いまさら聞けない「決算書の読み方」。
今回6回目からは、【中級編】。
「勘定科目内訳明細表」の話です。
(5回目の「在庫と利益とお金の関係」【基本編】はこちら)
(4回目の「代表者勘定編」【基本編】はこちら)
(3回目の「減価償却編」【基本編】はこちら)
(2回目の「貸借対照表編」【基本編】はこちら)
(1回目の「損益計算書編」【基本編】はこちら)
「学び直し」にご活用いただければ幸いです。
勘定科目内訳明細表とは、法人税申告書の添付書類の一つで、企業の財産や取引状況を詳細に記載する書類です。
決算書の損益計算書や貸借対照表の後ろのページについています。
下図のようなこんな感じの表です。
預金や金融機関借入金、売掛金や在庫、買掛金などの内訳明細が記載されています。
貸借対照表の各勘定科目の金額は、決算期の合計金額です。
合計は分かりますが、内訳は分かりません。
そのため、補完資料として、勘定科目内訳明細表(以下明細表といいます)が添付されています。
これを見れば、勘定科目が「相手先、金額、どういう内容」で、存在しているか分かります。
以下に、経営に関係が深い勘定科目について、ポイントを説明していきます。
現預金の明細表には、決算期末にどこの銀行でいくらの預金残高があるか記載されています。
当座預金、普通預金、定期預金、積立定期預金、など預金種類も分かります。
銀行からの残高証明書金額、または預金通帳残高を会計事務所が確認し、作成されます。
現金は、原則現金出納帳と現物の確認により作成されますが、不一致のまま明細表に記載されていることがあります。
事情はこの記事で詳しく説明しています。参考にしてください。
売掛金の明細表に記載されているのは、相手先と期末残高です。
社長が、売掛金の明細表で確認するポイントは、一つ。
売掛金の回収が長期化していないか。
売上シェアと比較して売掛金が多い相手先があれば、回収が長期化している可能性があります。
相手先と金額を確認しながら、回収の長期化を改善します。
方法は、相手先ごとに「正常債権」と「支払いが遅れている債権」に分けて、相手先と入金交渉をすることです。
在庫(棚卸資産)の明細表に記載されているのは、品目、数量、単価、期末残高です。
中小企業の場合多いのが、「在庫一式」という記載です。
すべての在庫を合計して金額を記載しており、この場合、明細表は1行です。
これでは、何のことか内訳が分かりません。
主要項目ごとに分けて記載しましょう。
不良在庫や陳腐化して価値がない在庫も明細表に記載されていることがあります。
良いことではないので、改善していきましょう。
改善方法は、こちらの記事に詳しいです。
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「決算書在庫数値が多いとどうなる?原因と対策」
買掛金の明細表に記載されているのは、相手先、期末残高です。
買掛金とは、仕入関係の掛け支払代金です。
社長が、買掛金の明細表で確認するポイントは、一つ。
買掛金の支払が遅れていないか。
仕入シェアと比較して買掛金が多い相手先があれば、支払が遅れている可能性があります。
相手先と金額を確認しながら、支払の長期化を改善します。
方法は、相手先ごとに「正常債務」と「支払いが遅れている債務」に分けて、相手先と支払交渉をすることです。
買掛金が増える→支払いが遅れると、信用が傷つき、今後事業運営に影響が出ます。
借入金(銀行融資)の明細表に記載されているのは、借入先、利率、利息額、期末残高、担保です。
1年以内に返済予定の借入金は短期借入金、1年以上かけて返済する借入金は長期借入金となります。
内訳表には、借入金ごと(本数ごと)に分けて記載されているケース、銀行ごとにまとめて記載されているケースがあります。
本数ごとに記載されている方が、分かりやすいです。一括りで記載されている場合は、会計事務所に伝えて分けて記載しましょう。
利率や利息額は、空欄の場合が多いです。記載されていると分かりやすいので、会計事務所に依頼して、改善すると良いでしょう。ただ銀行取引に関する会社の方針によって、あえて空欄にしているケースもありますので、ケースバイケースで対応してください。
担保の欄は、ほとんどが空欄です。こちらもケースバイケースで対応してください。
銀行融資と担保の関係を管理するには、以下記事に紹介する方法を参考にしてください。
【参考記事】銀行融資と担保 バランスの見方
雑収入の明細表に記載されているのは、営業活動以外の臨時的な収入の内訳です。
例えば、「補助金」、「雇用関係の助成金」、「保険や株式の解約金」などが記載されています。
また、家賃収入が記載されていることもあります。
もし家賃収入が臨時でなく、恒常的なものなら、雑収入ではなく売上高に「家賃収入」として記載することをお勧めします。
理由は、営業利益に関係するからです。
雑収入は、営業利益より下の欄の経常利益には反映されますが、営業利益には反映されません。
そのため、雑収入に記載すると、営業利益額や営業利益率が売上に記載された場合と比較して悪化します。
気を付けて下さい。
勘定科目内訳明表を確認することで、より詳しく財務分析ができます。
以上、「決算書勘定科目内訳明表を見るときのポイント」について、お話しました。
今後の貴社の財務改善にお役立ていただけますと幸いです。
【参考記事】
決算書を理解して会社を成長させる【基本編】~①損益計算書の読み方3つのポイント~
決算書を理解して会社を成長させる【基本編】~②貸借対照表の読み方3つのポイント~