社長が決算書「別表」で確認しておけば良いのは、4枚だけです。
具体的に「別表(一)」、「別表(二)」、「別表七(一)」、「別表(十六)」です。
ただ、その4枚は必ず見ておきましょう。その4枚が何を意味しているのか。
説明していきます。
決算書別表(以下「別表」と略す)とは、法人税の計算を行うために必要な書類のことです。
決算書の前にたくさん添付されている、なんだかよく分からない書類です。
何十ページもありますが、貸借対照表や損益計算書と違い、ほとんど目を通したことがないと思います。
税務申告のために作成し、税務署に提出します。
別表には、一から十八までの番号が付けられていますが、すべてを使用するわけでありません。
あなたがほとんど目を通したことがないということは、「経営においてあまり重要ではない」と感じるかもしれません。
しかし、「別表」にも社長が知っておくべきポイントがあります。
私の30年間の中小企業支援経験から気づいたポイントをお話しします。
「別表」は、「4枚だけ見ておけば良い」ということです。
難しく考える必要はありません。
その4枚は、具体的に「別表(一)」、「別表(二)」、「別表七(一)」、「別表(十六)」です。
それぞれ説明していきます。
可能なら、自社の「別表」を手元に置いて読み進めて下さい。
別表(一)は、以下です。
別表(一)で、見ておくのは、「所得金額または欠損金額」と「法人税額」の2カ所です。
「所得金額または欠損金額」は、法人税計算の基礎になる金額で、この金額に税率をかければ法人税となります。
例えば、所得金額が500万円なら法人税額は、75万円です(500万円×15%=75万円)。
(現在所得のうち年800万円以下の部分については税率が15%と軽減されています。 800万円を超える部分の税率は、原則どおり23.2%です)。出所:財務省
別表(二)は、「同族会社等の判定に関する明細書」です。
株主の内訳が分かります。
以下です。
・株主は誰か
・持分割合はどうなっているか
・株式総数は何株か
等を確認しておきます。
別表7(一)は、「欠損または災害損失金の損金算入等に関する明細書」。
法人税の繰越欠損金とは、法人が所得計算で赤字になった場合の金額のことです。
この欠損金は、青色申告の承認を受けている法人であれば、一定の条件を満たすと、将来の所得と相殺して法人税を減らすことができます。
このようにして繰り越された欠損金のことを繰越欠損金と呼びます。
中小企業の繰越欠損金の期限は、欠損金が発生した事業年度から数えて10年間(ただし、平成30年4月1日以前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年間)です。
繰越欠損金の期限を超えると、その欠損金額は損金算入できなくなるので、注意が必要です。
例えば、過去の有効な繰越欠損金が500万円あり、今期の法人所得が700万円なら、法人税は、
(700万円-500万円)×15%=30万円です。
繰越欠損金がない場合より、75万円法人税負担が減ることになります。
【繰越欠損金がない場合の法人税】
700万円×15%=105万円
【繰越欠損金が500万円ある場合の法人税】
(700万円-500万円)×15%=30万円
【差額】
105万円-30万円=75万円
このように財務戦略上、繰越欠損金の残高や期限を確認しておくために、別表七(一)を活用します。
別表十六(一)(二)は、「減価償却資産の償却額計算に関する明細書」です。
当期の「減価償却額」を確認するとともに、「減価償却不足額はいくら発生しているか」を確認します。
十六(一)は、定額法の償却額、十六(二)は、定率法の償却額を確認できます。
ざっくり、「定額法」は建物や建物付属設備、「定率法」は建物以外の機械装置や車両などの減価償却費を計算するために使用する計算法です。
言葉通り、定額法は毎年償却額が定額、定率法は毎年償却率が定率ということです。
自社の「減価償却不足額」を確認したいときは、上記の「(36)償却不足額」を固定資産ごとに見て合計すれば、分かります。
償却不足は、経営・財務に影響が大きいテーマです。以下の記事に詳しいので、参考にしてください。
当事務所のブログ記事の中でも、長年アクセスランキングの上位に位置していますから、全国の社長に関心が深いテーマだと言えます。
【参考記事】減価償却不足額を銀行はどう見ているか
別表は何やら難しい言葉や数字が並んでいて難しそうだ、、、。
そういうイメージをお持ちかもしれません。
しかし、説明してきた通り、社長が「別表」で押さえておくのは、4枚だけです。
・別表(一)で、所得金額や法人税を確認。
・別表(二)で、自社株式の保有割合を確認。
・別表七(一)で、繰越欠損金の残高と有効期限を確認。
・別表(十六)で、減価償却費と減価償却不足額を確認。
これだけで十分です。
難しく考えないことです。
以上、「決算書(別表)を見るときのポイント」について、お話しました。
今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。
【参考記事】
決算書を理解して会社を成長させる【中級編】~⑥勘定科目内訳明細表を見るときのポイント~
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