前回まで、新たに始まるサービスの概要と、その影響についてお話ししてきた。
そこから導き出されることは、我々中小企業診断士にとっては、「競合の増加という脅威」につながる可能性が高いと言うことだ。
私は中小企業診断士の資格を使って事業を開始して6年目になるが、税理士の存在感は大きいと感じることがある。
これは銀行員時代から感じていたことだが、企業経営者はお金のことで困ると、まず顧問税理士に相談する。融資提案をした際、「税理士と相談して返事します」と何度聞いたことか。
またコンサルとして独立してからも、経営計画を作る過程で、経営者の税理士に対する信頼感に触れることが多々あった。思うに、経営者にとって、決算書や資金繰りは、ある意味「恥部」である。その恥ずかしい部分を、誰にでもは相談しづらい。
しかしながら、顧問税理士には、日頃から数字をすべて見せており、月次の計数作成の過程で、頻繁に顔を合わせ、色々相談や意見交換をしている。だから困ったときは、「税理士の相談」となるのだ。税理士の強みは、経営者との接触頻度と、そして数字に弱い経営者にとっての「数字の先生」としての役割を担っていることだ。
以上のように我々診断士にとっても、TKCのバックアップを得て、経営計画の分野に進出を強めている税理士は強敵と言える。
ではこうした動きにどのように対応していくべきか。それは、各診断士自身が見つけていくしかない。
私個人的には、①税理士を競合と見なすだけでなく、連携先として提携していく(異業種勉強会の運営)、②成果物である経営計画書での差別化(特に診断士の強みである事業内容分析に重点を置く)、③自己啓発で人間力を含めた能力を高めていく、④コミュニケーション能力を高めることで、経営者と人と人とのつながりを深めて、情報システムに対抗していく、などに取り組んでいる。
3回に渡り、金融機関向けに始まるフィンテックサービスについて、お話ししてきた。このTKCの動きを注視し、自分なりの対策を考えておく必要があるだろう。