサスは国内全ての企業と事業所を対象に5年に1度程度調査)によると、2021年6月時点の全国の企業数は367万4000社あります。
その367万4000社に、先ほどの「ゾンビ企業率」12.9%を当てはめて計算すると、推定ゾンビ企業数は、全国で約47万4000社となります。
推測ですが、かなりの数、BIS基準でいうゾンビ企業が存在していることが分かります。
最近融資を申し込んだなら、感じたでしょうが、金融機関は融資姿勢を引き締めています。
コロナ発生時は、政治や社会の要請や、「ゼロゼロ融資」の融資競争もあったため、融資姿勢はかなり緩んでいました。
ゼロゼロ融資は終了し、金融機関は「緊急時の資金繰り支援の責任は果たした」と考えています。
融資して資金繰りを支えたその間、「会社側はどのような自助努力をしたのか」、金融機関はあなたに問い始めているのです。
プロパー融資(保証協会付ではない融資。金融機関が独自にリスクを取る融資)の融資姿勢は特に厳しくなっています。
この度の補正予算により、「緊急経済対策」が決定しました。
その中に、「ゼロゼロ融資の組み換え制度」も入っています。
ただ、以前の記事でお話しした通り、ゼロゼロ融資のように審査は緩くありません。
この辺りの事情は、以下の記事(和田経営相談事務所オフィシャルホームページブログ→こちら)に詳しいので参考にしてください。
様々な事情があるにせよ、事業継続していくうえでは、ゾンビ企業状態を脱却する必要があります。
そのための第一歩は、「自社の財務状態を知ること」です。
自社は「ゾンビ企業」に該当するのかどうか。
その際に、損益計算書の数値を正しく確認します。
例えば、減価償却不足額があるなら、償却不足金額は営業利益から減算します。
例えば表面上、営業利益が500万円あっても、減価償却不足額が300万円あれば、本当の営業利益は200万円だと言えます。
500万円-300万円=200万円・・・本当の営業利益
そうすると、真の姿が見えてきます。
減価償却費の考え方は、この記事(和田経営相談事務所オフィシャルホームページ→こちら)を参考にしてください。
確認が済めば、ゾンビ企業から脱却する作戦を考えます。
まずは、現状の自社を取り巻く経営環境を分析します。
競合や顧客などの外部環境に向け、自社のどの部分の強みをぶつければ、良いのか。
または、どこの課題を改善すれば良いのか。
「値上げ交渉」かもしれません。
「顧客や事業の選択」かもしれません。
「調達の見直し」かもしれません。
「間接経費の配分」かもしれません。
「人員配置の適正化(人件費配分の見直し)」かもしれません。
「社員との意思疎通強化や人材育成システムの整備」かもしれません。
「顧客がお金を払いたくなる、商品やサービスの開発」かもしれません。
採算管理のための「デジタル化推進」かもしれません。
SNS活用やEC化など、「デジタルマーケティング」かもしれません。
優先順位を決めて、経営資源を集中投下していきます。
事業計画に落とし込んでも良いでしょう。
決めたら即実行。臨機応変に。試して改善して、また試して改善。
粘り強さも必要です。
こうして、収益改善により会社財務を立て直し、ゾンビ企業から脱却するのです。
その結果、時間はかかるかもしれませんが、金融機関融資に頼らない事業運営の確立を目指します。
以上、今日はゾンビ企業の定義と、立ち直るためのはじめの一歩について、お話ししました。
この記事が、「あなたの会社の財務改善 」に役立ち、その結果、会社の成長につながりますと幸いです。
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