銀行員として17年、コンサルとして10年、合計27年に渡り、数千社の中小企業の決算書を見てきました。
今では3年分ぐらいの決算書に目を通せば、その中小企業で何が起こっているのか、経営者はどのような考えで会社を運営しているのか、おおまかな予測がつくようになりました。
銀行員上がりの私なので、決算書のなかでも、どうしても借入金(短期借入金、長期借入金)に目が行ってしまいます。
対銀行向けの融資申込書や事業再建計画書のお手伝いが本業ですので、借入金に関しての銀行の考え方は一通り理解しています。
今日は借入金について、どのように判断すればいいのか、お話します。
コロナ禍において状況は厳しく、情勢は平時と変わっていることは承知しています。
しかし、将来の収束もしくはウィズコロナ時代を見据えて、理想論をお話します。
自社の決算書を横において、この記事を読み進めていただければ、理解が進むかと思います。
借入金には、短期借入金と長期借入金があります。
短期借入金は原則1年以内に返済する借入金、長期借入金は1年以上かけて返済する借入金です。
決算書の貸借対照表を見れば、残高が分かります。
そこで質問です。
経営者のあなたは、その借入金の資金使途を答えることができますか?
これが案外難しいのです。
なぜ難しいかと言えば、企業のお金は日々出入りします。
借入してから時間が経過するにつれ、お金は口座の中で循環して色がなくなるからです。
どのお金を何の目的で借りたか、分からなくなります。
そして、借りたお金を返すために、また追加で融資を受け、結果借入金が増加していきます。こうなるともう最初に借りたお金が何に使われたのか、分からなくなります。
運転資金で借りたつもりが、実は赤字の補てん資金かもしれません。
設備資金で借りても、途中で店舗や工場を撤退すれば、残高は赤字部分(固定資産除却損)として財務の重しになります。
きれいごとかもしれませんが、理想論を言います。
経営は黒字を前提にしているはずです。最初から赤字経営を想定している経営者はいないと思います。
黒字経営をしていれば、初期投資や設備投資以外に銀行借入金は必要ありません。
例え、一時的に立替資金として借りたとしても、売上代金が入ってくれば、返済できます。そしてまた必要な時に借ります。この繰り返し。
借入金が設備投資資金にしても、投資回収が予定通り進めば、長期借入金は減少してくはずです。
設備投資資金もしくは余裕資金として預金に入っている以外に、借入金が残っているのは、どこかに無理があるのです。
赤字体質なのか、過剰投資なのか、資金が社外に流出しているか、、、
あなたの会社、純資産勘定の利益剰余金(資本金の下にある金額)がマイナスになっていないですか?
自社の借入金が適正かどうか、
貸借対照表を使って、簡単に判定する方法は以下です。
■短期借入金
(売掛金+受取手形+棚卸資産)-(買掛金+支払手形) ≧ 短期借入金
※回収不能な債権や売れない在庫は除く
であれば、短期借入金は適正範囲です。
■長期借入金
固定資産 ≧ 長期借入金
※固定資産うち、不良化した貸付や実態のない資産は除く
※土地の価値は時価で再評価すること
※減価償却は正しく実施していること、いままで未実施の金額部分は固定資産から除去
であれば、長期借入金は適正範囲です。
上記の式を一言で表せば、今すぐ事業をやめることができる状態(本来は資産処分に一定の時間を要しますが、分かりやすくするため極端な表現をとります)です。
やめようと思っても、資産を処分しても借入が残ると、事業をやめられませんよね。
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役員借入金は、会社のお金が足りないので経営者が個人資産から補てんするか、役員報酬をとらずに会社に貸し付けた形にするのか、により発生します。
中小企業の場合は、法個人一体だから問題ない、という見方もあります。
一方で、相続発生時には、相続財産分与の対象になりますし、お金の出所が社長の個人ローン借り入れだったりもしますので、注意が必要です。
役員報酬の未払は、そもそも予定していた役員報酬が取れない(利益が出ていない)ということであり、役員報酬の設定額に問題があります。
役員借入金もできれば発生させないほうが良いでしょう。
繰り返しますが、借入金が設備投資以外に残っている場合、その多くが赤字に起因する場合が多いのです。
本業不振による赤字、設備投資の失敗による撤退(除却損の計上)、過大投資、社外への不透明な資金の流出、、、
では、経営者としてどう手を打つのか、
置かれた環境により対策は千差万別ですが、原因を分析し、対策を立案し、改善策を実行することで、会社を利益体質に転換することが求められます。
場合によっては、撤退する事業も出てくるでしょう。
利益を計上することで返済財源を捻出し、借入金を返済していきます。
コロナ収束後はこうした動きが加速することを見越して、今から準備が必要だと、私は考えるのです。
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